【わたしを満たす、名もなき料理】第1話:日々の料理がおっくうにならない。料理家・瀬尾幸子さんの保存術と活用法
台所に立つようになって20年以上、どこか正解がわからないまま、料理にあまり自信が持てずにいます。
失敗も成功もふくめて場数だけは踏んできたけれど「この作り方でよかったのかな?」「おいしく出来たかな…」「家族は満足しているかな」と、ぼんやりとした不安を拭いきれないまま。自分ではない誰かを思い浮かべて日々ご飯を作っています。
そんな私の霧のような不安を、サーっ!と払いのけてくれたのが料理家・瀬尾幸子さんの『これでいいのだ!瀬尾ごはん』というエッセイ。
毎日のごはんは、手のかからない、名もなき料理でいい。自分がおいしいと思えるなら、ほっとできるなら、それでいいんです!という言葉の数々に、大海原でさまよった果てにようやくブイを見つけたような気持ちになりました。
毎日、もっと軽やかな気持ちで、自分を満たすご飯を作りたいと、瀬尾さんに全3話で食材の保存術や簡単なレシピを教わります。
毎日のごはんは、思い出せないくらいの料理がいい
瀬尾さん:
「おいしくするためのルールや、きれいに仕上げるためのルールはもちろんあるけれど、家庭料理でいちばん大事なのは、自分や家族が美味しいと思えることです。まずは自分の味覚を信じましょう。
おいしかったと思える組み合わせや味つけを少しずつ見つけていって、名もなき料理を、自分好みに作れたらそれでいいんですよ。それにご馳走よりも『昨日は何を食べたっけ?』と、忘れるくらいの料理のほうが、飽きずに食べ続けられるものです。
あとは料理がおっくうにならないように、食材を使い勝手がいいようにしておくとよいですよ」
食べなくちゃ、のプレッシャーを払いのける
瀬尾さんちの保存術
日々フットワーク軽く、気楽に食べたいものを作れるように、まずは瀬尾さんが暮らしの中で実践している食材の保存術を教わります。
瀬尾さん:
「スーパーで買った食材が使いきれないと、冷蔵庫から妙なプレッシャーが送られてくるじゃないですか。でも、食材を買ってすぐにチンしたり、塩を振ったり、茹でたりするだけで保存が効くようになって、そのプレッシャーから解放されるんです。
ぜひ『もう私にプレッシャーをかけさせないぞ!』という心持ちでやってみてください」
①ゆで野菜
▲上から時計まわりに小松菜、ニラ:冷蔵庫で5〜6日ほど、ほうれん草は3〜4日はおいしく食べられる
瀬尾さん:
「ほうれん草や小松菜などの葉物、それにニラは買ってすぐ茹でておけば、生の状態より倍くらい長持ちします。食べやすい大きさにカットして茹でたら冷水にとり、ザルで水を切ったら、ぜったいに絞らずに保存容器に入れましょう。絞ると傷みやすくなるので。
買ってきたお惣菜に添えるだけで満足感があがるし、オリーブオイルと醤油を回しかければ副菜にもなるし、味噌汁に入れて具沢山にしても。
1食分ずつアルミカップに入れて冷凍しておけば、お弁当にも入れられる。自家製の冷凍食品です」
②レンチン野菜
▲上からレンチンしたナス、キャベツ、モヤシ。加熱時間は野菜100gあたり700Wで1分強を目安に。冷蔵庫で5日ほどおいしく食べられる
瀬尾さん:
「野菜のなかには、レンジでチンしたほうが美味しく食べられるものもあります。野菜によって加熱時間に差があるので、それぞれ詳しくお伝えしますね。
たとえばキャベツはチンすると甘みが増します。1/4個をざくぎりにして耐熱ボウルに入れて6〜7分加熱し、流水をかけて粗熱をとると、色もきれいで絶妙な歯ごたえに。
モヤシも茹でるよりチンしたほうが旨みが逃げずシャキシャキ感も保てます。1袋(200g)を3分ほど加熱したら冷めるまで置いておき、汁ごとタッパーで保存しましょう。
ナスは炒めると油を吸うし、焼きなすは面倒ですし、レンジで加熱するのがラクです。皮を縞目にむいて1本あたり1分ほど加熱して(大きいものは、もう少し加熱に時間がかかる場合も)冷水をかけ、手で触れるくらいになったら保存容器へ。甘酢やマリネ液につけたら夏にちょうどいい常備菜にもなります」
③塩きゅうり
▲冷蔵庫で5日ほど保存がきく
瀬尾さん:
「夏はきゅうりが安くておいしいけれど、1袋に5本くらい入っていたりするので、一度に食べ切れないですよね。日が経つと萎れてしまうので、買ってきたらすぐにスライスして塩を振ってやさしく混ぜ合わせたら水気を絞らず保存容器へ。
酢の物や和え物に使ったり、トーストに乗せてマヨネーズをかけて食べても美味しいです」
④余り野菜の塩水づけ
瀬尾さん:
「お料理していると半端に野菜が余ることがありますよね。それを塩水に漬けておけば、サラダ感覚でパクパク食べられます。水1カップあたり塩小さじ1〜2を目安に、野菜の量によってつけ汁の量は調整を。3時間後くらいから食べられ、保存期間は1週間以内です。
ごま油やオリーブオイルをかけたり、ゆかりで和えたりすれば副菜にもなりますよ」
⑤冷凍焼きシャケ
瀬尾さん:
「シャケもまとめて売られていることが多いので、1パック買ったらまとめて全部焼いて、骨と皮をとり、1切れ分ずつ保存容器に入れて冷凍しておくと便利です。おむすびの具にしたり、卵焼きやパスタに入れても。保冷剤がわりにお弁当に入れてもいいですし、これも自家製の冷凍食品になりますよ」
それでは、ここまで保存法を教わった食材を使って簡単にできる主菜と副菜を教わります。
レンチンキャベツと焼きシャケの
粉なしお好み焼き
瀬尾さん:
「レンチンキャベツと焼きジャケを適量レンジであたためたら薄焼き卵を上にかぶせて、ソースとマヨネーズ、青のり、かつお節をかけたら完成です」
瀬尾さんいわく『脳内ではお好み焼きです』のこの一皿、すごく軽やかな食べ心地なのに満足感があって、家で作ってみたら家族にも大好評。野菜をたっぷり食べられるので、日によって中身をモヤシと豚にするなどして何度もリピートしています。
瀬尾さん:
「副菜は、レンチンなすにオリーブオイルと醤油をまわしかけてレモンを絞り、パセリを添えてさっぱりと。他のゆで野菜を同じような食べ方にしてもいいですし、塩水づけの野菜にごま油をあえたり、塩きゅうりにしらすを足して梅を和えたりしても。
生のまま、茹でただけ、焼いただけでも十分に満足できるおかずは作れますよ」
ゆで野菜にオリーブオイルと醤油をかけたらなんでも美味しくて、野菜を変えたら味も変わるので、最近わが家の副菜はこれ頼みに。簡単でおいしくて、飽きずに食べられるって最強です。
つづく2話では、お肉の保存法とそれを使った中華風のアレンジレシピを教わります。
【写真】濱津和貴

瀬尾幸子
料理研究家。手早く作れて、食べ飽きない料理を雑誌や書籍、テレビなどで提案。素材の持ち味をぐっと引き出すレシピが、幅広い世代に支持されている。近著に『おにぎりは味方です』(Gakken)、『60代、ひとり暮らし。瀬尾幸子さんのがんばらない食べ方』(世界文化社)ほか著書多数
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