【スタッフコラム】好きにならざるを得ないひと。
編集スタッフ 二本柳
秋晴れのポカポカ陽気に、ひとり晴れやかな気分に浸っていました。
というのも、その日の朝、かっこよく歳を重ねたカトリーヌ・ドヌーヴを観たから。正しくは、是枝監督の『真実』を観てきたからです。
舞台は秋のパリ。ジュリエット・ビノシュやイーサン・ホークなど豪華俳優陣を、日本の映画監督が撮ったのかぁ……と、それだけで興味津々でした。
是枝さんの作品は料理も印象的ですが、今回も飯島奈美さんが監修しているとか。
読後感はとても軽やかで、映画館を出たあとの渋谷の喧騒が、この日ばかりは平和に幸福な街として目に映りました。
▲パンフレットには是枝さんのおすすめパリスポットや飯島さんのレシピも
パリの紅葉、やわらかな光の家、おいしそうな料理、家族の会話……あらゆるディテールが心に残りましたが、やっぱり強烈だったのは、ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)の存在感。
最初こそ「なんてワガママなんだ」「これが母親だったらきついな」なんて呆れてたのに、映画が終わったころには、なぜだかものすごく好きになってしまう。
ひとつひとつの所作や表情、言葉のチョイス、すべてが “チャーミングさ” を作ってるような、そんな魅力にあふれていました。
かっこいい女性の共通点は?
▲映画の帰りに、久しぶりに百合の花を買いました。なんとなくカトリーヌ・ドヌーヴのイメージ
それで思い出していたのですが、最近、カトリーヌ・ドヌーヴに負けないくらいチャーミングな女性に東京で出会ったんです。
それは、とあるセレクトショップのオーナーさん。
オーナーが「これぞ」と思う国内外の洋服を取り扱うお店で、正直ちょっと高いものも多いので、私は「見るだけ」で終わることが多いのですが……。
白髪のベリーショートが似合うその人は、たとえばこんなふうなのです。
その日、私は給料日後だったこともあり、勇気を出して何枚かスカートを試着させてもらうことにしました。
どうやらその人は、せっかちな性格のよう。私が試着室に入ると、すぐに声がかかります。
「どうですか〜?」
「あ、いま着てるところですぅ〜(焦)」
“ふつう” ならここで「失礼しました。ごゆっくりどうぞ」なんて言われるものですが、なんと彼女は突然カーテンを開けてきたのです。「ちょっと見せてね〜」と半ば強引に、着替えを手伝いはじめました。
これって接客としてアリなのか?と疑うほどの図々しさ……戸惑いながらも、その勢いに圧倒されます。
「ほら、こっち来て見せてみて!」
「は、はい〜(汗)」
正直はじめはペースにのみこまれまいと、身構えました。でも、その人が無邪気に服の魅力を語る姿はとてもかわいらしく、素材のこと、デザインのこと、デザイナーさんの人柄……おしゃれに疎い私でも聞き入ってしまうストーリーが、スカート1枚に込められていることに胸が踊ります。
このスカートを、今日の思い出とともに、大事に着続けたいと思いました。
「これ、お願いします」
決断して手渡した私に、にっこり笑顔のオーナーが返した言葉は
「よかったわね」の一言。
あ、そこは「ありがとうございます」とかじゃないんだ(笑)そんな違和感も、このときにはすっかり彼女の魅力になっていて、私はこの人のファンになりました。
上手に生きられない
人が人を好きになる瞬間って、なんだか不思議なものです。
でもこれだけは分かるのは、やっぱり人間くささというか癖というか、そういう「ざらつき」みたいなものは、排除されちゃダメだなということ。
それを「個性」とか言うと途端に難しくなるけれど、要は「上手に生きよう」としないってことなのかな……と。
あのオーナーさんは、きっと上手には生きられない。そもそも、上手に生きようなんて端から思ってないかもしれないけれど。
『真実』のファビエンヌも、「上手に」というテーマには、きっと興味がないんじゃないかな。
それに引き換え、私は何に落ち込むかって、自分の点数が低く感じられたとき。どう振る舞うか、何を語るか……もっと上手にできたら良かったのに!って後悔したくないから、おのずと無難になってしまう。
この無難を積み重ねた未来に、これまで出会ってきたような、かっこいい女性の姿はあるのだろうか……。
今すぐマインドチェンジできるわけじゃないけれど、ひとつタガを外してもらったような、不思議と希望がわいてきた秋晴れの日なのでした。
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