【スタッフコラム】人見知りが花火大会に行くと。
商品プランナー 斉木
夏のはじめ、視界に収まりきらないくらいの光と音を浴びながら、わたしは頭の中でひたすら「やばい」と「どうしよう」を繰り返していました。
場所は、日本三大花火大会で有名な新潟県・長岡市。
夫の友人が長岡に住んでおり、席が取れたからおいでよと誘ってくれたので、彼の友人たちと連れ立って足を運んだのです。
▲花火が始まる前の河川敷は、ガヤガヤしてるのに、どこか緊張感がありました
「あの長岡花火が見られるなんて!」と浮き足立ってすっかり忘れていたけれど、もともとわたしは大勢で集まるのが苦手な人見知り。
『青葉家のテーブル』第1話で、リクがダンスの授業を思い出して「みんなと一緒に踊れない、僕だけ」というセリフがありますが、団体行動をしているといつもあの言葉を思い出します。
みんな同じリズムに乗って楽しく踊っているように見えるのに、自分だけそのリズムに乗れない。乗り方がわからない。焦ってそれっぽく手足を動かすけど、そんな自分が滑稽なんじゃないかとだんだん不安になってくる……。
そうやってちょっとずつ積み重なった違和感が、よりによって花火の終盤で溢れ出してしまったようで。音と光、熱気、寝不足が引き金となって偏頭痛が起こり始めたのです。
とてもじゃないけどこの状況で体調が悪いなんて言えない。音と光が頭に響くので、花火が上がるたびに目をぎゅっとつむり、耐え忍ぶという時間が5分ほど続きました。
揃って着た浴衣や、乾杯したビール、おかわりした枝豆、楽しかった瞬間を数え上げればキリがないのに、自意識が邪魔をしてそこに集中し切れない。そんな自分の情けなさに押しつぶされ、長岡から帰ってからは完全に自信を喪失していました。
そんなわたしに、リベンジマッチともいえるイベントがやってきました。
8月の終わり、夫が地元の友達を何人か誘ってバーベキューをするから、一緒に行こうと誘ってくれたのです(彼は人づきあいが大好きなタイプ)。
即座に長岡でのていたらくを思い出し、「NO」という答えが頭をよぎりました。でも、ここで断ったら次も、そのまた次も行けなくなってしまうかもしれない。怖さが体に染みついてしまう前に行ってみよう、と思ったのです。
無防備に当日を迎えたら、前回の二の舞になる。何か心の支えになるものを持っていたいと考え、思い出したのは前職を始めた頃のことでした。
前職では、フリーランスでファッション誌の編集やディレクションをする方のアシスタントをしていました。ファッション誌では、撮影ごとにカメラマン、スタイリスト、ヘアメイク、モデル、社員さん、それぞれのアシスタント……と15名ほどのひとが集いますが、その顔ぶれはほぼ毎回違います。
未経験で、現場での立ち居振舞いがわからず毎回凹んでいたわたしは、最低限これだけはというルールを自分に課していました。
(1)上手な人をよく観察して、真似する
私が就いていた方は仕事を手取り足取り教えるというよりは、背中で語るタイプ。初めは彼の仕事も、そのために自分がすべきこともさっぱりわからなかったので、撮影で出会うアシスタントたちを参考にすることにしました。師匠の動きをさりげなく追って適切なタイミングで補助をしたり、時には緊張しているモデルの話し相手になったり。その現場で見た誰かの動きを、その次の現場で見様見真似でやってみることから始めたのです。
(2)何はなくとも名前だけは覚える。挨拶は元気な声で
一期一会の多い撮影現場では、よく「アシスタントちゃん」と呼ばれていました。逆にちゃんと名前を呼んでもらえると、それだけでとても嬉しくて。それからは撮影前に自分から挨拶し、相手の名前を聞く(そしてこっそりノートにメモする)ようになりました。
(3)理想を高くしすぎない
ともすると、今まで自分が関わった全員の良いところ(気配りができる、センスがある、意見をはっきり言える、以下無限)をコラージュした「完璧な人」を理想像としてしまうクセがあります。自分にないものを持っているひとにはいつだって憧れてしまうけれど、それを自己嫌悪の材料にするのはやめようと、自分自身に何度も言い聞かせていました。
わざわざ文字にするまでもないくらい、本当にささやかなことばかりです。でも、当時できないことしかなかった私は、できない悔しさをバネにする方法すらわからなくなっていて。だから、どんなに小さくても「これだけはできてる」と思えることを増やそうとしたのだと思います。
そんなことを思い出し、臨んだバーベキュー当日。
行きの電車では「大丈夫?」と夫に聞かれても返事ができないくらい緊張していたし、たいした働きは正直できませんでした。それでも、木陰に吹き抜ける風を浴びながら、みんなでワイワイ食べたご飯はとびきり美味しくて。まぁ今回はこれで及第点かなと、開き直ることはできた。それだけでも進歩ということにしようと思ったのです。
ひとっ飛びに社交的にはなれないし、いつだって自意識は頭をもたげ、空気を読もうとしすぎて度々フリーズしてしまう。それでも、ハードルを低く低く設定しては、えっちらおっちら飛び越える、そんなトライ&エラーはこれからも続けて行きたいと思った夏の終わりでした。
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