【ゆるめる香り】後編:モノ選びの基準に「好きな香り」を加えてみる
ライター 片田理恵
新生活に向けてつい力が入ってしまう心と体をゆるめるために、香りの力を借りる。そのための方法とは。ライフスタイルコーディネーターで「YORK. 」代表の山藤陽子(やまふじ・ようこ)さんに、香りのお話を伺っています。特別な道具や演出に頼らずに、いつもの暮らし方の中でできることを教えていただきました。
香りを楽しむ。その言葉からみなさんはどんな場面を思い浮かべるでしょうか。
アロマやお香を焚く、香水をつける、サシェを飾る。これら「香るための道具」を使い、「香るための時間」をつくることはもちろんひとつの方法ですが、この道具と時間は必ずしも必要ではないというのが山藤さんの考えだそう。
山藤さん:
「多忙な一日の中、香るための道具を揃えたり、香るための時間をつくるのは、正直いって難しいですよね。でもそれは、『香りを楽しむこと自体が難しい』こととは違うと思うんです。
もっと日常的に、生活の場面に応じて、いつもそこにあるモノで、香りは楽しむことができる。すでにみなさんが知っている『いい香り』『好きな香り』に意識を向けることで、改めて香りがもたらしてくれるリラックス効果に気づけると思いますよ」
特別なことはしない。モノ選びの基準を「好きな香り」に
暮らしに必要なモノを選ぶとき、山藤さんは「香り」をひとつの基準にしているといいます。手にとった時にその香りが好きかどうか。いまの自分にとって、心地よいかどうか。
山藤さん:
「好きな香りは日々変わります。だから効果効能よりも、その時その時で心惹かれる香りを選ぶといい。選んだ香りがその時の自分に足りないものを教えてくれるんです」
後編では、そんな山藤さんが実際に使っている「ゆるめるアイテム」とその使い方を見せていただきました。
目覚めたての肌に心地いい。
心まで癒されるスキンケア
「NEAL’S YARD REMEDIES(ニールズヤード レメディーズ)」のスキンケアシリーズを長年愛用している山藤さん。プロダクトにオーガニックのアロマオイルが入ったものを選ぶことも、香りを楽しむひとつの方法だといいます。
朝晩のお手入れのたび、好きな香りに包まれるのが何よりのリラックスタイム。指先でパタパタとたたくようにつけると呼吸が止まってしまうため、深い呼吸を意識しながら、指と手のひら全体で顔を覆うようにしてなじませるのがコツだそう。
眠りにつく前のリラックスタイムに。
花を買った日は枕元において
花をもらったり買ったりした日には、枕元に置いて、その香りと一緒に眠ることにしているという山藤さん。今最も気に入っているのが、滋賀県産の日本のばら「WABARA」です。
花の香りがゆっくりと寝室全体に広がっていくので、心地よく深呼吸をしながら、落ち着いた気持ちでぐっすりと寝られるのだとか。ベッドとの距離が近すぎて花瓶を倒してしまわないよう、スツールなどに置いて適度な距離を。
ちょっと調子がよくないときに。
スパイスで心も体もあったまるお茶
きび糖にジンジャー、クミンなど14種類のスパイスやハーブをブレンドした「サマハン」は、ほんのり甘くてスパイシーな香りが、疲れや冷えた体にぴったり。山藤さんは小包装の顆粒タイプを常備しています。
お湯で溶かすだけでなく、暑い季節には水でもOK。喉の調子が悪い時、風邪気味の時には必ず飲んで、おいしくケア。
仕事の合間のおやつにうれしい。
おいしい香りを楽しむチョコレート
おやつには、イタリアの古代チョコレート「アンティカ・ドルチェリア・ボナイユート」を。カカオを低温で温める昔ながらの伝統的な製法で作られたもので、ひとかけら食べると、芳醇な豆の香りが口の中いっぱいに広がります。
食べ終えた後まで香りとおいしさが続き、余韻も含めてチョコレートにゆったりと浸れるところがおすすめとか。仕事の合間に一息いれたい、そんなおやつタイムにぴったりです。
食べる前に香りも飾りましょう。
フレッシュな果物で、季節を感じて
フルーツは食べるだけが楽しみではありません。大のフルーツ好きという山藤さん、食べる前にその香りも満喫することにしているそう。
この日は国産のマンダリンオレンジとレモンがプレートに置かれていました。そばに座るとほのかに酸味を含んだ甘い香り。花同様ベッドサイドに置くほか、食卓やキッチンのカウンターにも。特に好きなのは桃だそう。
深呼吸したくなる香りとともに、暮らす
山藤さんが提案する「香りのある暮らし」、いかがでしたか。
日常を好きな香りで満たしていくことで、深呼吸したくなるシチュエーションをつくる。香りという呼吸のスイッチが心と体を少しずつ整え、無駄な緊張や力みをゆるめてくれる。
「これなら私にもできる!」と思わせてくれるようなアイデアに出会えたことで、まずは香りを楽しむための第一歩を踏み出せたような気がしました。
好きな色や形を選ぶように、好きな触り心地を選ぶように、好きな香りを選んで暮らす。心地よく感じる日常をつくっていくことで、私たちは同時に、自分自身を大切にする気持ちも育んでいるのかもしれません。
(おわり)
【写真】濱津和貴
もくじ
山藤陽子(やまふじ・ようこ)
YORK.代表。1本の精油との出会いから「プロダクトはただのモノではなく、人生を変えるきっかけをもたらしてくれる」ことを実感。モノと人をつなぐ仕事を志す。オーガニックブランドで働いたのちに独立し、南青山にコンセプトストア「HEIGHTS」をオープン。今春、オリジナルのパフュームを発売予定。写真は愛猫のモカフラペチーノ・ウィズ・ホイップと。
http://york-tokyo.com
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。暮らし、食、子育て、地域などをテーマに取材・執筆に取り組む。
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