【庭のある家に暮らしたい】第1話:毎日が実験!夫婦で始めたゼロからの庭づくり
ライター 藤沢あかり
住宅街を抜け、細く急な階段をのぼりきると現れる丘の上の一軒家。「NUSUMIGUI」と書かれた看板を目印に門をくぐれば、そこには緑に囲まれた庭が広がります。ここが、今回の物語の舞台です。
ここ一年ほどで、庭やベランダで過ごす時間が増えたという話をよく聞くようになりました。無心になって土とたわむれたり、小さな新芽やつぼみのふくらみに心踊らせたりするひとときは、日常に「変化する」楽しみを添えてくれます。
となると、やはり憧れるのは庭のある暮らしです。ガーデニングに野菜作り、それから? 庭にはどんな豊かな暮らしが待っているのでしょう。
ここは、「nusumigui(ヌスミグイ)」の名で洋服を作る山杢勇馬(やまもく・ゆうま)さん、瞳(ひとみ)さん夫妻の自宅兼アトリエです。東京の下町から、フレンチブルドックのゴマとともに移り住み、3年半が経ちました。
勇馬さん:
「僕たちが作る服は、未完成なんです。実際に袖を通してもらいながら、その人に合わせて丈や袖の長さなどを調整したり、ときにはポケットを追加したりと、セミオーダーで仕上げていきます。だから、お渡しするまでにお待たせしてしまうのですが、待つ時間そのものも服を買う体験になるような場所を作りたかった。広い庭があるここなら、それができると思いました」
手探りでスタートした、自分たち好みの庭づくり
立派な木に囲まれ、ハーブや野菜、たくさんの植物が茂る庭は、丘の上に立つこともあり、周囲の建物の存在をほとんど感じることがありません。まるで秘密の場所に迷い込んだよう。
万緑のみずみずしい景色のなかに、自分たちで手を加えたというアプローチが続きます。
▲一角には勇馬さんが建てた温室も。中には簡易キッチンを設け、庭でも調理が楽しめるようにしました。
瞳さん:
「もともとは、つくばいや灯籠が残る和風の庭園だったようです。でも越してきたときは荒れ放題で、岩を動かし、雑草を取って……。木もかなり植わっていましたが、梅や桜、柿、モクレンなど残したいものだけを選び、それ以外を切り倒してスペースをつくるところから始めました」
▲勇馬さんの左側にあるのはミモザの木。友人からの引っ越し祝いだそうで、小さな苗木が3年でこんなに大きく育ちました。
勇馬さん:
「一番の大仕事は、アプローチづくりかもしれません。門から玄関のあたりまでコンクリートを流し込んだのですが、丘の上だから車が入れないんです。坂を上がって、300キロの石や砂を運んだのは忘れられません(笑)」
せっかく咲いた花を摘むのはもったいない……?
アプローチの両側には、四季折々の花やハーブがお出迎え。こちらは主に、瞳さんが担当しています。
瞳さん:
「まさか自分が庭づくりにはまるとは思いもしませんでした。昔から植物は好きで、都内に住んでいた頃もベランダで鉢植えを育てていましたが、やっぱり全然違いますね。季節ごとに変わっていく庭を見ていられるのはほんとうにうれしいです」
庭をぐるりと歩きながら、伸びすぎた枝や茎を整える切り戻し作業を兼ねて、花を摘むのも楽しみのひとつです。
▲取材時は、免疫力を高めるといわれるハーブ、エキナセアの花が見頃に。
瞳さん:
「最初はせっかく咲いた花を切るのはもったいなく思えてしまって。でも、どんどん切ると、またどんどん葉を広げ、大きくなって花もたくさん咲くのだとやっているうちにわかってきました」
▲鉢植えで育てていたラムズイヤーは、株分けし地植えにしたところ、どんどん増えたそう。
庭づくりはまったくの初心者だったという二人。もちろん、植物を本格的に育てるのも初めてのことです。
瞳さん:
「YouTubeで園芸チャンネルをいろいろ観ながら、よく参考にしています。でも、今はとにかくいろいろやってみようという感じで、たくさんの種類を植えてみているところです。
いろいろな草花が混じり合って自然に近いかたちで育っている庭が理想なんです。こぼれた種が広がって、自然に増えていったらいいなと思っています」
瞳さん:
「春になると、2年前に植えたリナリアのこぼれ種から自然と花が咲いてくれました。庭のあちらこちらで、ピンクや黄色、紫、白などカラフルな花を咲かせてくれて。あぁ、ちゃんと種がじっと春を待っていたんだと思うとうれしかったです。
でも一方で、なにも考えずにミントを植えたら、どんどん広がりすぎてほかの植物を侵食してしまって……。ミントは繁殖力が強いから、地植えするときは要注意だと後から知りました(笑)」
水に差しながら摘んだ花は、自宅とショップ、それぞれの場所に活け直します。
▲ダイニングテーブルには、エキナセアを中心に、スガビオサやガウラ、ユーカリの葉などを合わせたアレンジを。
▲ショップには、ホワイトレースフラワーやベルのような花が連なるジキタリスなどを。
ここに越してきて、飾るための切り花を買うことはほとんどなくなったといいます。季節のうつろいが暮らしの一部になっているシーンは、こんなところにもありました。
こんな樹木やハーブを食卓で楽しんでいます
庭のハーブや果実も、暮らしを豊かにしてくれているそう。越してきたときからあった大きな梅の木は毎年たわわに実るので、梅酒やシロップ、梅干しにしています。
瞳さん:
「春にはラズベリーがたくさん採れたので、ヨーグルトに入れたり、焼き菓子に入れたりして楽しみました。柿の木もたくさん実がつくのですが、まだうまく使いこなせていなくて。いつも鳥や動物たちに食べてもらうばかりなんです」
さらに、ハーブは料理やお菓子に使ったり、乾燥させてお茶にしたりと大活躍です。
瞳さん:
「ミントやタイム、ローズマリー、ラベンダーやボリジ、ジャーマンカモミール、セージ、レモングラスなど、いろいろ育てています。ハーブにはお花も食べられるものがあるんですよ、たとえばこの濃いピンクのマロウもそうです」
▲「うすべにあおい」とも呼ばれる、濃い赤紫色のマロウ。
マロウの花は、ハーブティーとして。花びらの上からお湯を注ぐと、ふわっと薄いブルーに染まる様子はおもてなしにもぴったりです。花びらを摘んで乾燥させておけば、季節を問わずいつでも楽しめます。
こちらのブルーの花びらは、「エディブルフラワー(食べられる花)」としても知られるボリジ。この日は自家焙煎のコーヒーで作ったゼリーに添えて出してくれました。
瞳さん:
「マロウは葉っぱも食べられると聞いてつまんでみたことも。ボリジの葉は天ぷらにしてみたのですが、こちらはいまひとつでした(笑)。でも実際にどんな味かな?と試しながら、実験のように楽しんでいます」
2人の庭づくりは、とにかく手探り、毎日が実験のようだと口を揃えて話してくれました。
ガーデニング以外にも、庭の楽しみ方はまだまだ続きます。続く2話目では、庭で過ごす朝ごはんの時間におじゃまします。
【写真】神ノ川智早
もくじ
山杢勇馬、山杢瞳
デザインと製作を勇馬さんが、販売や接客を瞳さんが手がけるブランド「nusumigui(ヌスミグイ)」主宰。暮らしのそばでつくることを大切にした洋服は、すべて手しごとによる一点もので、その人の暮らしや希望に合わせて仕上げる独自のスタイル。不定期オープンの自宅併設のショップ「nusumigui studio」や、ポップアップイベントを通じて販売している。HP→https://www.nusumigui.space /instagram→@nusumigui_studio
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