【愛しのワンルーム】2話:賃貸ワンルームのコンパクトなキッチンに、自分の「好き」を詰め込んで
ライター 大野麻里
リノベーションされた築47年のマンションで一人暮らしをしている、スタイリストの細沼ちえ(ほそぬま・ちえ)さん。明るい日差しが差し込む約36平米のワンルームは、コンパクトならがも細沼さんの「好き」がめいっぱい詰め込まれています。
第1話では、いい物件に出合うためのヒントや、家具のレイアウトの仕方についてお聞きしました。2話目では、キッチンにクローズアップして話を伺います。
キッチンは色をおさえて、ワンルームにメリハリを
リノベーション済みの賃貸物件ということで、造り付けのキッチンは白とステンレスのモダンでシンプルなもの。それと対面するようにステンレスの作業台を置き、収納も兼ねた機能的なキッチンを実現させています。
細沼さん:
「キッチンまわりは、意識的に色みをおさえています。リビングに置いてる小物や、食器類がカラフルなものが多いこともあり、部屋全体に色があるとごちゃごちゃして見えてしまいそうで」
棚に並ぶキャニスターには、紅茶やシナモン、かつおぶし、いりこなどを。ジャンルの違う食材でも、これに詰め替えていることで統一感があり、整頓された印象です。
細沼さん:
「パッケージが気になるものは、必ず詰め替えています。多分そのひと手間で、すっきり感が全然違うんですよね。レシピ本やお鍋、空き瓶、ブレンダー、洗剤など、こまごましたものはシンク下の扉付き収納にすべて隠しています」
▲石のペンダントライトは福岡のインテリアショップ「ライトイヤーズ」のもの
細沼さん:
「キッチンの照明には、お気に入りのペンダントライトを。照明ひとつ変えるだけでも、部屋の印象はかなり変わります。蛍光灯よりもやわらかい光で、居心地のいい空間になっています」
家電は最低限。ないならないで、どうにかなる
コンパクトなキッチンで、多くの人が悩むのが家電の置き場所です。ところが細沼さんのキッチンでは、見えるところに置かれているのは冷蔵庫とトースター、電気ケトルだけ。この家電の少なさも、キッチンが素敵に見える理由の一つかもしれません。
細沼さん:
「炊飯はお鍋、温め直すときはせいろを使っています。仕事が忙しいときは、炊飯器や電子レンジがあったら便利だなぁとも思うのですが、ないならないでどうにかなる。
どんなものに対しても『これは本当に必要?』という感覚が常にあるんですよね。その結果、炊飯器は壊れたタイミングで手放しました」
細沼さん:
「もしいまから新生活を始める方がいたら、最初に家電を全部揃える必要はないとお伝えしたいです。生活してみて本当に必要だと感じたものを購入するぐらいが、キッチンのものを少なく保てると思います。
うちでは電気ケトルも使っていますが、ガスコンロにはキャンプ用の小さなやかんを。一人のときはやかんで十分こと足りています」
▲キッチンから見た、リビングスペース。左奥が寝室のスペースになっている
お気に入りの作業台には、お気に入りの器を
シンクやガスコンロがあるキッチン台と、向き合うように置かれているのがこちらのステンレス作業台。オークションサイトで見つけ、購入したものだとか。
キッチンとリビングスペースを区切る間仕切りと収納の役割を果たしていて、キッチンの作業性を向上させるのに一役買っています。
細沼さん:
「新品ピカピカのものより、エイジングされて味わいがあるようなものが好きなので、これを見つけたときは一目惚れでした」
食器はすべてこの棚に。旅行が趣味ということで、棚に並ぶのは国内外の旅先で買ってきた個性豊かな器の数々。
チュニジアやモロッコで購入した、色あざやかな器。フィリピンの土産物屋で買ったシェルのトレー。与論島の作家さんがつくるスープカップに、多治見の「サードセラミックス」の皿、大相撲の観覧土産の食器など……。一つひとつに思い出があり、時間をかけて揃えたことがよく分かります。
棚のなかには修復の跡が残っているものも、ちらほら。このキッチンに置かれていると、継ぎ目さえもはじめからデザインされているかのよう。
細沼さん:
「食器を割ってしまうことが多くて……。本漆を使わない簡易金継ぎですが、自分で金継ぎしています。金継ぎをすると、より表情が生まれるような気がして、もっと好きになるんですよね。割れた器もこうして長く使い続けています」
生活しながら生まれた、小さな収納テクニック
可愛らしく飾られていながら、生活感のある余計なものが見当たらない細沼さんの部屋。「使ったものはもとの位置に戻す」を徹底することで片づけにつながるとのことですが、収納におさまらない場合は、どうしているのでしょう。
「例えば、いただきもののお菓子や食品などは、どこに置いておくんですか?」と訊ねると、デッドスペースに隠し収納が……!
細沼さん:
「冷蔵庫の上に100円ショップで買ったつっぱり棒と網を渡して、ここを一時保管置き場にしています(笑)。いただきもののお菓子とか、買い足してきたキッチンペーパーのストックとか。ここに置くと場所を決めておけば、あまり散らからないですよ。
ここに置くときもキッチンペーパーなどの目立つパッケージは外して、なるべく存在感が出ないように気をつけています」
▲換気扇には高耐荷重のフックを付けて、フライパンや調理器具を収納
こういった小さな経験と工夫の積み重ねが、キッチンをより魅力的にしているのだと思います。ミニマムなキッチンですが、細かい部分まで使いやすく配慮されていて、細沼さんが日常的に料理をしながらこのスタイルにたどり着いたことがよく伝わってきました。
最終回の3話では、得意なDIYやディスプレイの秘けつについて伺います。
(つづく)
【写真】北原 千恵美
もくじ
細沼ちえ
1980年生まれ。スタイリスト。会社員、アシスタントを経て、2009年に独立。雑誌や広告など、幅広く活躍している。国内外の手しごとや民族衣装、建築などにも興味を広げ、そのエッセンスを生かした唯一無二のスタイリングが持ち味。Instagram:@chienuma
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