【スタッフコラム】ひとりでは踏み出せなくても
編集スタッフ 小林
私は自他共に認める、かなりのインドア派です。
これといった趣味も特になく、習い事もしていないので、休みの日にやることといったら、ゴロゴロしながら漫画や小説を読むことくらい。
そしてものすごく出不精なので、出歩くときもできるだけ乗り換えのない駅にしか行きたくない(むしろ家をでたくない)。結婚してからも夫の実家に帰省する以外に遠出をしたことはなく、旅行なんて最後に行ったのはいつだったか覚えていない(新婚旅行にも行っていない)。
周りの友人や家族がいろんなことに挑戦していても、私はもっぱら消極的で、でもそんなことは気にせず、影響を受けることもほぼありませんでした。そんなフットワークの重いぐうたら生活が、わたしの性格にはぴったりだと思っていたからです。
けれど最近、家での生活も、なんだか好きになれない自分がいました。
転職したばかりの夫は毎日仕事で帰宅が遅く、一緒にご飯を食べることもほとんどない。そうしたシーンと静まり返った家の中で、ひとりでずっとゴロゴロしているのが、だんだん辛くなってきたんです。
自分のやりたいことがわからない。どうしたら気持ちが晴れるのかわからない。
そんな行き場のない気持ちを持て余していたある夜、ついに夫に「もうなんかいろいろやだ!」と、半ば八つ当たりのように、大人気なく自分の気持ちをぶつけてしまいました。
すると夫は「うーん、ちょっとそこら辺走ってくれば?」とひとこと。
「えっ、運動なんてしたくない、というかランニングウェアとか持ってないし」と、ごにょごにょ私が言っていると、さっと自分のTシャツとランニングシューズを出してきて「ちょっと試しに着てごらん」と着替えさせられてしまいました。
「靴も脱げなさそうだし、イヤホンも貸してあげる。家の横の川沿いを走って、隣の駅まで行って戻っておいでよ」
そうして私はぽいっと、家から出されてしまったのです。
ランニングなんていつぶりだろう、大丈夫かな、と心細い気持ちで、私はひとり渋々走り始めました。途中バテるのが怖いので、ゆっくりゆっくり。少しでも気分をあげるために、お気に入りの曲を流して。
最初は「うまく走れているだろうか?」と気恥ずかしい気持ちでいっぱいで、はやく帰りたいと思っていたけれど、だんだんとそんなことを考える余裕は無くなり、気づけば一歩一歩踏み出す足の感覚と、変わっていく景色に、自然と集中している自分がいました。
正味15分くらいだったでしょうか。
ぜいぜいと息が上がって、「もう無理!」と思いながらもなんとか家にたどり着き、慣れない運動に足がぶるぶるしているのを感じながら、玄関で靴を脱ぎ、部屋に入って倒れこみました。
「おかえり〜、どうだった? すごい汗かけたね〜」と夫。
「つかれた……」と私。
けれどその言葉とは裏腹に、私の心のモヤモヤはすっかり晴れていて、久しぶりに満ちたりた気持ちになっていました。あれだけ嫌だった運動ができた、私でも走れるんだ、なんか頭がすっきりした、15分だけでこんなに気分は変わるものか、と。
今まではモヤモヤしたとき、自分が今まで生きてきた中で得た、「自分に合う」と思う対処法だけで、やりくりしてきました。
自分がいいと思うものをやるのが、自分に合っていると思ったから。無理はしたくないと思っていたから。「わたし」は「わたし」という気持ちが強かったから。
けれどそうやって自分の世界はだんだんと閉じていき、心地よさを得る代わりに、新しい何かに挑戦することや、好奇心を持つことが、昔に比べて減っていたような気がします。
やっぱり私はぐうたらで、その生活が好きだから、きっとそれはこれからも変わらないと思います。
でもたまにはこうして、誰かに引っ張られるようにして、流されるようにしてみてもいいのかも。「自分」はこんな人間だから、と決めつけずに、勢いに任せて試してみてもいいのかも。
きっとひとりでは踏み出せなかった、一歩が踏み出せるのだから。
ゆっくりとお風呂に浸かりながら、そんなことをぼーっと考えたのでした。
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