【バイヤーのコラム】切なさから築く、愛おしい日常
バイヤー 森下
毎日配信される当店の読みもの。
わたしはクラシコムに入社する前からそれを読むのが毎日の楽しみなのだが、内容によってはその日に読まず、あたためておくものがある。
時間が経って気が向いた時に遡って読むと、「まさに今その言葉がほしかった!」と思うことがあるのだ。
今日は、ここ最近自分にとってドンピシャに響いたことについて綴りたい。
* * * * *
私は学生のころからダンスをやっていて、少しブランクはあったものの社会人になった今でも続けている。
昔から向上することに楽しみを感じる性分なため、自分よりはるかに上手な人たちがいる環境でレッスンを受けている。
小さい頃からダンスを習い続けている高校生たち。スキルアップのために来ている大学生たち。ダンスで生きていくと覚悟を決めて必死に自分自身と戦っている子、などなど。
誰よりも年上の私からしたら、どの子もキラキラして見える。
レッスンとは別に公演があると、そこで集まったみんなと一つの作品を作り上げる。当然練習回数は増え、一緒に過ごす時間も多くなるため年齢関係なく仲良くなっていく。
その時間が今の私にとってはたまらなく楽しくて、そのために仕事や家事を頑張っているといっても過言ではない。
しかしあまりにもその非日常が充実しているからか、ここ最近「楽しい」という感情を超えて「貴重さ」を感じるようになっていた。
いつかは終わってしまうこの時間。
いずれこの子達とは疎遠になってしまうのかも。
あと5歳若ければ、もっとみんなと一緒に踊れていたのかもしれない。
楽しい!と強く思うたびに、その倍の「せつなさ」がくっついてくるのだ。
だからといってフラットな目線で練習にのぞむと、純粋にその時間を楽しめなくなっている気もしていた。
この楽しい時間がずっと続けばいいのに、そんなことを思う29歳で大丈夫なのだろうか。周りが年下なだけにどこか自分自身に引いてしまっているところがあった。
そんなモヤモヤを感じているときに、ふと読んだのが文筆家・大平さんと劇作家・三浦さんとの対談記事だった。
「せつなさを考える」というタイトルの対談なのだが、そこに書いてあった言葉がズドーンと心に入ってきた。
「演劇って、集まることと離れることを繰り返す芸術だと思うんです。そういう意味では、演劇をやること自体が“寂しい”を考える事かもしれません。」
「家族も、同じ志を持った仲間も、永遠に一緒ではない。どんな付き合いにも別れがある。私達は別れが用意された中で、生きている。それがいつかわからないだけだ。だから、切なくて寂しいし、いまが輝いていて愛おしい。」
「ずっと仲間がいてくれるとは想像できないんです。いつか別れるだろうな、と思いながら、その別れに向かって創っているというのがすごいことだなと思うのです」
この「別れに向かって作り、別れに向かって生きている」という見出し内の文章を読んだときに、本当に心の底から腑に落ちた。
あ、せつなくていいんだ。これは豊かな寂しさなんだ。せつないと思う中でやってきたことはすごいことだったんだ。
自分やまわりの状況が時間によって変わるのは当たり前で、それを止めることができない現実に向き合うために、今過ごしている時間を必要以上に「特別で貴重なもの」と思い込んでいたのかもしれない。
でもその時間というのは普段過ごしている日常の一部。どんなことにも終わりがあるから楽しい・愛おしいと感じられる。そこで感じるせつなさや寂しさは日々の生活の豊かにしているものなのかも。
そう素直に受け入れることができたとき、心がじわーっと温かくなる感覚があった。
気づいたらオフィスのデスクでウルっと涙がこみあげてきて、思わずトイレに駆け込んだほど。
家族や友達と日々会話することと同じように、ダンスをする。
仕事から帰って次の日のお弁当を作ることと同じように、ダンスをする。
普段歩くことと同じように、ダンスをする。
ちょっと大げさかもしれないけれど、そんな風に私の中でダンス自体を「特別なこと」から「日常の出来事」としてとらえるようになった。
そのせつなさや寂しさを受け入れることで、前よりも深く楽しめるようになった気がする。
いつまで続けられるかわからないけれど、これから先もまだまだ踊っている自分の姿が容易に想像できる。
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