【スタッフコラム】路線バスと、くるりと、夏の気配と
編集スタッフ 津田
ようやく、ぼーっとできる……
先日、インテリアの取材に向かうため、普段は乗ることのない路線バスに乗った。
時刻表の時間を10分ほど過ぎ、遅れていたのか、はたまた次のが早めに着いたのか、はっきりしないバスに乗り込んだ。
席はぽつぽつ埋まっている。私は誰も座っていない一番後ろの席へ腰を下ろす。
駅から駅へ、地下を走る電車からでは決して見えない景色が、窓を流れていく。
いつも自転車で通っている道から、ぐんぐん遠くへ。家から15分ほど離れただけで、もうここは、知らない場所。
イヤホンからは、小さな音でくるりが流れていた。
いつもだったらスマホをいじりながら、仕事のメールを返したり、SNSをチェックしたり。
そういえば、シャンプー買わなくちゃ、スーパーに寄って牛乳も買っておかないと、とスマホにメモして。
きっと本当は忘れてしまったってどうにかなる。
けれど最近、忘れたらどうしようとか、時間が足りないとか、不安になって細かなことを気にしていた気がする。
あくせくするって言葉があるけれど、もしかして今の私みたいなことなんだろうか……。
久しぶりに窓の外を見て、ぼうっとしていたら、ようやく少しだけ冷静さを取り戻せた感じがあった。
そういえば、映画『となりのトトロ』でも、困ったときに助けてくれる乗り物は “ネコバス” だった、などと、とめどなく考えが流れていく。
バスにのんびり揺られるだけのような、何もしない時間でないと気づけない類(たぐい)のことって、あるのかもしれないなあ。
バスが大きな公園の脇を抜けていく。くるりのアルバムを半分ほど聞いたところで、目的地に着いた。
停留所で降りると、すでに高くなった太陽が眩しい。肌と地面をじりじり焼きつける。夏がすぐそこまで来ていた。
今夜はハイネケンを飲もう。額の汗を拭いながら、そう思った。
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