【大人が知りたい脳科学】第1話:イライラしてしまうのは、どうして?

編集スタッフ 寿山

ひとりでイライラしたり、焦ったり、同じような失敗を繰り返したり。「いつになったら大人になれるんだろう?」と思う瞬間が、30代になってもなくなりません。

もちろん反省もすれば、後悔もするけれど、改善できていないのも事実。もしかしてもう無理なのかな?と、ふと不安になることがあります。

大人だから、スマートにうまく立ち回りたい。

そんな理想と現実のギャップを、脳科学の視点から紐とけたらと企画した今回の特集。

脳の成長や老化について研究している東京大学薬学部教授・池谷裕二(いけがや ゆうじ)さんにインタビューした内容を、全2話でお届けします。

 

誰だってイライラする!? 自分のキャパを把握できていますか?

皆さんは、どんなときにイライラしますか?

わたし寿山は時間がない状況で、やるべきことが終わらないかも!?っと焦ったときに、大人気なくイライラしてしまいます。そして冷静さにかけて失敗するという悪循環に陥ることも……

池谷さんにも同じ質問をしたら、わたしと同じように時間がないときや、期待通りにいかなかったときに、イライラすることがあるそう。

池谷さん:
「イライラを脳の仕組みと結びつけて考えるには、まず自分のキャパシティーをよく知ることが必要です。キャパを超えるという表現がありますが、それは脳のワーキングメモリという領域で、処理できる情報量がオーバーした状態なんです。

ワーキングメモリとはお皿のようなもので、のせられる情報の数が決まっています。だから多すぎる情報はお皿にのらなかったり、落っこちたりもする。

ふだんならお皿には、ある程度の余裕があります。たとえ情報が満載になったとしても、忙しいと感じるくらいで、イライラすることはありません。

ところが “時間がない” などの制約が加わると、いつもならお皿に5つのるところが、3つしかのらなくなる。つまりキャパが小さくなるんです。そんなせっぱ詰まった状態のところに、さらに仕事や情報が追加されたら、誰だってイライラするんです」

 

予測と回避で、脳はイライラを克服できる

わたしはイラついてしまったあと、誰に責められるわけでもないのに、なんともバツが悪いというか、自分が情けなくなることがあります。そんなとき、どうすればいいのでしょう?

池谷さん:
「たとえイライラしたとしても、あとあと冷静になって、そのときの状況を分析することが大切です。そのとき何をやっていて、そこにどんな負荷がかかって平常心を失ってしまったのか。

そうやって原因を把握すると、自分のキャパシティーを知ることができますから。これ以上はイライラすると、脳が予測できていれば、次また同じような状況になっても、自分を俯瞰できて冷静でいられます。

もし状況が許せばですが、私は朝の子どもの支度に手間どって時間に合わなそうなときは、『遅れても仕方ない』と思うようにしています。回避する手段があるとわかるだけでも、脳はイライラを克服できるんです」

 

相手に期待しすぎるのも、イライラの原因

さらに時間のしばり以外にも、相手に期待しすぎてしまったときもイライラすることはあると話す池谷さん。

池谷さん:
「たとえば子どもに対して、寝る前にハミガキをしたり、出かける前にトイレを済ませたり、大人と同じように振る舞うことを期待しすぎると、できなかったときにフラストレーションが溜まりますよね。

子どもにしろ大人にしろ、相手に過度に期待しすぎると、思い通りにいかなかったときにもどかしくなるんです。あまり期待せず『こんなものだ』と予想しておけば、そんなにイライラすることもありません」

一方で、期待が低すぎても人は成長しないもの。期待することが悪いわけでなく、多少の期待は必要。その結果イライラしたり、もどかしい思いをしたとしても、それは健全なことだともいいます。

 

やるべきことをルーティン化すれば、脳のキャパが増える!

お話の前半で、イライラとうまく付き合うには、キャパシティーを把握することが大切だと教わりました。

もちろん自分のキャパシティーの範疇で生活できれば心穏やかにいられるのかもしれませんが、人生そうもいかない状況だってあります。そんなときはどうしたらいいのでしょうか?

池谷さん:
「やるべきことを、なるべくルーティン化するといいですよ。ルーティン化した作業は、お皿の外側で行われるので、お皿に空きスペースができる。つまりキャパが増えるわけです。

たとえば料理の初心者が夕飯の支度をするのに、おかずを作りながら味噌汁も作って、お米も炊いてと、いろんなことを同時にこなすのはとても無理です。それこそ途中でキャパオーバーになって焦ったり、イライラしたりしますよね。

でも料理に慣れてきて、作業もルーティン化できたら、あまり頭を使わずに夕飯の支度を済ませることができるようになる。心に余裕も生まれ、会話をしたり、音楽を聴いたりしながら、料理できるようになるんです」

なるほど家事はルーティン化するのがいいと世間で言われているのには、そういう理由があったようです。

 

マンネリは、人が生きるためには不可欠?

池谷さん:
「そもそも脳は物事をルーティン化する仕組みになっているんです。平常心を保つために、あまり驚いたり、戸惑ったりあたふたしないように脳が作動しています。

たとえば水って、透明でサラサラですごく不思議な液体で、この世にあんなものは他に存在しない。でも毎朝水を飲むたびにそれに驚いていたら、疲れてしまいますよね。一度見たら『もう知ってる』と受け流すことは、脳にはすごく大切なことなんです。

だからマンネリは、生きていくうえで必要不可欠なもの。でも脳はマンネリしすぎると記憶力が低下したり、おいしい料理をおいしいと感じられなくなったりすることもわかっていて。

ときに熱中することも大切ですし、たんたんと作業することも必要で、両者のバランスが大切なんです」

 

とはいえ、予想外のトラブルも必要!?

マンネリが人生に欠かせないとはいえ、ずっと平坦な道ばかり歩んでいても、人は成長しないもの。予想外の出来事に直面して、さまざまな経験をすることも必要だといいます。

つづく第2話では、予想外のアクシデントが発生したときに、もし失敗したらどうすればいいのかを伺います。

(つづく)

【写真】鍵岡龍門


もくじ

 

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池谷裕二

研究者。薬学博士。東京大学・薬学部教授。専門は神経科学および薬理学で、脳の成長や老化について研究している。
▽著書はこちらから


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