【軽やかに暮らす】前編:「fog linen work」オーナーの関根由美子さんのご自宅へおじゃましました。
ライター 藤沢あかり
「軽やか」と聞いて、どんなイメージを浮かべますか。
空気を含んだふわふわの綿、それともスキップのような足取り、風に揺れる洗濯物。思い描くかたちはそれぞれ違っても、きっとどれも、すがすがしい気持ちよさに満ちている気がします。
梅雨、そして夏に向かうこれからの季節を、暮らしも心も軽やかに。そんなふうに過ごすヒントを求めて、「軽やかに」暮らしている方に会いにいきました。
訪ねたのはリネンと雑貨のブランド「fog linen work」オーナー、関根由美子さんです。
住まいは、四角い箱のようなシンプルがいい
打放しコンクリートの壁とすべすべのフローリング。その凛としたコントラストは、ギャラリー空間のよう。関根さんいわく「段ボールの箱みたい」というこの家に、建築家の夫と、最近家族に加わった地域猫のトラちゃんと一緒に暮らしています。
関根さん:
「できるだけ仕切りがなく、色の数も減らしてシンプルにと設計をお願いしました。より気持ちよく過ごせるよう、巾木や段差もできるだけなくしています。以前の家は、巾木にホコリが溜まるのが気になっていたんです」
▲リビングの一角に設けた関根さんの仕事スペース。ゴッホの模写は関根さんの父親が描いたもの。
最初に間取りをざっくりとご紹介しましょう。1階はガレージとゲストルーム。2階はキッチンとリビング、ダイニング。3階には、バス・トイレなどの水まわりと寝室、書斎があります。
まずは2階のリビングから。案内され部屋の中を歩くたびに、ふうわりさわやかな香りを感じました。アロマのルームスプレーのような、でももっとほのかで自然な、すがすがしい香りです。
関根さん:
「特に香りものは使っていませんが……。あ、もしかしたらハーブかもしれません。あとでお茶にしようと切ってきたばかりなんです」
花を生けるように、ハーブを日常のあちこちに
見るとシンクには、切り立てのレモングラスとミントが。窓辺やダイニングテーブルの脇など、部屋のあちらこちらにもハーブが生けてあります。ガラス花器が並ぶ様子もみずみずしく、目にも涼やかです。
関根さん:
「生けているのはローズマリーとローズゼラニウムです。
このふたつは切っても切ってもどんどん伸びてくるし、水に挿しておくと根っこが出てきて、また増えて。香りもいいし気軽だし、お花がなくても植物があるだけでさわやかな感じになる気がします」
湿度も気温も高くなる時季は切り花の持ちが気になりますが、こんなハーブならすぐに取り入れられそう。なによりハーブは強くて丈夫。多少の暑さや湿度に負けることなく、ぐんぐん成長してくれます。
風通しのいい軽やかなリビングの作りかた
それにしても、なんと広々と開放的なリビングでしょうか。
天井が高いことも理由のひとつかもしれません。でもそれを差し引いても、ものが少なく、すっきりと風通しのいい空間です。
関根さん:
「装飾を抑えて、なにもない広いスペースを作りたいと思っていたんです。
盛岡の実家を出てひとり暮らしを始めたとき、東京の部屋の狭さにびっくりしました。向こうは田舎だし、祖母も一緒に住んでいたのでそれなりに広さがありましたが、こっちでは6畳ワンルーム。いつも、いかに場所をうまく使うかが課題でした。
いまでも、ものよりもスペースを持つことのほうが贅沢な気持ちになれます」
『ひとつ買ったら、ひとつ手放す』の心がけ
関根さん:
「そうはいっても生活していると持ちものは自然に増えますから、夫から聞いた『one in, one out』、『ひとつ買ったら、ひとつ手放す』を意識しています。
設計時も前の家の物量をもとに、引き出しや棚の数を決めました。だからものが増えることを想定していないんです」
増えたものは定期的にお店でフリーマーケットを開いたり、使ってくれそうな友人に譲ったり。ものが少ない身軽な暮らしは、心も軽やかにいられそうです。
本棚も、余白を残しているのが印象的です。
関根さん:
「本はずっと手元に残しておきたいと思うもの以外は、3年くらい読まなければ手放しています。キッチンクロスも、1年に一度かならず総入れ替えをしてすっきりさせるのが好きですし、自然とものを入れ替えているのかもしれませんね。
先日、仕事でインドに一ヶ月ほど滞在しましたが、日本からのトランクひとつ、意外と少ない持ち物で過ごせるんだなあと改めて思いました」
目に入るものを厳選した、すっきりとしたキッチン
ステンレスの壁づけキッチンは、この家に合わせて造作してもらったものです。キッチンツールや食器などはあまり表に出さず、作業台下の引き出しとパントリーのオープン棚に収めています。
▲カトラリー類はインドでつくられるブリキボックスを組み合わせて収納しています。
▲よく使う器は引き出しへ。fog linen workのキッチンクロスを敷いて滑り止めに。
▲ガラス、ベージュ、白など素材や色にも統一感が。年に一度入れ替えるというキッチンクロスは、畳んで使いやすい位置に。
関根さん:
「内装はシンプルにして、あとから家具やファブリックで色を加えていけばいいと思っていましたが、壁をグレーにしたら、そんなにカラフルな色は似合わないのかもと気づきました」
そう聞いて、改めて見渡してみると、キッチンのステンレスやアイアン、床やダイニングテーブルの木材、籐のバスケットやガラスなど、素材そのものが持つ色でまとめているようです。そのシンプルさも、軽やかな視覚効果に一役買っているのかもしれません。
そんなトーンを抑えたシンプル空間にやわらかさを添えているのが、関根さんならではのファブリック使いです。
後編では、寝室や水まわりなどを拝見しながら、これからの季節に試したいファブリックの選びかた、楽しみかたをうかがいます。
【写真】川しまゆうこ
もくじ
関根 由美子
岩手県盛岡市出身。東京・下北沢『fog linen work』オーナー。リトアニアの麻素材を用いたオリジナルのリネンアイテムのディレクションと国内外の雑貨をセレクト。キッチングッズやベッドリネン、洋服など日常使いできるリネンの魅力を広く伝えている。南インドのルンギと呼ばれる布を使ったファッション雑貨ブランド『miiThaaii(ミーターイー)』も主宰。Instagram:@foglinenyumiko
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