【フィットする暮らし】第4話:毎日違う景色がみたいから、変化をおそれない。
編集スタッフ 田中
写真 鍵岡龍門
自分らしく心地いい暮らしをつくっておられる方を取材し、お客さまにお届けするシリーズ「フィットする暮らしのつくり方」。Vol.11は、菓子研究家・いがらしろみさん(以下、ろみさん)にお話を伺っています。
第4話は、ろみさんを象徴するような言葉「変化」にスポットをあてます。拠点が変わることが多い暮らしの中で、むしろその変化を求め、楽しむろみさんの姿が見えました。
第4話:毎日違う景色がみたいから、
変化をおそれない。
「おもしろければいいんじゃない」と、足を進めてしまう
第1話でも書きましたが、ろみさんは20代で一人暮らしを始めてから、1〜2年ごとに拠点が変わる生活。
昨年、ろみさんは鎌倉市内にあるジャムのお店を移転したとき、東京にあった事務所も自宅も鎌倉に移しました。バラバラだった拠点をひとつにまとめたのです。
それでも、東京・学芸大学にある焼き菓子のお店の二階にはお菓子教室用のキッチンがあったり、出張お菓子教室を開くこともあったりと、やっぱり行ったり来たりは変わらずだそう。
引っ越しや移動って割と荷が重いんじゃないかと思う私は、ろみさんに聞いてみました。「ご自身もご家族も大変ではありませんでしたか?」
いがらしろみさん:
「家か事務所か、毎年何かしらの移動があって、そりゃ疲れます(笑)。けど、主人も私も『おもしろければ、いいんじゃない』って考えなんですよ。
変化の先に、新しい分野の仕事が広がっているような景色がみえたなら、引っ越しも仕方がないか、となって。そういう性分なのかな」
「常に自分に向けて質問し、感じて、考える」ろみさん。その先に変化があるのは当然なのかも、ろみさんの暮らしにとって変化は身近なものなんじゃないかと、私は思えてきました。
▲お気に入りの食器棚はTRUCK。この食器棚も何軒かの家で使われてきたんですね。
新しい出会いは、ワクワクを連れてくる
変化することをおそれず、歩みを進めるろみさん。家族との外食にもそんな姿勢が表れています。
いがらしろみさん:
「鎌倉に戻って間もない頃、遊びに来た方の『おすすめのお店は?』に答えるために始めたお店探しだったんですが、週末に家族三人で出かけて、気ままにおいしいものを食べるのがリラックスにつながっていますね。
私も夫も食べることが好きだから、アンテナをはっているんです。
店主の方もだけれど、お店に来る方とも新しい出会いがあって、開拓するの楽しいですよ。逗子にあるお店では、”お魚コンシェルジュ”という職業の方と知り合いました」
その方はお店にお魚を卸していたそう。ろみさんご家族は、お店に訪れる他のお客様とも徐々に知り合いながら、おいしいお料理とお酒を堪能しているのだとか。
新しい出会いがあって、何かに気づき、心が高揚する。そして、その何かをどんどん掘り下げて、私がしたいことはどんなことなのかが、形になってくる。その途中には、”変化”がある。
きっと道中には失うものも得るものも、たくさんあったのかもしれない。けれど、自分の在り方や求めるものが変わっていくなら、変化をおそれない。
ろみさんの暮らしに、生き方に、少しだけ触れたような気がしました。
そして、私がろみさんの本をきっかけに好きなことがつながっていったあのとき、まさに”変化”が起きていて、それを受け入れて進めたのだと振り返ることができたんです。取材の帰り道の心が晴れやかだった理由は、小さな自信が芽生えていたからかもしれません。
今回の連載、最後はろみさんの言葉で締めくくりたいと思います。「ろみさんにとって、フィットする暮らしってどんなものですか?」
いがらしろみさんにとって「フィットする暮らし」とは?
小学生の頃からずっと一人暮らしにあこがれていました。お気に入りの家具と、お気に入りの食器を使って……そんな生活が早くしたいと背伸びをしていました。 学生生活が終わり、20歳でお菓子屋さんの社員寮に入ったり、留学したり、25歳になってようやく一人暮らししたものの、また留学したり。28歳で東京から鎌倉に引越してきて、ようやく落ち着くかと思ったら、毎年何かしらが起きて、鎌倉と東京の二拠点で生活したり、戻ったり。こんなふうに1〜2年ごとに引越しでライフスタイルが変わるという暮らしを、四十代を過ぎても送っています。
思い返せば社会人になってからずっとこんな生活をしているのですから、これが私のライフスタイルなのかも。きっと私の暮らしのスタイルは、こうした変化があることなんだと思います。
いろんな環境に引っ越しを繰り返すことで、私の好きなものの輪郭も少しずつ色濃くなってきて、20年程経って再び鎌倉に戻って居を構え、仕事をし、子育てをしています。あとは引っ越しの荷物を整理して……って半年前の引っ越し荷物がまだ全然片付いていないのもお恥ずかしい話ですが。
早く落ち着きたいなぁと思いながら何年もたっていますが、それでも日々、今日は「パリの朝食編」とか言いながら、おいしいバゲットを縦半分に切ったところにおいしい発酵バターとフランボワーズとキルシュのジャムと、バニラビーンズ入りのアプリコットジャムを塗ったり、「イギリス風」の日は薄くカリッと焼いたトーストに、マーマレードを塗ってベーコンエッグをのせたり。
野菜不足の朝は、豚汁と葉もののおひたしとごはんだったり、パリ・セヴェイユで買ったおいしいクイニャマン*をカフェオレと共に朝食にしたり、納豆ご飯とわかめのお味噌汁だったり……朝食だけでも全然決まりがなくて、毎日気分が違うことにワクワクします。
毎日の習慣も決まりもほとんどないのが、私の毎日の暮らしにフィットするみたいです。
高校生の頃、バス停まで毎日違うルートで向かう私に「どうしていつも同じ道を通らないの?」と母が尋ねたんです。「毎日違う景色を見られた方がいい」と答えた私に、母は「路美(ろみ)はそんな人生歩みそうだね。」と言ったことを思い出しました。
そういえば、この習慣はあまり変わらず、幼稚園に娘を送るルートも、いくつかあって、気分によって変えています。いつかは好きなものを少しだけで送る生活にも憧れたりもします。あ、それは今日だけの気分かな?
いがらし ろみ
(おわり)
*クイニャマン…日本ではクイニーアマンとも言う。バターと砂糖を折り込み、キャラメリゼした発酵菓子。
もくじ
いがらしろみ(菓子研究家)
小さな頃からお菓子づくりが好きで、短大卒業後、フランス菓子店製造部に就職。その後パリに留学。ル・コルドン・ブルーでフランス菓子を学ぶ。帰国後、ル・コルドン・ブルー東京校事務局に勤務。2002年より菓子研究家・romi-unieとして活動をスタート、2004年に鎌倉にジャムの専門店「Romi-Unie Confiture」を開店。2008年に学芸大学に焼き菓子とジャムの店「Maison romi-unie」を開店し、お菓子教室も開催。ほかに、カップケーキ専門店「Fairycake fair」のプロデュース、商品開発や、アドバイザーなども務める。新著「いがらしろみのレシピノート」(2016年4月20日 NHK出版)が発売予定。
▽いがらしろみさんの著書
romi-unie books第1弾のレシピブック。ビスケットをテーマに、バターガレットやレモンクッキー、ショートブレッドなど全44種類のレシピを収録。(自主制作のため販売はwebshopか一部取り扱い店のみ。HP:http://www.romi-unie.jp/)
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