【スタッフコラム】クスッとする気持ち
編集スタッフ 寿山
1月もあっという間に終わりそうで、のんびり過ごしたお正月休みが懐かしく思い出されます。
パタパタとした毎日のなかで、ふっと張りつめた気持ちがゆるむ瞬間。それは、このオブジェと目があったとき。
愛嬌たっぷりに私を見つめてくるこちらの女性。お正月に、両親と旅した沖縄で購入したものです。
うちの父は昔から沖縄とそのまわりにある島々が大好きで、理由を見つけては旅に出てしまう人でした。子供たちが独立してからは、もう毎年のように年末年始は沖縄へと旅立ってしまいます。
いつも父がチケットを手配する前に「今年こそ家族一緒に家でお正月を過ごそうよ〜」と口説くのですが「ワシは寒いから沖縄に行く」と、振られてしまうのです。
何年経っても引き止められないので、とうとう父の沖縄旅行についていくことにしました。
沖縄といっても、リゾートホテルに泊まるわけでもなく、那覇市内にある大きな港のそばのホテルが父の定宿。観光らしいこともせず、ただ毎日「おはよう」と食堂に集合して朝食をすませ、散歩へ。お腹が空いたらお昼を食べて、昼寝して、夜は市場でお酒を飲む。地味ではあるけれど、心地よい時間を過ごしました。
▲ホテル近くの公園で、娘の指示のもとに4つ葉のクローバーを探すことに。なかなか見つかりません……
▲そうかと思えば「客船が港に来るから見に行こうと」と父。散歩はそう簡単に終わりません
そんな父のお決まりのコースに飽きた母が、ある日私をやちむんの窯元へと誘い出してくれたのです。
母は昔から器が好きで、沖縄に来たら見て回るという店や窯元を案内してくれました。とりとめもなくおしゃべりしながら器を見て回る時間は、私たちにとっては幸せなもの。お互い目的もなく、ずっと器を見ていても許される状況を楽しみます。
窯元が集まるエリアを歩いていたら、気になる古い路地を見つけて入って行くと、立派な古民家と登り窯を発見。その先にある店で、私たちはこのユニークな陶器のオブジェと出会ったのです。
興味津々といった様子の私たちに話しかけてくれた店のおじちゃんいわく、オブジェと思った陶器はお酒を入れる器なんだそう。その昔、沖縄の女性たちは重たいものを運ぶとき、こうして頭に載せて運んでいたのだとか。日常を器に描くやちむんの作り手にとっては、奇をてらったものでなく、親しみのあるモチーフだといいます。
▲沖縄の各所に、中国文化の影響を感じる場所がありました
▲私も娘も「海ぶどう」と「ジーマミー豆腐」の食感に夢中に
つい取材癖が出てあれこれ質問をしていたら、親切にいろいろと話を聞かせてくれて、この酒器は300年の歴史がある窯元で作り続けていたものだという話も。作り方やこだわり、先代に倣って試行錯誤したこと、変えたことなど、本や資料を出して熱心に語ってくれた後、ちょっと恥ずかしそうに「これは僕が作ったんです……」と、おじちゃん。
母も私も「あたなが作ったんですか?」と嬉しくなって、さらに話は盛り上がり、じつは奥さんの実家がその窯元で、後継者がいないからと50歳から陶芸をはじめたこと、15年修行して初めての個展で出した作品であることなどなど、思い入れのあるエピソードをたくさん話してくれました。
すっかり目の前のおじちゃんを応援したくなった私たちは、それぞれ一つずつ購入し、工場や登り窯を見学してホテルに戻ってきたのです。
応援したい気持ちはもちろん、はじめて見たときから妙に惹かれてしまったこの酒器。リビングの目に付くところに飾ってあり、ふと目が合うたびに口元がゆるむ、ふしぎな愛嬌を感じています。
▲見つめ合うとこんな感じ
▲後ろ姿もなんだか愛しい。背中に雲か唐草?をしょってらっしゃいます
見つめ合いながら、50歳から遮二無二がんばっているおじちゃんに「今日もがんばって〜」とエールを送ったり、今頃母も同じように見つめあってニンマリしているかもしれないと笑ってしまったり。ついニヤニヤしてしまいます。
せわしない日常で「クスッとする」気持ちを思い出させてくれるこの置き物に、ちょっとだけ助けられている毎日です。
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