【BRAND NOTE・群言堂編】第1話:「暮らしが豊かになるヒント」は島根県にありました。

島根県大田市大森町の世界遺産「石見銀山(いわみぎんざん)」の麓。この地に本社を構え、アパレルブランド「群言堂(ぐんげんどう)」などを展開する石見銀山生活文化研究所があります。創業者の松場大吉・松場登美さんらが築230年の古民家を再生した古民家宿「他郷阿部家」を運営しつつ、過疎地域で「根のある暮らし」を実践し働く姿は、テレビ東京『カンブリア宮殿』でも特集。第1話は群言堂での一日宿泊と職場取材の様子を振り返ります。

編集スタッフ 長谷川

写真 平本泰淳

 


ある本を「きっかけ」に出会った。
島根の山間で生まれたアパレルブランド


 

「北欧、暮らしの道具店」を開業して間もなかった頃、2冊の本に出会いました。

「これからやろうとしていることのヒントを、見つけられるかもしれない!」

私たちは夢中で読みました。

gungendo_160224_1(写真 クラシコム)

本の舞台になっているのは、島根県大田市大森町。世界遺産に登録された石見銀山(いわみぎんざん)のふもとにあり、人口は400人ほどの町。

この山間の町から、アパレルブランド「群言堂(ぐんげんどう)」などを全国へ展開する「石見銀山生活文化研究所」が誕生したというのです。

創業は1988年。雑貨店からスタートし、この町でものづくりを始めたのが、松場大吉さん・登美さんご夫妻です。

(松場大吉さんは石見銀山生活文化研究所の会長を、松場登美さんは所長を務める)

夫妻はやがて「未来に伝えたい美しい日本の暮らしを残したい」「先人が生きてきた過去から本質を理解し、未来からの視点で創造したい」という想いを胸に、日本の素材を生かしたアパレルブランド「群言堂」を立ち上げます。

ブランドを育てながら、夫妻は大森町でいくつもの古民家を買い求め、再生して暮らすようにもなりました。そのひとつは「他郷阿部家」と名づけられた宿になり、登美さんは洋服づくりをしながら宿泊施設の運営まで手がけています。

この土地に根を張って暮らしながら、洋服を作りつづける。大森町を訪れた人をあたたかく受け入れる場をつくる。

群言堂は全国にファンを増やしていき、今ではファッションブランドの「登美」「根々」「Gungendo Laboratory」、スキンケア用品や発酵食品を手掛ける「MeDu」、飲食店の「Re:gendo」「Ichigendo」、そして宿泊施設「他郷阿部家」と、衣食住のすべてを扱うライフスタイルブランドへと進化しています。

時はさかのぼり、2014年の夏。クラシコムの代表青木がプライベートで大森町を訪れ、この場所をコラムでご紹介したことがありました。

私たちは代表青木が仕事と暮らしに共感した話を聞き、松場登美さんが書いた本に触れ、群言堂の服を目にしてきました。その度に「いつか私たちも大森町へ行ってみたい」とずっと願っていました。

それを今回、ついに叶えることにしたんです!

(この記事は、クライアント企業さまのご依頼で製作する「BRAND NOTE」という記事広告コンテンツです)

 

「根のある暮らし」=今いる自分の「場」を楽しむ?

今回、BRAND NOTEでご一緒できる機会に、私たちは群言堂のポリシーである「根のある暮らし」を、実際に島根県の大森町を訪れて体験しようと決めました。

「田舎暮らしを根っこにものづくりをしたい」という思いが込められたこの言葉をわずかながらでも体感する。そして私たちなりに「根のある暮らし」とは何を意味し、群言堂をいかに形作っているのかを見つめてから、お客さまへご紹介しようと考えたんです。

私たちは大森町から帰ってきて、ひとつの仮説にたどり着きました。「根のある暮らし」とは、今いる自分の「場」を楽しむ、ということではないかと思います。

大森町「だから」できる暮らしではなく、私「だから」できる暮らし。その「根っこ」が日々しっかり張っていることが、自分らしく生きるための力強い芯になってくれるのです。

 

そう思えた理由を、今日から3話でお届けします。

東京・羽田空港を発って1時間20分。到着した出雲空港からバスや電車を乗り継いで、さらに約1時間30分。

2月初旬、この季節の山陰地方ではめったにないという冬晴れに恵まれながら、私たちクラシコムスタッフ4名(代表青木、店長佐藤、バイヤー松田、スタッフ長谷川)とカメラマンの平本さんは、島根県大田市大森町を訪れました。

まずは田んぼのあぜ道を抜けて、「ワークステーション」と呼ばれるオフィスに向かいます。出迎えてくれたのは石見銀山生活文化研究所のみなさん!

(ワークステーションのシンボルでもある、広島県から移築した茅葺屋根の古民家の前にて)

ワークステーション、群言堂石見銀山本店、他郷阿部家は、半径100mほどの円に収まってしまうほど近い距離にあります。大森町の町並みに溶けこむように、群言堂の「暮らしと仕事」は成り立っています。

第1話では、他郷阿部家での一泊や職場訪問をした24時間のことを振り返りながら、「暮らし」の根っこを見つけていきます。

 


「根のある暮らし」が詰まった場所。
古民家を改装した、他郷阿部家に宿泊。


 

今回宿泊したのは、先ほども名前にあがった「他郷阿部家」。他郷には「もうひとつの故郷、そして不思議の縁」という意味があるのだとか。

もともとは江戸時代に建てられた古民家ですが、30年ほど空き家になって傷んでいたそう。松場夫妻が買い求め、13年という長い年月をかけて少しずつ手を入れ、宿泊できるような家にまで育てていきました。

「根のある暮らし」を紐解きたいなら、まずはこの宿に泊まってみるのが近道。なぜなら、他郷阿部家は松場登美さんが実際に暮らしながら家を整え、作り上げていった空間だからです。ここには松場登美さんの「残していきたい暮らし」が詰まっています。

 

午後3時:他郷阿部家にチェックイン!

他郷阿部家の中心は台所。松場登美さんが「阿部家を手に入れた時から、おくどさん(かまど)のある台所に立つことは、私の念願でした」と言うように、大きなかまどが3つ据えられています。

人間古来の大切な要素ながら、今では遠ざけられつつある「火を囲む」暮らしを、他郷阿部家では大切にしたいという考えです。

私たちがチェックインしたときには、すでに夕飯の支度が始まっていました。台所には長年活躍してきた道具たちが、慈しまれながら、それでいて使いやすいように収納されています。

部屋は和室をはじめ、洋室もあります。

袖机の上にある銀の水差し、文机に置かれたペン立てや葉書たち、ゆるりとしたカーブを描く木のハンガー。古道具と新しいものがミックスされ、心地よい雰囲気を感じられます。

枕元には、群言堂オリジナルの二重ガーゼのパジャマと、天然豚毛の歯ブラシセットが風呂敷に包まれていました。気遣いはちいさなアメニティにも。

他郷阿部家のあちこちには、すぐ近くの里山で摘んできた花たちが、さりげなく活けられています。ここでは、花は買うものではなく、自然から四季を分け与えてもらうものなんですね。

 

午後4時:大森町をゆっくり散策してみる。

大森町の住人であり、広報課の三浦類さんが町を紹介してくれました。

三浦さんはふだんから大森町の自然や人々との関わり合いなどを広報誌『三浦編集長』にまとめているだけあり、案内はお手の物。歩いているのは、平屋造りの住居や商店が並ぶ、大森町のメインストリートです。

学校帰りの小学生たちが「こんにちは!」と元気に挨拶してくれました。小学校は全校生徒19人で「みんな知り合いみたいなもの」。石見銀山生活文化研究所の社員さんが先生として登場することもあるのだそう。

元々は酒造りの大番頭が暮らしていた古民家を改装した「群言堂 石見銀山本店」へ。セレクトされた暮らしの道具や洋服を手に取ってみると、自分の生活に取り入れる姿が浮かんでくるものがたくさんありました。

それもきっと選ばれる基準が「根のある暮らし」に基づくものだからでしょう。

 

午後6時:まるで実家のよう。阿部家の晩餐に参加してみる。

他郷阿部家の夕食は、松場登美さんたちと食卓を囲むのが定番です。この日は松場夫妻をはじめ、石見銀山生活文化研究所のスタッフさんともご一緒しました。

テーブルに並ぶのは、旬の野菜や、近隣の土地で採れたものばかり。里芋と鶏肉のチーズ焼き、米粉のピザ、ごま豆腐など、ジャンルもさまざまに美味しい家庭料理たち。まさに「自分たちが暮らす土地」を味わえるおもてなしでした。

そして、季節の味わいも料理の楽しみ。この時にも、ほろ苦さで春を感じる「ふきのとう」のコロッケが大好評。

台所で腕を揮う小野寺拓郎さんが、後でつくりかたを教えてくれました。家族みんなで味わえる一品です。レシピは石見銀山生活文化研究所のサイトで公開していますよ

食後にお風呂をいただいて、びっくり。室内の明かりは薪ストーブと和ろうそくが2本だけ。

ほのあかるい空間、薪が燃えるパチパチというかすかな音、ただよう木の香り……自分の五感がしずしずと整っていくような時間を過ごせました。廃材も薪として使うことで、余すところなく再生しています。

 

午後10時:満天の星空を見上げる。

寝る前、ふと外に出てみると、よく晴れた一日だったおかげでしょう、満天の冬の星空が待っていました。時間を忘れて眺めていたら、今日あった出来事までが整理されていきます。

 

翌朝8時:朝食を食べたら、お掃除を手伝ってみる。

季節の野菜やじゃがいもの冷製スープ、梅の花からとれた酵母を使った群言堂オリジナルのパンで朝ごはん。

いつも他郷阿部家で行っている朝のお掃除を手伝わせていただきました。掃除にも昔ながらの知恵が使われています。

廊下を担当したのは代表青木。窓や鴨居のほこりをハタキで落とし、箒でゴミを集めてから、雑巾がけします。こうすれば上から下まで一度ですっきり。ちなみに、汚れた面を変えながら進められるので、雑巾は「3つ折り」が都合良いそう。

代表青木も「掃除って、意外とちゃんと教わったことがないなぁ」と、ぽつり。

バイヤー松田とスタッフ長谷川はお風呂掃除。水をかけながら、すのこの裏や排水口をたわしで磨き上げていきます。「やっていると無心になれる。気持ちがすっきりしますね」とバイヤー松田。

手を動かすうちに体も温まり、心までしゃんとしていく。難しいことを考えずに、目の前の掃除に集中する。そんな一瞬を設けるのは、日常にも取り入れられる、小さなリフレッシュ方法なのかもしれません。

店長佐藤は玄関を。土埃が舞わないように、濡らした新聞紙をちぎってから撒き、箒で掃いて集めます。

他郷阿部家流のお掃除をスタッフの方に教えていただきながら体験してみると、きれいになって気分が良くなるだけでなく、手をかけたその場に愛着がわいてくるようでした。

今いる自分の「場」を慈しむことに、毎日の掃除がつながっていると実感します。

 

お昼の12時:塩むすびをつくって、考えました。

掃除が済んだら、お昼ごはんづくりのお手伝い。今日のメインは、他郷阿部家で一番のごちそうという「塩むすび」です。バイヤー松田も火吹き竹に挑戦!

かまどでのごはん炊きは、音や香りなどを頼りに、感覚で炊きあがりを判断しなくてはなりません。

女将見習いの大河内さんが「炊けましたよ!」とかまどの蓋を開けると、お米の甘くて安心する香りが台所いっぱいに広がりました。

他郷阿部家の塩むすびに欠かせないのは、「塩気が主張しすぎない」と愛用する島根県海士町のお塩。おむすびをひと口頬張ると、粒の立ったお米が口の中でゆるやかにほどけて、噛むたびに甘みと塩気が交じりあいます。

おむすびをうまくつくるワンポイントを教えてもらいました。まずはお茶碗に軽く半分くらいのご飯をよそって、お茶碗を左右に振って形をほんのり丸く整えるのです。ほどよく蒸気も取れて、にぎりやすくなりますよ。

「お米があればそれだけで、ごちそう」

その言葉にうなずきながら、つい、もうひとつ。塩むすびをいただきながら、他郷阿部家に根付いている「暮らし」のかたちに思いを馳せました。また泊まりにきて、もっとこの時間を過ごしてみたくなります。

 


 

他郷阿部家で過ごしていると、松場登美さんの著書の一節を思い出します。

 

今の時代は「寒い寒い」と家全体に暖房をしますが、そんな生活は足し算が過剰な気がします。阿部家では、ちょっと引き算をするくらいの気持ちでいたいのです。そのかわり、昔ながらの道具を使って暖かくなる工夫をします。

──松場登美『石見銀山・群言堂 他郷阿部家の暮らしとレシピ』(家の光協会、p,127)

 

たとえば、夜に布団へ入ったときのこと。ひやっとする感触を「仕方ない」と思いつつ足を進めると、ブリキの湯たんぽが。足裏から体が温まり、一晩中おだやかに眠れました。

他郷阿部家には、必要なものだけを、必要なだけ使う引き算の豊かさがある。

今いる自分の「場」に、知恵と感覚を自分なりにめぐらせて、できるかぎりで心地よくなるように手をかけてみる。それこそが私たちひとりずつの暮らしを前向きに、ちょうどよく形づくってくれるのでしょう。

そうして育む暮らしをベースに、群言堂のものづくりが行われている。あらためて群言堂の洋服たちを手に取って、その息遣いや心配りを感じてみたくなりました。

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連載第1話では、私たちが体験したひと時を振り返りました。明日公開の連載第2話では、他県から移り住み、大森町や近隣の町で暮らしながら働く、若い世代の女性社員たちにインタビュー。

彼女たちはなぜ群言堂へやってきたのでしょう。そして、この場所でどのような変化を感じ、何を見つけながら、ものづくりに携わっているのかを伺います。

 

まさに今が旬!「ふきのとう」を使った他郷阿部家のレシピ。

今回のBRAND NOTEでは、石見銀山生活文化研究所とコラボレーションした企画も併せてお届けします。

第1話のコラボ企画は、他郷阿部家の台所で腕を揮う小野寺拓郎さんのレシピ紹介です!春の訪れを家族みんなで楽しめる「ふきのとうの塩麹コロッケ」のレシピは、以下のバナーより石見銀山生活文化研究所のサイトにて、ぜひご覧ください。

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