【特集|その働きかたが知りたい】神楽坂・かもめブックス 第1話:街の本屋さんになる決意をした僕ら
編集スタッフ 田中
本日より特集シリーズ、「その『働きかた』」が知りたい。」本屋さん編を4日間にわたってお届けします!
2014年夏に保育園の園長先生とミュージシャンの肩書きをもつ齋藤紘良さんの特集をお届けしました。その第二弾として、今回は”本屋さん”を営む方に注目しました。
その本屋さんとは、東京・神楽坂に昨年11月末にオープンした「かもめブックス」です。本屋さんが好きな私たち、実は開店前から楽しみにしていました。
今回は、そのオーナーである柳下恭平さんにお話を伺いました。本屋がだんだん少なくなっていく!その危機感から熱い思いで街の本屋さんになる決意をした柳下さんたちの物語、ぜひお楽しみください。
「かもめブックス」という本屋さんが
神楽坂にできました。
東京・神楽坂に、新しく本屋さんができることを知ったのは2014年9月のこと。
「校正の会社が新しい本屋、始めます。」というキャッチコピーとともに、笑顔の柳下恭平(やなした きょうへい)さんがお店の前に佇む写真が載ったプロモーションのサイトを発見したのです。
11月末にオープンするということ、校正の会社という本屋さんではない方が始める本屋だということ、カフェやギャラリーが併設されることが分かるお知らせに、「行ってみたい!」とワクワクとした気持ちになりました。
柳下恭平さん(以下敬称略):
「あの予告サイトは、一緒に店を立ち上げた友人でもあり仕事仲間でもある井上(現在ショップマネジャー)の考えでした。
近所の方はきっと『次は何になるんだろう?』って不安だったと思うので、お知らせする意味でもありました。僕としてはこんなに表に出るとは思わなかったんですが」
と笑う柳下さん。今回再現してもらった一番上の写真。このチャーミングな風貌が目に焼き付いて離れなかったのは私だけではないはずです。
今回は、かもめブックスの柳下さんにこの街や本への思いを見つめていただきながら、クラシコム・田中が「街の本屋さん」の働きかたに迫ってみたいと思います。
ぜひご自分の街の本屋さんを思い浮かべながら、楽しく読んでいただけたら嬉しいです!
本を取り巻く、厳しい現実を知る。
柳下さんは文章校閲を専門とする株式会社鴎来堂(おうらいどう)の代表を務めていらっしゃいます。
校正・校閲とは本をつくる上で欠かせない仕事のひとつ。一般にはあまり知られていないかもしれませんが、文字の表記を統一したり間違いを見つける作業を言います。
出版社、印刷会社、編集者、デザイナーなど本に携わる人々が多い神楽坂の街で、創業10年目を迎える鴎来堂では多くの本の出版を支えています。
– 編集チーム・田中(以下、田中):
校正・校閲の仕事は、文章を読みやすく直していくことと言いますがパッとイメージしづらい職種だと思います。柳下さんがなぜこのお仕事に魅力を感じるのかを教えてください。
柳下:
「文章の間違いを見つけて直すといっても、誤字以外にも表記の統一や言い方などいろいろとあるんですよ。まずは原稿を読んでいくわけですが、僕はもともと本を読むのが好きなので、本を読んでお金がもらえるなんて幸せ!と思っていました。
また、自分では手に取らない本を読めて知らない言葉を知ることができるんですよね。
そしてこの仕事は『究極の読書』だとも言えます。先入観などをいれずに読み、しかし最後は主観も含めて読んでいく。本当に面白い仕事だと思っています」
一冊の本ができたとき、どんなひとに読んでもらいたくて著者が書いたのかを考え、読み手がより読みやすい文章にしていく仕事。本が書店に並ぶ前の大切な過程です。
しかし、鴎来堂を立ち上げて人材育成にも力をいれてきた柳下さんに、近頃ある危機感がじわりじわりと迫っていたようなのです。
柳下:
「本が売れなくなってきている出版不況が叫ばれているのは、皆さんご存知かもしれません。僕らの仕事もその苦しい状況のなかにいるんですね。
そのなかで鴎来堂を今後どうしていくかここ数年悩んでいました。本が売れないということは、僕らもいつか今のようには本を作り続けられなくなるってことですから」
こんなに面白いものが売れないわけがない、とは思う。しかし本屋=売る場所がなかったら子どもから大人まで本に触れる機会が少なくなってしまう、という危機感が身に迫っていたことも、かもめブックスを立ち上げる理由のひとつだったと言います。
本をつくる側から売る側になった理由
– 田中:
危機感もありつつ、鴎来堂の姿をどうしていくかで悩んでいた柳下さんが、なぜ本屋さん開業に向かったのでしょうか?
柳下:
「昨年4月、今かもめブックスがある場所で営業していた文鳥堂という本屋が閉店したことがきっかけです。自分の街の本屋さんがなくなることでやっと本屋さんの大変さを実感してとてもショックを受けました」
それからの柳下さんは、驚くべきスピードで本屋さん開業にむけて進んでいきます。その夜、友人でもあり仕事仲間である編集者・井上さんにこの憂うべき事態を打ち明けました。
街の本屋がなくなることは、街の文化の衰退でもある。こんな事態が悲しい。そんな気持ちと、自らの本作りの仕事は果たして10年、20年後も続けられるのだろうか?と本を取り巻く厳しい状況を嘆いていました。
横で聞いていた井上さんは、ここで柳下さんの背中を押しました。「そんなに言うなら、柳下さんが本屋をやればいいじゃないですか」と。
▲コーヒーをお客様に出す井上さん(撮影:クラシコムスタッフ)
本屋さんを始めるのは
「今だ」と思った。
井上さんの言葉から二日後には、閉店した本屋さんの物件を押さえていました。そして井上さんに電話がかかります。「本屋さん始めることにしました。もちろん、手伝ってくれるよね?」2014年4月5日の閉店、5月から開店準備、そして11月末の開店に向けて走り始めました。
柳下:
「実はリタイヤしたら本屋になりたいと思っていたんです。現代は部屋に本棚がない方々がとても多い気がして、生活空間に本を取り戻すことを目指したいと考えていたんです。
でも、本を作る側の僕らと売る側の本屋は繋がりもなくて、バラバラに動いていた。その状況に憤りも感じていました」
しかし、自分たちが本屋さんを始めたらまさにその繋がりができるのでは。
同じように編集の仕事で本作りに携わってきた井上さんも「こういう夢のある話がいまの出版界には必要なんだ」と感じ、柳下さんはオーナー、自分はショップマネジャーとして動き始めました。
タイミングと決断、そこに大きな覚悟と熱い気持ちをもった柳下さんがいたからこそ、かもめブックスの物語が始まりました。明日からはいよいよ本屋さん開業にむけてのお話です。どうぞお楽しみに!
※プロフィール情報は記事掲載時のものです。
(撮影:小野田陽一)
もくじ
感想を送る
本日の編集部recommends!
小さな不調のケアに
手間なくハーブを取り入れられる、天然エッセンシャルオイル配合の「バスソルト」を使ってみました【SPONSORED】
【11/26(火)10:00AMまで】ニットフェア開催中です!
ベストやプリーツスカートなど、人気アイテムが対象に。ぜひこの機会をご利用ください♩
お買い物をしてくださった方全員に「クラシ手帳2025」をプレゼント!
今年のデザインは、鮮やかなグリーンカラー。ささやかに元気をくれるカモミールを描きました。
【動画】北欧をひとさじ・秋
照明ひとつでムード高まる。森百合子さんの、おうち時間を豊かにする習慣(後編)