【新連載|台所でおつかれさま】第1話:自分の部屋はないけれど。台所に入れば「素に戻れる」(スタッフ渡邉)
編集スタッフ 糸井
本日より「台所でおつかれさま」という、新しい連載がはじまります。
台所で過ごす時間は、どんなものでしょう。
料理のほかにも、本を読んだりドラマを観たり、仕事をしたりする時間もありそうです。違いはあれど、そのすべての台所時間に、今日の自分をケアしたり、明日のためのデトックスに必要な習慣が隠れている気がしています。
その過ごし方は、自分の台所を持った日から紆余曲折を経て育ってきた賜物。そんな台所に立つ自分をちょっと俯瞰して見ると、日々大事にしていることが見えてくるかもしれません。
この連載では、不定期でスタッフ宅にお邪魔し、「台所」にまつわるエピソードや、お気に入りのものをきいていきます。
今回訪ねたのは、都内のマンションに家族4人で暮らす、スタッフ渡邉宅です。
#01
スタッフ渡邉の台所
お客さま係である渡邉宅の台所は、リビングが見渡せるカウンターキッチン型。側にあるダイニングテーブルをリモートワークスペースとしても使うため、ほぼ1日中台所の近くで過ごすそう。
渡邉:
「自分の部屋はないので、台所はその代わりになっているのかもしれません。
自分の台所を持ったのは、社会人で始めた一人暮らしから。残業で夜遅く帰る生活で、1Kの一口コンロだったこともあり、その頃はただ『リビングへの通り道』くらいの存在でした」
渡邉:
「料理も、ずっと専業主婦だった母に頼っていたからか不得意のまま。
疲れていると、外食や惣菜に頼ってしまうこともあります。
一方でそういう日には、やたらと台所を片付けたり、お味噌汁や豚肉と野菜のせいろ蒸しといった『レシピに頼らずに作れる献立』を選ぶことで、台所に立つきっかけを作ることも。それで忙しない気持ちが少しだけ、落ち着くような気がするんです。
そうやって、昔も今も料理コンプレックスがあるものの、台所が『好きな場所』として育ってきたんだと思います」
駆け込み寺のような、プチ「避難場所」
渡邉:
「我が家は対面キッチンなのですが、リビングに背中を向けて台所に入っていく一瞬には、『素に戻る』感覚があるというか。避難場所のようになっているかもしれません。
たとえば子供を叱ってしまったり、口喧嘩になったあと。わちゃわちゃと食事を終えて食器を持っていきながらも台所に入ると、軽く一息つけて。
そこで反省したり、『無事にごちそうさまができてよかったよ』と、自分の肩をトントンとたたくような気持ちに導かれることが、これまでも多かったかもしれません」
▲マグカップに直接コーヒーを淹れたり、ティーバッグのお茶を入れておいて、台所に行くついでにちょっとずつ飲んだり、隠れて『へそくりお菓子』を食べたりしながら、一日頑張った自分を労い、残りの時間を励ますようにしているそう。
深夜、家が寝静まったあとのひとり時間
忙しい日々。そんなときも台所は、どこか足を運ぶ場所になっているそう。
渡邉:
「たまに、家族が寝静まった深夜、まだ目が冴えている日は、台所にひとり移動しています。
ミートソースや豆腐ハンバーグを作って、みじん切りや煮詰めるあいだ無心になる。おもむろに食材ストックの整理を始める。収納の仕方をあれこれ変えてみる。大体この3つのどれかをしています」
渡邉:
「他の部屋だと、何か処分するときには家族にその都度聞いたり、子どもが自分で見つけやすいかな? と考えるけれど、台所のものは割と自分の判断で、好きなようにできる。これって、爽快なのかもしれません。
それに、子供が起きている時間はなかなか作業が進まないことが多いので、自分の時間配分で進められることも心地のいいひとときです」
▲並行して、音楽やラジオを聴くのも至福のとき。
▲収納に小さな改良を加える時間は無心になれて、次は考え事をする余裕ができたりも。
機嫌をつくる、毎日の励ましアイテム
IKEAで買った棚に置いてあるのは、『目が合うとご機嫌になれる』というお気に入りのアイテムでした。
渡邉:
「ここは眺めるだけで落ち着く場所。たとえば夫との北欧旅行で買った、黄色のカップアンドソーサー。あとはコンロの横にいる、赤鼻のキッチンペーパーホルダーも、チェコで手に入れたものですね。
当時旅行して楽しかったことを思い出しては、頭のなかで現実逃避をしているんです。笑」
▲シアトルで買って帰った、大きなコーヒーキャニスターも現役。
渡邉:
「台所に好きなものを揃えたい、という欲はあまりない方でした。一人暮らしをしていたときは、そもそもスペース自体もなくて。
結婚する前に少しだけ部屋が大きくなってから、少しずつ、かわいいお皿なんかに目が向き始めて。映画『かもめ食堂』を観て、ARABIAのAvecというお皿を買ったときは嬉しかったですね。
そこからは仲間を呼ぶように、ケメックスのコーヒーメーカーを買ったなら、『それならおいしいコーヒー豆を買ってみよう』といったふうに増えていくことになりました」
▲冷蔵庫に貼ってある子どもからの手紙やお絵描きも、元気スポット。マグネットもお気に入り。
日々使うもので助けられているものには、どんなアイテムがあるのでしょう。
渡邉:
「コーヒーアイテムやミルクパンが、毎日の励まし道具です。
最近買った『パラティッシ』のボウルも、もうひとつ買い足そうと思っているほどで。これにフルーツやカレーを盛るだけでグッと印象が良くなるので、手抜きの日に何度も助けられています」
必要で、色んな役を担ってくれる場所
渡邉:
「普段台所との付き合い方を考えたことはなかったのですが、改めて、私にとって台所は、そのときどきで、色んな役目を担ってくれる場所なんだと思います。
昔は、通勤電車に1時間ゆられながらできていた考え事や無心になる時間は、今は無意識のうちに台所でするようになって。自分の部屋はないけれど、代わりにここに入ると、『素の自分』に再会できています。
忙しいときほど整理収納に励んでしまうのは、きっと、素のままの自分自身が一番居心地良く過ごせるよう、無意識に自分を助けるように動いていたのかもしれないなあと思いました」
そんな渡邉と台所の関係。みなさんは、どんな台所の時間を過ごしているのでしょう。
さて次は、どのスタッフの台所を訪れましょうか。次回の更新も、どうぞお楽しみに。
【写真】濱津和貴
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