【スタッフコラム】誕生日にまつわる、ほろ苦い出来事。

編集スタッフ 松田

つい先日のことです。私は、母の誕生日を忘れてしまいました。

気づいたのは、翌日の夜。娘を寝かしつけたあと、何気なく見たスマホの画面の日付を疑いました。あれ、母の誕生日が過ぎている……

日付に印をつけなくても、リマインダーをかけなくても、今まで忘れたことがなかったから、自分の感覚を過信していたのです。

スマホの画面を見つめたまま頭が真っ白になりましたが、時すでに遅し、素直に謝るしかないと電話をかけました。

「おかあさん、ごめん……! 誕生日、忘れちゃってた」「やっと気づいた〜? 忙しいのわかってたし、昨日も電話くれたときに言おうかなとも思ったんだけどね。あえて言わずに楽しんじゃった〜」

冗談っぽく笑ってくれた母の気遣いに、申し訳ない気持ちでいっぱい。同時に、祖母と暮らしていた頃の出来事を思い出しました。

*******

もう20年近く前になりますが、祖母の誕生日を、家族みんなですっかり忘れてしまったことがありました。

毎年プレゼントやケーキを用意するのは、母と私の役目。ですが、2人とも当日の夜になっても気づけなかった。いつもと同じように夕飯を食べ終えた頃、祖母がポツリと一言。

「今日、私の誕生日じゃなかったっけね」

その一言にギョッと顔を見合わせた母と私。車に飛び乗り、冷や汗をかきながら閉店間際のデパートに駆け込み、祖母の好みと思われる洋服(Tシャツと柄スパッツ)と、カットケーキ(ホールケーキはもう完売)を買って帰ったのでした。

バラバラの種類のケーキをみんなでつつきながら、祖母は「まったくもう〜」と笑い、プレゼントしたTシャツと柄スパッツも「動きやすくていいじゃ〜」と、その後も繰り返し着てくれました。

それでも、やっぱりちょっと寂しかったはず。だって、いくつになっても、誕生日は誰かが覚えていてくれるのが嬉しいものだから。

「わたしの誕生日なんだけどな〜」と呟いた祖母。忙しいんだろうと察して何も言わなかった母。

それはどちらも優しさからだよなぁとぼんやり考えながら、一年に一度しかない特別な日に、気を遣わせてしまったと思うと改めて切なくなりました。

誕生日の挽回は来年までできないけれど、この連休は、母の大好きなチーズと美味しいサラミを買って帰省しよう。今年の母の日は、いつもよりちょっと特別なものを贈ろう。

そんな気合いと申し訳なさが入り交じる出来事でした。


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