【大人のひとり時間】前編:築浅の賃貸でも、自分好みの空間に。古い家具を合わせてつくる海外のような部屋
ライター 大野麻里
人が生活している気配を感じる、ほどよい “ごちゃっと感” 。はじめて訪れたのが嘘のように、心が落ち着く居心地のいい雰囲気。好きなものに囲まれた暮らしをしている人の部屋ほど、魅力的なものはありません。
憧れはあるけれども、その塩梅こそ難しいもの。そこで、長野県で美容室「Kanade(かなで)」を営んでいるヘアスタイリストの本山聖子(もとやま せいこ)さんの自宅を訪ね、心地よい部屋をつくるヒントを探りました。
本山さんの自宅を訪ねたのは、夏の訪れを感じる天気のいい日。さわやかな風に吹かれながら、山々が望める長野らしい風景を道を車で走ると、高台にある小さな集合住宅にたどり着きました。
建物は築浅で、玄関を入ってすぐに階段を上がるメゾネットタイプ。本山さんの住まいは2階部分で、部屋の扉を開けると古い家具や好きなものがバランスよく配置されていて、まるでパリのアパルトマンのような雰囲気。建物とのギャップに驚かされます。
ロフト付きの1LDKは天井が高く、コンパクトながらも開放感のある部屋。約33平米の賃貸物件で暮らすひとり暮らしの空間には、小さな “好き” がめいっぱい詰めこまれていました。
週1回、ダイニングテーブルの花は必ず新しく
リビングに入ると最初に目に飛び込んでくるのが、いい感じに使い込まれたアンティークの大きなダイニングテーブル。中央には花器や果物が飾られていて、ここが部屋を彩る主役になっています。
本山さん:
「お花は週1回、店の定休日に必ず買っています。今日の花は、美容室でもいつもお願いしている地元の花屋さん『flumina flumira』にお任せして用意してもらいました。
花が枯れてくると、帰ってきたときに部屋が殺風景に感じて、寂しくなるんですよね。だからいつも欠かせません。毎週買うとそれなりにお金がかかることなので、スーパーなどで見繕って買うことも多いです」
20代は短期でロンドンへ、30代はミラノのサロンで2年半働いていたという本山さん。暮らし方は、海外生活で影響を受けたことも多いのでしょうか……?
本山さん:
「ミラノで暮らしていた家は、当時アンティーク店を営んでいたオーナーの家の一室を借りていました。お花を飾る習慣はそのときに教わった気がします。イタリアに限らず、ヨーロッパの人々には花を飾る習慣が生活になじんでいますよね。特別なことじゃなくて、生活の一部というか。
例えば家具がテーブル1個だったとしても、花を飾っただけで豊かになる。たった一輪でも素敵だなと思えると、日々の生活がうるおう感じがします。
海外での生活は習慣や価値観が大きく違って、最初は正直慣れなくて。一方、暮らし方はすごく魅力的でもありました。日本はなんでも便利で、それはありがたいことなのですが、現地ではアナログのよさに気づく感覚も。ロマンがあるのがいいなぁ、と」
古いもの好きは、風変わりだった祖父の影響
「家具はほとんど譲り受けたもの」と話す、本山さんの部屋。年代や生産国、値段もバラバラですが、不思議とまとまっているのは本山さんの審美眼で選ばれたからこそ。古いものや骨董が好きなのは、昔の記憶につながっていると話します。
本山さん:
「子どもの頃に、一緒に暮らしていた祖父母のものを見ていたからだと思います。祖父の写真でよく覚えているのが、ガウン姿でロッキングチェアに座りながら赤ちゃんだった私を抱いている姿(笑)。その時代の長野ではだいぶ珍しい人だったのでは。
天井からランプが吊るしてあったり、壁には絵画が飾ってあったり。シノワズリや西洋のものなどが多く置いてありました」
本山さん:
「自分でも気づかないうちに、『あんなものがあったな』と記憶が刻まれている気がします。いまの部屋の絨毯も、当時の祖父母が使っていたものに似ているんですよね。
素敵な雑貨屋さんものぞくし、おじいさんおばあさんが営んでいる金物屋さんなどで買い物するのも好き。価値に納得できれば、値段に関係なく購入しています」
本棚と飾り棚を兼ねているのは、100年以上前の日本の文机。和の雰囲気になりすぎず、部屋にしっくりなじんでいるのは、取っ手がヨーロッパのアンティーク調のものに変わっているからだそう。
その下にはいくつかのラグを組み合わせて。賃貸物件特有のクッションフロアの床の面積が減ることで、アンティーク家具とのバランスが取れているのでしょう。
お手ごろな価格帯のラグのなかには、奮発して購入したという数十万円(!)のギャッベも混ざっていて、本山さんの趣味の深さがうかがえます。
無造作に見えるけれど、実は……
ダイニングテーブルの端には本や雑誌や洋書が積み重なっていました。
本山さん:
「ごちゃごちゃに見えますが(笑)、定位置はわりと決まっています。読むためでもあるのですが、これも飾りの役割みたいな。
本の並びや色のバランスなど、自分の中での感覚的なルールが一応あって。だから意外と時間が経っても変わっていないんです。そうしないと、成立しないような気がして」
無造作に置いてるようですが、言われてみるとオレンジ色の冊子と果物のオレンジ、黄色の冊子と壁に飾った絵、お花の黄色がリンクしていることに気づきます。静物画の世界のような、絶妙な配置。
ダイニングテーブルの上には何も置かないことがよいと思いこんでいた私は、こういったテーブルの飾り方に目から鱗でした。
本山さん:
「テーブルの上は、いつも大体こんな感じです。ここで食事をしたり、テレビを見たり、勉強したり。テーブルまわりも、適当でありながらも、『こっちの飾り方がいいかな』など私なりのゆるいルールで雑貨や食器を並べています」
古いものが好きだけど、新しい建物に住む理由
古いものが好きで、営んでいる美容室は築50年の一軒家をリノベーションしている本山さん。自宅は築浅のきれいな物件を選んでいることが、少し意外でもありました。
本山さん:
「美容室は、営んでいくなかで古さゆえの大変さもあって。特に長野の冬は雪が降って氷点下になるので、暖房費や維持管理の問題で、住むところには快適さを求めました。仕事が忙しいと、家の不便さは減らせるといいなって」
▲ロフトスペースにマットレスを置いて、シンプルな寝室に
本山さん:
「この部屋は天井が高いころがすごく気に入っていて、物件選びは大事だなぁと改めて感じました。天井が低い家のよさもあると思いますが、自分にとっての心地よさを知ることって大事ですよね」
暮らしは毎日繰り返すことだからこそ、自分にとっての快適さを見極めた本山さんの住まい。そのなかで、好きなものはあきらめず、賃貸という箱に制限されない理想の空間をつくり上げているのが印象的でした。
続く後半では、本山さんのひとり暮らしの部屋に求める考え方を中心に、心地よく暮らす工夫を拝見していきます。
【写真】上原未嗣
もくじ
本山 聖子
長野県長野市にある美容室「Kanade」のオーナー。ロンドンでの留学経験、ミラノでの美容室勤務を経て、2017年に自身の美容室をオープン。店では海外から買い付けた、雑貨や子ども服、アクセサリーなどを販売するコーナーも。https://kanade-salon.com/
Instagram:@tumugi.kanade
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