【スタッフコラム】かつてと、これからの十年
編集スタッフ 寿山
四月四日、結婚してちょうど十年になります。
結婚式を挙げたとき、十年たったらまた式場のホテルに泊まりに来ようと決めていました。なんとなく、予測がつかない新しい生活に、わかりやすい目標が欲しかったんだと思います。
ようやく泊まれると予約サイトを開いたら、二年がかりの大規模な改装工事のまっ最中だということが判明。来年の新装オープンまで待つにしても、このまま何もしないのも寂しいし、宙に浮いた時間とお金を何に費やそうかとあれこれ考えました。
それで、十年前に買えなかったテレビを買うことにしたのです。
結婚式や転居でほぼ文無し状態だった新婚当初、私たちの新居は貰いもので成り立っていました。とくに家電にはこだわりがなく、父から譲り受けた小さなテレビを、気がつけば十年使っていたのです。
ホテルが改装中でなければ、きっとまだまだ活躍していたであろう古いテレビ。黒くて太いフレームがあまり好きではなかったので、華奢で白いフレームのものに買い替えました。
性能というより、見ため重視で選んだ二万円もしないテレビがわが家にやってきて、インテリアが少し明るくなった気がします。なんで「テレビなんて買えない!」と、ずっと思い込んでいたのか。いざ決意したら、あっけないくらい何てことなくて、他にも自分の思い込みに縛られていることってあるのかもなあと感じます。
それから、もう一つ買ったものがあります。これもなんとなくですが、十年後の私たち夫婦に必要なんじゃないかと思って、脚つきのお膳を。
もともと夫婦ともにお酒が好きなのですが、子育て中なので二人で晩酌する時間をとるのは難しい状況。ゆっくり会話する時間もあまりないので、どうしたって関係性は少しずつ歪んでいくだろうと予感はしています。
とはいえ、それを改善する気力も時間もなかなか捻出できないのが現状。
この先しばらくの間、子どもを優先する生活は続くし、それが夫婦の望みでもある。もちろん、その状況下でこそ生まれる幸せや、新たな絆だってある。そう頭ではわかっていても、かつての暮らしや絆が手からこぼれ落ちるような感覚も否めません。
変わっていく現実に気持ちは追いつかないけれど、せめて希望は捨てたくない。今どうにもならなくても、十年後くらいに二人でゆっくりお酒を楽しむ景色をイメージして、このお膳を買いました。
今の家にも生活にも合わないし、しばらく使う予定もないけれど。いつか、このお膳に見合う未来を手にできたならと、小さな望みが生まれました。
身の丈に合わない、テレビよりも高い雑貨をカードで買ってしまったけれど。一回払いでと勢いあまって言ってしまったけれど、後悔はしていません。
何があっても、この先十年あきらめない。そう気を引き締める、いいきっかけになったから。このお膳が似合う二十年目を迎えられるように、また、これからに向き合っていきたいと思います。
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