【スタッフコラム】あたらしいサンダル
編集スタッフ 寿山
この春、娘が4歳になりました。体力もついてきたし、できることも少しずつ増えています。今年の夏は、去年よりいろんなことを楽しめたらと、早々に夏用のサンダルを新調しました。
去年までは汚れても水に濡れてもいいように、ビニール製のサンダルを買っていたけれど、おしゃれ心も芽生えてきたので、ちゃんとした革のサンダルを買うことに。お店で試着して吟味して、店員さんから汗をかいたら陰干しして、なるべく濡れないように気をつけるなどお手入れ方法も教わって、アフターサービスにも加入。
「なんか大人な買い物をしたねえ」「ママとお揃いだねぇ」と、紙袋を手に母娘でウキウキしながら家に帰りました。
休日の度に私と同じような革のサンダルを履いて、「ママといっしょ〜♪」と得意げにしている様子を目にすると、思い切った買い物も、たまにはいいのかもと。
ところがある日曜日、近所の友達とそのママと4人でお出かけしたときのこと。久しぶりの再会に大はしゃぎで遊びまわる娘たちを見守りながらおしゃべりしていると、「ママ来てぇ!」と娘。どうしたのだろうと近寄ると、「お池にサンダルが落ちちゃったの」と言うではありませんか。
まさかの池ぽちゃ……。あまりのショックに肩を落としていると、近くにいた方が
「あらら〜落ちちゃったか、残念だねぇ。でも、お日さまの下に置いておけば乾くよ。大丈夫」
と、声をかけてくれました。
その一言で、新しいサンダルの扱いに神経質になりすぎていた自分に気がつきました。確かに、長くきれいな状態を保つためには、水濡れなんてもってのほかなのでしょう。でも、夏を楽しむために買ったサンダルなのに、カリカリしすぎて休日を楽しめなかったら、元も子もないなあと。
その方が言うように「濡れたら乾かして、様子をみればいい」くらいに考えて、できれば夏を楽しみたい……!
この一連の出来事は、その日訪れた、小さな子どもでも自由に参加できる野外ライブの開演前に起こったこと。やさしく声をかけてくれた人はステージに上がり、ドラムセットの前に座りました。
ステージにはピアニストもいて、2人で目配せしながら即興で美しい音楽を演奏しています。曲の区切りはあるものの、終始フリースタイル。プレイヤーもお客さんも皆が楽しそうで、何より大人たちが生き生きとした表情に。子どもたちはというと、楽器を囲むように演者の2人を観察しています。
曲の合間に、あのドラムの方が、どの打楽器もぜんぶ廃材から作っていて、どういう風に作っているかを説明してくれました。楽器と言われなければどう使うのか想像もつかない、空き缶やバネ、木材にガラス板、音が鳴るオモチャなどなど、本来なら捨ててしまうようなものたちが並び、うっとりするほどきれいな音色を奏でているから不思議です。
「捨てられてしまうようなモノでも、鳴らしたらどんな音がするだろう?」と、好奇心から鳴らしてみるのだそう。さらに、楽器だからといって、ドレミファソラシドと音階をつくるわけではなく、自分が「気持ちいい」と感じる音だけを集めて、好きに並べているといいます。
音階をつくると「間違えたらどうしよう」とか「ちゃんと弾かなきゃ」とか、変なところに意識が働いて、演奏に集中できない。楽しむ気持ちを忘れたら、自分自身が楽しんでいなければ、聴きにきてくれた人を楽しませたり、気持ちよくさせたりできないと思うからと話していたのが印象的でした。
なるほど、好きな音を思いのままにならしているから、聞いている方もこんなに楽しい気持ちになるわけだと、なんだか妙に腑に落ちたのです。
心地いいものだけを選ぶって、勇気がいることだけど、考えようによっては私にだって、誰にだって出来ること。
物事の捉え方で、きっと人生は大きく変わるもの。どうせなら、より心地よい選択をできる大人でいたい。とはいえ、つい常識にとらわれ、真面目に考えてしまう癖は抜けないけれど、それでも楽しく、自由に、暮らすことはできるはず。そんなことを考えている、夏のはじまりです。
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