【はたらきかたシリーズ】出版ユニットnoyama 第3話:好きを仕事にする、ということ。
編集スタッフ 津田
自然とアウトドアをテーマにした出版ユニット”noyama”として活躍する、木工アーティスト・しみずまゆこさん、編集者・高橋紡さん、写真家・野川かさねさん、料理家・山戸ユカさんに、働きかたについて全3話でお話を伺っています。
共通の趣味であるアウトドアがきっかけでユニットを結成し、2010年に1冊目の本を発行した4人。第3話では、その後の活動について詳しくご紹介していきたいと思います。
もくじ
本づくりにとどまらない活動。
2010年に『つながる外ごはん』(小学館)、2013年に『noyamaのおつまみいろは』(大泉書店)、2014年に『外あそび&外ごはんはじめよう』(文藝春秋)と、3冊の著書をつくってきたnoyamaですが、現在ではアウトドアイベントでのワークショップなど活動の幅を広げています。
しみずさん(木工アーティスト):
「こちら(写真上)は『mammoth(マンモス)』というキッズ向けのフリーペーパーでの連載記事です。
ウッドバーニングペンという木を焦がすことで絵や模様を描ける道具を使って、オリジナルアイテムをつくる方法を紹介しました。
子どもたちが楽しみながら、自然を身近に感じられることってどんなことだろうと考えながら、企画と制作をしています」
またmammothでは、毎年5月に「mammoth pow-wow music & camp festival(マンモス・パウワウ ミュージック&キャンプフェスティバル)」という子ども向けのフェスを開催しているのだそう。
今年のフェスにはnoyamaも参加して、こちらの記事で紹介したウッドバーニングペンを使うワークショップを開き、多くの子どもたちに楽しんでもらったようです。
↑マンモス・パウワウ ミュージック&キャンプフェスティバルでのワークショップの様子
↑アーバンリサーチアウトドアーズでのワークショップにて参加者が作った作品
こうした活動を通して、noyamaとして伝えたいことも、少しずつ変わってきていると言います。
しみずさん(木工アーティスト):
「もともとのユニットの始まりは『外ごはんを通じて、自然をもっと身近に感じてもらえたら』だったけど、今はもうすこし深く届けたいと思っています。
外ごはんをつくる楽しさは入り口で、そこで自然を感じたことで、その人の感覚や心をより豊かにしてもらえたら嬉しいです」
↑木工アーティスト・しみずまゆこさん
歳を重ねても、ずっとnoyamaを続けていきたい。
↑左:料理家・山戸ユカさん、右:編集者・高橋紡さん
noyamaは、今年で結成して6年目となります。
その間にしみずさん(木工アーティスト)が加わり、先ほどのワークショップなどユニットでの活動の幅も広がる一方で、4人のライフスタイルも少しずつ変化してきました。
たとえば、山戸さん(料理家)がご夫婦で八ヶ岳に移住してレストランを始めたり、野川さん(写真家)が出産して一児の母になったり。
ライフスタイルが変わるタイミングで、自分の働きかたや生き方を見直したくなることって、きっと誰にでもあるのではないかと思います。
noyamaの4人にも、ユニットの方向性で悩むことはあったのでしょうか。
高橋さん(編集者):
「ユニットをはじめた頃は30代半ばだったけど、いまは40代になって、ライフスタイルが変わったと実感することは、それぞれにありましたね。
すこし体力が落ちたなぁとか、育児を経験して暮らし方が変わったなぁとか。
でも50代や60代になっても、子どもがいてもいなくても、きっと私たちは自然の中にいると思うんです。キャンプをしたり、スキーや自転車やカヌーで遊んだり。絶対焚き火はずっとしているはず。
そういう楽しさを伝えていきたい、という思いは、変わらない部分なのかもしれません」
しみずさん(木工アーティスト):
「だから4人で続けていきたいね、という話はよくしています。
『noyamaとして表現したいこと』があるなら、それを表現するための方法や手段は、私たちの年齢や暮らし方にともなって変わってもいいかなと思います」
↑noyamaの著書の一部
ずっとnoyamaを続けていきたい。4人のお話を伺っていると、その強い思いが伝わってきます。
高橋さん(編集者):
「でもやっぱり続けるって簡単なことではないんですよね。それぞれが個人の仕事もしているし、4人のモチベーションや方向性を同じレベルでずーっと一定に保つのは、本当に難しいことだと思います」
山戸さん(料理家):
「本づくりもワークショップも、4人全員が納得できるものにするために、打ち合わせには特に時間をかけています。わたしが八ヶ岳に住んでいて離れていることもありますが、中途半端な気持ちでは活動を続けることってできないかもしれません」
↑写真家・野川かさねさん
3人の話を受けて、野川さんがぽつりと口にしました。
野川さん(写真家):
「それが、好きを仕事にするということなのかな、と思います。
好きなことだからこそ妥協はしたくないし、なにか困ったことがあってもチームでフォローして乗り越えたいと思えるんですよね、きっと」
その言葉に、ほかの3人も「そういうことなのかも」と深く頷きます。
4人にとって、noyamaはどんな存在ですか?
↑左から、しみずまゆこさん、高橋紡さん、野川かさねさん、山戸ユカさん。
フリーランスの仕事を持ち、それぞれに活躍しているnoyamaの4人。
住む地域が離れたり、個人の仕事が忙しくなったり、なかなか全員がそろう時間をつくることが難しいのも現状です。
それでも「ずっと続けていきたい」と思うのは、4人がそれぞれに「noyamaでしかできないこと」を見つけているからなのかもしれません。
インタビューの最後に、4人にとってnoyamaとはどんな存在ですか、と質問を投げかけてみました。
高橋さん(編集者):
「noyamaでは、それぞれの仕事の集大成のようなものを作っていきたいです。
私たちも40代にさしかかり、個人の仕事でのキャリアも長くなってきたので、『こんなものだろう』というものにはしたくないんです。
自分たちも周りも納得できるいい作品を真剣につくりたい、と思っています」
山戸さん(料理家):
「自分の好きな世界を好きなようにつくるのは、ひとりでもできることだけど、noyamaはそうではありません。
4人の個性を生かしたチームなので、そこに参加するためには、つねに自分自身を磨き続けなければ、と思わせてくれます」
しみずさん(木工アーティスト):
「みんなで自然のなかでわいわい遊ぶこともあれば、真剣に仕事もするし、悩んだときは相談したり助け合ったりもする。
noyamaってひとつの共同体のようなものでもあるのかなと思います」
野川さん(写真家):
「わたし個人では山の写真を撮って作品として発表していますが、やっぱり街にいる人にとって山は遠い存在かなと。
だからnoyamaが、山と街のあいだのような存在になればと思っています。
写真だと伝わりにくくても、noyamaというチームなら、木工や文章などいろいろな表現方法があるので、より多くの人に届けられるはず。そんな可能性が大いにあるユニットだと思っています」
好きを仕事にする、ということ。
↑noyamaの著書・共著の一部。
アウトドアユニットnoyamaのメンバー4人の働きかたについて、全3話でお届けしました。
お話を伺ったあと、自分自身のことをすこしだけ振り返ってみると、仕事と好きなことの関係について考えることになったのは、クラシコムへの転職がきっかけだったことを思い出しました。
食べることが大好きで料理やうつわも好きだったので、そこから「暮らし」にまつわる仕事がしたいと考えて転職したのですが、実際に働き始めると、自分に対して「あれ?」と思うことも多かったのです。
日頃のインプットの少なさや、自分のセンスのなさにがっかりしたり、自分が楽しいと思うことを仕事として成り立たたせる難しさを痛感したり…。
「好きなことを仕事にする」って、楽しいばかりではないのかもしれない。そんなことに気がつき始めました。
でも今回お話を伺ってみると、4人の共通の趣味だったアウトドアを仕事にするという覚悟のようなものを、メンバーのそれぞれに感じました。
「仕事にする」ということは、きっと自分のモノサシで楽しむだけでなく、ほかの誰かに小さくても影響を与えてお金をいただくということ。
そのためには、自分も周りも納得できる品質のものを企画・制作するだけでなく、より多くの人に届けていく必要があります。
言葉で書き表すとわずか数行ですが、これをずっと続けることは易しいことではないはずです。
だからこそ、noyamaはこの4人のチームなのかもしれません。
友達でも同僚でもない。「好きなことを仕事にした仲間」として。互いに尊重し、支え合い、ときに真剣に意見を交わす。
そんな姿を見ていたら、好きなことを仕事にできる「楽しさ」に感謝しながら、その道を歩むなかで出会う「難しさ」にも、ひとつずつ向き合っていこうと勇気が湧いてきました。
本特集を通して、働き方や生き方について、なにか小さなきっかけをお届けできていれば嬉しく思います。
(おわり)
▼noyamaさんの著書の一部はこちら。
つながる外ごはん (be peaceful books) noyama 小学館 2010-04-07 |
noyamaのおつまみいろは noyama 大泉書店 2013-04-02 |
外あそび&外ごはんをはじめよう noyama 文藝春秋 2014-04-15 |
(聞き手・文 スタッフ津田、写真 キッチンミノル)
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