【連載】あの人の暮らしにある「北欧」のこと no.01:窓辺を飾る
ライター 藤沢あかり
毎朝つかうマグカップ、古いものを受け継ぎ使うこと。身近なお気に入りや習慣が、実は北欧からヒントを得ているということはありませんか。
デザイナーの立古尚子さんも、北欧の世界を日常に招き入れ、大切にしているひとり。そのきっかけは、学生時代に知り合ったひとりのフィンランド人女性でした。
ささやかに取り入れている、暮らしのなかのちいさな北欧。いますぐ始めてみたくなる、手のひらサイズの「北欧」を4回にわたってお届けします。
§
秋の気配がふうわり漂うようになりました。
「そろそろ窓辺の模様替えをしようかな」
立古さんはキッチンで夕飯のしたくをしながら出窓に目をやり、ちょっと考えているようです。
夏は、白やガラスを集めていた窓辺。秋が深まると、こっくりした色の陶器を並べたくなります。
季節や気分で窓辺を飾る楽しみ。教えてくれたのは、北欧で見た光景です。
2006年4月、立古さんは、はじめて北欧を訪れました。
行き先はフィンランド。飛行機を乗り継ぎ、首都ヘルシンキの駅に降り立ったのは、すっかり夜も更けたころでした。
4月といえど、路肩にはまだ雪がたっぷり残っています。ぶるぶる震えながら、重いスーツケースを引っぱりホテルまでの道を急ぎました。しずかな夜です。街は暗く、眠っているようでした。
翌日、明るい街を歩いた立古さんはおどろきました。
どの家も、窓辺が美しく飾られているのです。花や植物、ガラスのオブジェやキャンドル。日が暮れると、家々からこぼれる窓あかりが通りを照らします。きっと、歩く人の目を楽しませるためでもあるのだろうと立古さんは思いました。
フィンランドに来たのは、6年前の約束を果たすためでした。
留学先のオーストラリアで仲良くなった女の子がいます。フィンランドからやってきたという彼女は、この街の雰囲気が、出身のヘルシンキと似ているのだといいました。
「クリーム色と緑色、トラムの色までおんなじ! せっかく思い切って遠くへ留学したのに、よく似た街に来ちゃった!」と笑う彼女に、「じゃあ、どのくらい似ているのか、わたしがフィンランドに確かめに行くからね」と約束をしたのです。
フィンランドのテキスタイルと「マリメッコ」のこと。どの家にもたいてい「アラビア」や「イッタラ」の食器があること。「アアルト」の建築やデザインのこと。どれも彼女に教えてもらったものです。
遠い北の国だったフィンランド。やがて立古さんは、その魅力に夢中になっていきました。
キッチンに立ち、ふと視線を移すと、この出窓があります。晴れの日、雨の日、曇りの日、家族のごはん作りにとりかかる夕暮れどき。雑貨が光を受け、さらに美しく見えることも知りました。
マンションでは、窓辺を飾ったところで通りからは見えません。でも、その向こうに広がる空は、友だちが暮らすヘルシンキの街にもつながっています。
立古 尚子(りゅうこ なおこ)
グラフィックデザイナー。ステーショナリーや雑貨、冊子など、紙媒体を中心としたデザインを手がけている。夫と娘との3人暮らし。
インスタグラム @nao_et_noa
Text : Akari Fujisawa
Photo: Ayumi Yamamoto
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