【食器棚ものがたり】:37平米のマンション。大きな食器棚は置かず、うつわ選びと収納に工夫を(vol.3 岩佐知布由さん)

編集スタッフ 津田

桜が咲く頃になると、一人暮らしを思い出します。最初に買ったお皿。はじめての自炊。スーパーのお惣菜を器に盛るだけでも、うきうきした春の夜。

この読み物は、食器棚と器を訪ね歩く連載です。どんな家にもあるけど、一つとして同じものはない。そんな食器棚と器と収納を見せてもらいながら、おしゃべりしたことを、小さなコラムにしてお届けします。

今回は、インテリアスタイリストの岩佐知布由(いわさ・ちふゆ)さんにお会いしてきました。

 

母が持たせてくれた器と、はじめての一人暮らし

岩佐さんが暮らしているのは37平米の賃貸マンション。昭和56年築ですが、フルリノベーション済みで、二口ガスコンロとバストイレ別の住みやすい間取りです。

インテリアスタイリストとして、雑誌や広告、WEBページのスタイリングなど幅広く手がけ、お仕事柄たくさんの器と出会っていると思いますが、ご自宅のものはどんなふうに揃えていますか?

岩佐さん:
「作家さんも、メーカーさんも、世の中にいいものはたくさんあるけれど、家に迎え入れるものは “自分のペースでちょっとずつ” なんです。知識を広げながら、収納スペースも、金銭面でも、背伸びしすぎないようにしたいなと思ってます」

▲母が持たせてくれた白い器と、自分で買い足したどんぶり。

そんな岩佐さんが、最初に器を意識するようになったのは、いつ頃だったのでしょう。

岩佐さん:
「やっぱり、二十歳を過ぎて、一人暮らしをしてからでしょうか。実家では、器を意識することってなかったと思います。母に任せきりだったので(笑)

一人暮らしをするとき、母が買って持たせてくれたのが、四角くて、白い、大小2枚ずつの器のセットでした。焼きそば、スパゲティ、カレーライス、ワンプレートに主菜とごはんを盛り付けたりと、本当にたくさん使いましたね。

自炊すると、器を選ぶのも楽しくなってきて、家でラーメンやうどんも食べたいなと、近所のショッピングモールでどんぶりを買い足したりしました。どちらもなんてことない器ですけど、ずっと手放せず、いまでも時々使ってます」

 

大きい食器棚が置けなくても、心地よく収納するには?

▲メインの食器棚は、無印良品。スタイリストの師匠から譲り受けたもの。前の家では本棚だった。この家でどう使うかは決めていなかったけれど、ここにぴったり収まった。

時間をかけて、少しずつ大切に増やしてきた器たちは、小さなキッチンのあちこちに収納されていました。メインは、背面にある木製棚。ここにあるのはガラスのもの、かご類、お茶やコーヒーの道具たちです。

岩佐さん:
「外に出しているものは、自分にとってノイズにならないものたちで、ガラスやかごはまさにその筆頭です。部屋が狭くても心地よくいられる工夫のひとつかもしれません。

大きい食器棚を置くスペースはないので、コンロ脇やシンク下にも収納しているんです。ざっくり素材やサイズで分けて、お茶チーム・小皿チーム・深皿チームのように、同じ用途のものは同じ場所にまとめました。こうすることで、手持ちのものが埋もれにくく、使い勝手もよくなるような気がします」

▲「ここにもあるんですよ」と見せてくれたコンロ脇の作りつけの収納棚。上から、急須・茶托・コースター、マグカップ、朝食や取り皿にするため出番の多い15〜17cmのお皿など。「形・サイズ」と「用途」でまとめた。

▲コンロ脇の棚に入らない大皿は、キッチンカウンター下に、300円ショップのワイヤーバスケットに立てて収納。「たまたま持っていたのがシンデレラフィットして嬉しくなりました」

▲カトラリーはキッチンカウンターの引き出しへ。小ぶりなもの、金属のもの、木製のもの。素材で分けてすっきり。仕切りは、ホームセンターでカットしてもらった木材と木工用ボンドで簡単にDIY。

 

「長く愛せるもの」を選んでいきたい

続いて、お気に入りの器を見せていただきました。上から時計回りに、安藤里実さんのガラスの器、ベトナム旅行で買ったソンベ焼き、「もう1枚買えばよかった!」と言うほど気に入っている山田洋次さんの器です。

最近は、好きなインテリアショップで買ったり、ギャラリーでの作家さんの個展で見つけることが多いそう。けれど「限られたスペースしかないから、器選びはわりと厳選するタイプ」だと話します。

岩佐さん:
「ちゃんと使いまわせて、循環できて、あふれないようにしておきたいんです。一人暮らしで、この広さに住んでいる、そういう生活環境での “気持ちいい物の量” ってあるんだなぁと思います。

だから少数精鋭で、できるだけ長く愛せるものを選ぶように。好きなのは、手仕事の風情が感じられるもの。自然素材だったり、細部にこだわりがあったり、一点ずつゆらぎがあるようなもの。何年経っても変わらずに素敵だとイメージができるもの。それでいてシンプルなものが使いやすいです。

このガラスの器は、シンプルだけど表情豊かで、果物をのせて食卓に置くだけで絵になるし、夏にはおそうめんもいいなぁと思って買いました」

▲ティーマのヴィンテージの四角いプレート(左)とロイヤル コペンハーゲン(右)。「世界中で定番と呼ばれているものも間違いないと思います」

とはいえ岩佐さんも、いいものに出会うと、直感で買ってしまうこともあるんだと、照れくさそうに打ち明けてくれました。買ったはいいけれど、うまく使いこなせない器はどうするかと言うと……

岩佐さん:
「インテリアとして使います。棚に置いて鑑賞用にしたり、ちょっと小物をまとめてトレーにしたり。しばらくしてから模様替えとか掃除とかをすると、意外と『今度あの料理をのせてみようかな』みたいなことが起きるんです。それも面白くて!

自分の中で循環させて、使い方を変えて、ぐるぐる回していくと飽きないですし、それは生活の楽しい部分だと思います」

 

変わっていくところもあるし、変わらないでいたいところもある

お気に入りを並べてもらうと、本当に素敵な器がたくさん。「長く愛せる」という岩佐さんの基準で選ばれたものの説得力たるや。

だからこそ印象に残るのが、二十歳過ぎの、一人暮らしをはじめたばかりの頃に使っていた器のおはなし。10年以上の年月が流れた今も、手元にあるってすごいです。

岩佐さん:
「変わっていく部分と、変わらないでいたい部分と、どちらも自分の中にあって、家族を大事に思うところとか、初心とか、20代前半のお金がなかった頃の暮らしとか、そういうのを忘れないようにしたいんです。ひょっとすると、忘れないために置いてるっていうのもあるのかな。

……いつかは手放す日が来るかもしれないですね。でも、今そうしようとは全然思わないから、もうしばらくはきっと一緒に暮らしていくんだろうなと思います」

日当たりのいい古いマンションに、居心地よさげにおさまっている器たち。器は暮らしのなかで使うもの、そして一緒に人生を歩んでくれるものだと、岩佐さんとのおしゃべりであらためて感じました。器を大切にしたい気持ちと、誰かを大切に思う気持ちは、根っこで繋がっているのかもしれません。

それでは次回の更新も、どうぞお楽しみに。

 

【写真】木村文平

 

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岩佐知布由

インテリアスタイリスト。インテリアデザインを学んだのち、会社員やアパレル販売等を経て、フリーのインテリアスタイリストに師事。2018年に独立し、雑誌、広告、カタログなどでインテリアや雑貨、暮らしに関わること全般のスタイリングや、ショップのディスプレイ、住宅などの空間コーディネートを行う。

 

※記事に登場したアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです。

 

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