【バイヤーのコラム】映画がきっかけで考えた、暮らしを楽しむということ。
編集スタッフ 松田
先日、『人生フルーツ』という映画を観ました。
雑木林に囲まれた一軒の平屋で暮らす、建築家の津端修一さん・英子さんご夫婦の暮らしを綴った、ドキュメンタリーです。
四季折々、キッチンガーデンを彩る70種の野菜と、50種の果実。ひとつひとつ、お手製の黄色くて微笑ましい可愛い名札をたてる修一さん。実った野菜や果実で、美味しいごちそうをつくる英子さん。
50年、コツコツゆっくりと時をためて積み上げてきた、おふたりの細やかな気遣いと工夫に満ちた暮らしは、まさにタイトル通り「フルーツ」のようにつやつやぷっくりと、豊かさそのもの。そして心から楽しんでいるようにみえました。
映画の最後には、どうしてか涙が止まらず、予期していなかった気持ちの反応にびっくりしました。
と同時に、「はて、私は今、ちゃんと暮らしを本当に意味で楽しめているだろうか、、」という思いが、ふつふつと沸いてきたのです。
▲おふたりを取材した書籍もいくつか出版されています。
津端さんご夫妻の暮らしをみて、自分自身は最近、暮らしを「楽しむ」ことや、「遊び」をみつけることが、すこし疎かになっていたかも…と感じました。
そういえば、以前は毎週のように楽しんでいたお菓子づくりも、長らくしていない。
お花もいつ最後に飾っただろうか。
ベランダの植物たちのお手入れもできていないなぁ……、と。
たとえ、なくても困らないけれど。
▲名前に惹かれて作ってみた「ノスタルジックプリン」。少し焼きすぎて、凸凹になってしまいました。
映画や本にも出てきたプリンがあまりにも美味しそうだったので、ホコリがかぶっていたお菓子づくりの道具を棚から引っ張りだし、英子さんのレシピを頼りに作ってみることにしました。
すると、この時間が思った以上に充実感があって、楽しかった。
写真を撮ってSNSへ載せたりできるような、お店のような綺麗な出来栄えからはほど遠いけれど、この凸凹でちょっと不細工なプリンがなんだか愛おしく見えて。口の中に広がる素朴でほろ苦い味が、いっときばかり幸せな気持ちにしてくれたのです。
この頃は、日々の忙しさにかまけてか、お菓子は買ったほうが結局早いし美味しいんだもの、とどこかで思っていた節がありました。
たしかにプロの味はなかなか真似できないしやっぱり美味しいけれど、自分で「作る・食べる・そして食べてもらう」、にはまた別の楽しさや喜びがあるのよ、とプリンを通して英子さんに再認識させてもらった気がしました。
なくても困らないけれど、あったらきっと楽しく温かい気持ちになれるモノやコト。
それはお菓子づくりに限らず、きっと日々の様々なことにも言えることなのかもしれません。
明日から4月。気持ち新たに、暮らしや日々の中に、自分なりの「遊び」や「楽しみ」をコツコツ見つけていけたらいいな、と思っています。
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