【スタッフコラム】元気のないときに、試してみたこと
編集スタッフ 田中
ここ最近読んだ本をテーブルにざざっと出してみたら、なんだか気恥ずかしくなりました。
まるで、鍵のついた自分の心の奥をのぞかれているようだったもので。
ときどき、「いま目の前にある選択、ちょっと迷うな」「これから先、どんな将来が待ってるのかな」なんて、ちょっぴり哲学的になってしまうときってありませんか。
私の場合、それが長引いて「私って本当はどう思ってるんだろうな〜」と本音が見えず、元気がなくなることも。周囲の助言もありがたい、けれど何だかいまいち納得できずで動けない……。そんなときに助けてくれたのが今回は本でした。
キャラからわかる、自分の好きな「在り方」
時代小説が大好きです。近頃手に取っていたのは、古代中国の戦国時代を描いた『項羽と劉邦』(新潮文庫)司馬遼太郎著。
本のなかで、この人が出てくるとちょっとだけテンションがあがるキャラクターが2人いました。
それは蕭何(しょうか)と張良(ちょうりょう)。
蕭何は、漢を建国した劉邦(りゅうほう)の配下で、田舎から出てきたときからの糟糠の仲間。戦場では華々しい活躍はないけれど、後方部隊にいて劉邦が皇帝になれるよう支えました。
張良は、他国から加わったメンバーですが、軍師として大活躍します。
漢の前にあった国・秦を滅ぼした時のふたりの行動がなんとも言えず、いいなあと感じました。宮廷でみんなが財宝に目が眩むなか、蕭何は書庫にいって、秦の国の情報を一手に集めます。自分の興味もあるし、さらに漢の国が建ったときに役立つだろうと思ったのでしょうか。彼にとっては財宝だったわけです。
一方、張良は劉邦はじめ財宝を略奪する人々を制します。
ーこんな宮殿にいれば士卒の略奪が激しくなってわが軍は関中で信をうしない、このために沛公*は滅びるぞ。(文庫 中巻 p.94)
劉邦のサクセスストーリーではあるけれど、周りのメンバーの存在も事細かに綴る司馬さんの本に引き込まれました。
蕭何の黒子っぷりや張良の在り方は、かっこいいなあ。たとえ目立つ行為ではなくても、自分の得意なことで昔からの友人を支えられるなんて……。と、私は一人唸っていました(笑)。
*沛公…漢の皇帝、劉邦のこと。
同世代のひとから学ぶ、ものごとを見る姿勢
同世代の人から勇気をもらった本もありました。『イスラエルに揺れる』(リトルモア)東野すいれん著。以前からモデルや写真のお仕事は知っていましたが、初めて東野さんの本を読んだのです。
彼女の家族は、日本人のお父さんとイスラエル人のお母さんと妹さん。複雑な背景はあれど、彼女が綴るのは私が想像するよりはるかに穏やかな日常でした。
幼い頃に一緒に過ごしたおばあちゃんとのエピソード。いかにも美味しそうなフムス(中東のごはん)や、いとこと共に夢中になった遊び、お母さんが妹とお揃いで買ってくれたネックレス……。
自分の目からみえることは、そのまま大事にとっておいていいんだよ。どれが正しい、間違っている、ではない。その感覚は自分だけのものだよ。
私は、こんなメッセージを受け取りました。決断に自信がないときなんて、何年生きててもわんさか出てくる。その上、周囲の声があちこち違う方向へむいていると、「私、間違ってたかな?」とモヤモヤが生じる。そんなときに、東野さんが素直に見たままを描いた本に感動したのだと思います。
彼女がこれを書いたのは、28〜29歳くらいのときでしょう。その頃自分は何をしていたかな?と思い出しながらの読書は、いつもとはちょっと違う感覚でした。
ファンタジーと現実を行き来して、気づくこと
最後は『さよなら、ムッシュ』(小学館)片岡翔著。設定はちょっとファンタジー。主人公が幼い頃から大事にしているぬいぐるみは、なんと喋ることや動くことができるんです。
読み始めは、ファンタジー色が強いかもと感じたのですが、3時間くらいで読了。ラストで大泣きする始末でした。
少しあらすじを紹介すると、冒頭で主人公・星太朗は余命わずかの病気と宣告されます。その後、コアラのぬいぐるみ・ムッシュと共にやっておきたいこととして幾つかの目標を立てました。
そのうちの一つがこれです。
⑥ハワイの星空を見る
『世界で一番きれいな星空、見たくない?』(p.54)
けれど、どんどん病状が進む中、満点の星を見にハワイに行く目標は断念せざるを得なくなりました。
翌日、退院して帰宅すると、ムッシュは赤マジックと修正ペンを手に取った。
(中略)
『⑥ハワイの星空を見る』を『⑥団地の星空をたくさん見る』に書き直した。(p.100)
ハワイではないけれど、雨の日も曇りの日も、雲のむこうにある星を想って、団地から空を眺める2人。
掲げていた目標がおじゃんになったとき、誰だってすごく落ち込みます。だけど、今できることをしている星太朗とムッシュの姿に、コアラのぬいぐるみが喋る(?)とか、そういう野暮な疑問は頭から吹っ飛び、涙が止まらなくなったのでした。
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「私って本当はどう思ってるんだろう?」と渦中にいるとき、自分のことなのに何だかモヤモヤとしんどい。
けれど、どんなところに感動したかをこうして書きだしてみたら、そこに自分が大事にしていることや、在りたい姿があって、軸が戻ってきたような気がします。
元気がない時の対処法って、いくつかあると思いますが、今回は大好きなドーナツも、登山も、あれもこれも効果がなかった。きっとリフレッシュじゃなくて、もう一度気づくことが必要だったんだなあ……なんて、また哲学的な思考のなかに浮かんでいます。
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