【訪ねたい部屋】後編:フィン・ユールの椅子に憧れて。好きなものが並んでいる景色は自分を幸せにしてくれます
特集【訪ねたい部屋】では、自分の好きや理想を大切に、毎日を気持ちよく生活している方のお宅を訪ねています。
今回、お邪魔したのはバッグブランド「ANUNFOLD」オーナー・石川敦幹(いしかわ・のぶもと)さんの住まいです。
石川さんは、神奈川県にあるテラスハウスに夫婦で暮らされています。
前編では、この家を見つけた経緯、好きなインテリアのイメージなどについて伺いました。
続く後編では、好きなものの変遷や飾り方のヒント、2021年に立ち上げたブランドの話などを伺います。
前編から読む
好きなものに囲まれると、ハッピーになれる
キッチンの "メロン色" のタイルや、リビングの淡いグリーンの壁など、色使いが絶妙な石川さん宅。デンマークの建築家で家具デザイナーのフィン・ユールの影響が大きいそうですが、家具などのインテリアも北欧家具が中心ですか。
石川さん:
「若い頃はイームズを代表とするミッドセンチュリーが好きで揃えていた時期がありました。年齢を重ねて、木のぬくもりといったものに惹かれるようになり、そこから北欧家具に移ってきた感じです。
古い家具はインターネットでも探しますが、実物を見たいときは〈北欧家具talo〉さんなどに通っていました。
フィン・ユールの椅子は、もともと生産数が少ないこともあり、昔から高くてすぐには買えなかったんですけれど、憧れの作家の家具がある生活は、やっぱりいいものですよね」
石川さん:
「座ることだけを考えたらどんな椅子でもいいわけですけれど、やっぱり気に入ったものが手元にあることで、すごく幸せな気持ちになれるんです。
オブジェなどもそうですよね。好きなものが並んでいるのを見るだけで、僕の場合は気分が上がります。別に食べられるわけでもないし、何かに使えるわけでもないけれど、心を豊かにしてくれる」
石川さん:
「自分がハッピーなら人にもハッピーを分けられると思うんですよ。一緒にいる人がニコニコしていたら気持ちがいいじゃないですか。
だから家具に限らず、ひとつひとつ好きなものを大切にしていきたいなと思っています」
子どもの頃から、インテリアが好きでした
インテリアを整えたり、ものを集めることが好きで、家のいたるところに気分や季節によって変えるというアートが。昔から興味があったのでしょうか。
石川さん:
「今回、インタビューを受けるにあたり、どうしてこういう暮らしをするようになったのか振り返ってみたんですけれど、子どもの頃から自分の部屋を飾ることに興味があったんですよね。
本棚を飾り棚に見立ててプラモデルを並べたり、模様替えもしょっちゅうしていました」
石川さん:
「昔、ビームスボーイのショップディスプレイに憧れて、真似したこともありました。
木材を買ってきて、すのこのように並べて茶色に塗り、サンドペーパーで色を落としてから黒いペイントを塗って、少し古びた感じにさせるんです。それを壁に取り付けて、服や帽子を飾ったりして。
当時はYouTubeのような参考になる情報もなかったので、ぜんぶ自分で考えて工夫して、夏休み中やっていたんですよ。
それが今でも、ずっと続いているような感じなんです」
ほしいものは買う主義です
民芸品から作家ものまで、時代も国も超えてさまざまなテイストのものがあるのに、空間で見ると、まとまった印象。飾るコツやルールのようなものは、あるのでしょうか。
石川さん:
「ここに飾ろうと先に考えてから買うことってなくて、『かわいいな』とピンときたものを選んでいます。
家に持って帰ってから、さぁどこに置こうかと、あそこに置いたり、ここに置いたり。そういうことをするのが、楽しいんです。頭で考えているのと実際に置いてみるのとでは様子が違うので、パズルみたいにいろいろなところにまず置いてみます。
単体で置くと浮いているように感じたとしても、ほかのものと組み合わせると合うこともあるので、足し算・引き算をしてみると、新しい発見があるんじゃないでしょうか」
石川さん:
「好きなものを好きなように並べて、ああでもない、こうでもない、と考えることが趣味のようなものなんでしょうね。
ときどきミニマリストに憧れることもあるんですけれど、妻からは『無理だよね(笑)。すぐほしくなっちゃうものね』と言われています」
寝室のベッドカバーは、インスタグラムで見て気になっていたアメリカの会社のもので、メッセージを送り、旅行の折りにアトリエを訪ねて購入したのだとか。ほかにも似たようなエピソードのものがあちこちに。
石川さん:
「友人から、物欲が強いと驚かれるんですよ。でも、自分の好きなものは自分を幸せにしてくれますから、ほしいと思ったら買ってしまうんです。思い立ったら、海外の人とも気軽にやりとりができる今は、いい時代だと思います」
コロナを機に、独立を決めました
▲「ANUNFOLD」のバッグ。ユニセックスなデザインで、軽く丈夫。色は公式HPにてご覧ください。
好きなものが凝縮されている空間にすっかり魅了された取材チーム。
どんなところで買い物をしてますか?と聞くと、最近は自身のブランドを通して知り合った店や作家さんから、買うことも多いそう。
そもそも、バッグブランドを始めたきっかけは何だったのでしょうか。
石川さん:
「新卒で入社した会社でバッグの営業や生産管理をしていたのですが、コロナ禍で大きな環境の変化がありました。
ずっと楽しく働いていましたけど、改めて自分を見つめ直す機会になり、50歳という節目だったこともあって、今までの経験を活かして元同僚とブランドを立ち上げることにしたんです」
石川さん:
「会社員時代は、シーズンごとに新作を発表して、期末にはセールがあって、駆け足のものづくりでした。
もう少し長い時間軸で、じっくり素材を選んだり、職人さんと話したり、それをまたデザインに落とし込んだりしながら、お客さまに伝えていきたい。
今までだったら実店舗がないと難しかったと思いますが、今はインターネットが当たり前の時代で、店舗がなくてもSNSを通じてお客様に僕たちの思いを伝えられるのではないかと思いました」
家に完成はないから
▲ダイニングのランプは、現行品とヴィンテージ。ヴィンテージのほうが光がやわらかい。
この家に暮らして15年、キッチン、リビングの壁のリフォームを経て、トイレの壁のペンキを塗ったり、少しずつ整えてきました。
石川さん:
「今の状態は、とても気に入っています。ソファでくつろいでのんびり庭を眺めるのが好きで、この家でよかったと思う瞬間のひとつです。
平屋のようにワンフロアが広かったら、また違うこともできるんだろうと思うことはありますが、ひと部屋ひと部屋、違う見せ方ができるので、インテリア好きの僕には、これはこれでおもしろいなと。
とはいえ、常にこれが完成形ということはないですし、そのときのライフスタイルに合わせて、いろいろ変わっていくことを楽しみながら暮らしていきたいと思っています」
ものがたくさんあるけれど、やわらかい色味が調和した心地よい空間に、つい長居してしまいました。
長い年月をかけて味わいが出てきたヴィンテージ家具を愛する石川さん。手がけるブランドも、消費されて消えていくものではなく長く使ってもらえるものをというコンセプトで、それは家づくりにも通じるものがあります。
やはり住まいの佇まいは、そこに暮らす人の価値観や考え方を強く映し出すのだなあ、と改めて感じました。
(おわり)
【写真】メグミ
もくじ

石川敦幹
2022年に元同僚とバッグブランド「ANUNFOLD」を立ち上げ、デザインや生産管理など担当。竹炭や籾殻をベースに染色したナイロンバッグが人気。石川さんのお宅が見られる個人アカウントは@sekitorikun。
Instagram:
@anunfold
Instagram:
@sekitorikun
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