【スタッフコラム】ある人の手帳を開いて。

編集スタッフ 岡本

会ったことはないけれど

二世帯住宅に住むようになり、早いもので2年が過ぎようとしています。

お義母さんとのコミュニケーションの取り方に迷っていた時期はいつのことか、今ではご飯を一緒に食べ、今日会った色々を欠かさず話す毎日です。

仕事で帰りが遅い夫に代わって、私や息子の相手をしてくれるお義母さん。ある日、「部屋の片付けをしていたらこんなものが出てきたの」と、手帳を見せてくれました。

どうしたんですか、これ。と聞くと、「パパのよ。いっぱい書いてあるけど字が小さくて読めないよね~。よくとってあったわ」と話します。

「パパ」と呼ぶのは、お義母さんの夫のこと。今から十年以上前に亡くなっており、私は会ったことがありません。でも、嫁いでからというもの、親戚や長い付き合いの友人と会うたびに「パパ」についての話をたくさん聞いてきました。

パパは、
とてもかっこよかったこと。
誰にでも優しく、スマートな人だったこと。
センスが良く、洋服や持ち物にこだわりがあったこと。
仕事ができ、人望が厚かったこと。
お酒とタバコと、美味しいものが好きだったこと。
そして、家族をとても愛し、大切にしていたこと。

あまりにもたくさんの人がパパについて話すので、今では私も会ったことがあるような気でいます。

誰かにパパってどんな人?と聞かれても、
「あぁ、パパはね。仕事が忙しくても、子どものお風呂の時間には帰って一緒に入れてくれたり、休みの日に家で作るハンバーガーが好きだったり、とても面白い人だよ」と答えられるくらい。

今、お義母さんと私たち家族の4人(あと、犬のリトル)で暮らす家には、しっかりと「パパ」の面影を感じるのです。

 

時を経て届いた、言葉たち

そんなパパの手帳。さぞ大事にしてきただろうと思いきや、これまで中身をきちんと見たことがないのだそう。

人の手帳をのぞくのはなんだか気が引けたけれど、人望が厚く仕事ができ家族思いのパパのもの。どんな暮らしを送っていたか気になり、中を見てもいいかと聞くと、二つ返事で「いいよ」と言ってくれました。

「拝見させていただきます」と手を合わせてから、中を開くとぎっしりと小さな字で全てのページが埋め尽くされています。最後の1ページの端の端まで書かれた手帳を見て、その几帳面さに笑みがこぼれるほどです。

全国の営業計画といった仕事の予定や、忙しい合間をぬって学校の行事に参加した日といった家族との予定が細かく記録されていて、そこには紛れもなくパパが過ごした日々がありました。

大切な会議のスピーチと思われる出だしが書かれているのを見ては、話し上手と聞いているけれど、人前では緊張する方だったのかな?とか、きっちりと記録された趣味のゴルフのスコアを見ては、練習もこんなふうに真面目に取り組んでいたのかな?とか、思いを馳せてはお義母さんに当時の話を聞き、また手帳に戻るということをしばらく繰り返しました。

思いつくままにメモされたページをめくるなかで、ふと手が止まる言葉が。お義母さんの許可を得て、ここに転載します。

1,チームを信頼しているか
2,ビジョンを持っているか
3,常にクールか
4,チャレンジしているか
5,プロになろうと努力しているか
6,異論を奨励しているか
7,簡素化しているか

仕事をする上での心得として、この7か条を胸に刻んでいたのでしょうか。他には、こんな言葉も。

矛盾を抱える
矛盾と闘う
矛盾を超える

広い世界を狭く生きるな!

こういった人生の指針となるような言葉に加えて、「ビルを綺麗に保つ方法」といったことまでも。重要なプロジェクトに加えて、こういう基本的な事柄にも心を尽くしていた姿に、人が集まる所以があったのだろうかと、また思いを馳せてしまいます。

長年、幅広い事業に携わり、大きなチームを動かしていたパパにとって、家族と同じくらい仕事は生きがいだったそうです。

ずっとずっと続いていくと思うような毎日に、しっかりとアンテナを張って生き抜いたパパ。彼が感じ取った色々を吸収して、私の心に一本の強い芯のようなものができた、そんな感覚がありました。

今では、この手帳の存在を私より後に知ることになった夫の宝物として、大切に保管しています。

 

一緒に歩んで、一緒に暮らす

少し前までの私にとって、家族とは、いつ何時も変わらず揺るがないものというイメージがありました。

でもここ最近、家族の形は変わっていくものだと思う瞬間が増えたような気がします。

だって、両親(と犬3匹)だけが家族だった数年前と違って、今一緒に暮らしているお義母さんは、紛れもなく家族だし、会ったことのないパパの残した言葉は、私のこれからの人生になくてはならないものになったから。

変わって、つよくなる。家族ってそういうものなのかなぁ。

息子と一緒に食卓に座り、料理上手なお義母さんが作った夕飯をお腹いっぱい食べながら、心まで満たされていくのを感じました。

▲この秋、私の両親を含め、初めて三世代で旅行に行きました。その場所は、お義母さんとパパとの思い出の場所。家族みんなでたくさんの思い出ができました。


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