【香菜子さんのオシャレと哲学】48歳になった今。これからは「わたしはどうしたい?」を問い続けたい
編集スタッフ 松田
当店とモデルの香菜子さんが手がけるブランド・LOTA PRODUCT(ロタプロダクト)がコラボレーションしたほんのり色づくカラーリップバームが、本日より発売となりました。
香菜子さんといえば、お洋服やメイク、インテリア、オシャレだけれど決して飾らず、どこかほどよく力が抜けていて朗らかな方。
この特集では、発売記念の読みものとして、40代後半になった香菜子さんがいま思う「オシャレ」について、お話を伺います。聞き手は、学年こそ違うけれど香菜子さんと実は同い年という店長の佐藤です。
これまでのこと、これから先の人生のこと。おしゃべりを通して、オシャレも生き方も、香菜子さんは、ひとつの軸を大切にされていることがわかりました。
さて、それではさっそく、ある日の午後の、ふたりのおしゃべりの様子を覗いてみましょう。
40代までは誰かに喜んでもらうのが、すべての基準だった
▲この日、香菜子さんは「すいようびの色(ピンクベージュ)」のカラーリップバームを、店長 佐藤は「きんようびの色(ポピーレッド)」を塗っています
—(聞き手:店長 佐藤 以下略)私たちがはじめてお会いしたのは、たしか7年ほど前、40歳を少し過ぎた頃でした。香菜子さん、なんだか雰囲気が変わられましたよね! スタイリッシュでかっこいい印象になっていく感じといいますか。ご自身では、この数年でどんな変化がありましたか?
香菜子さん:
「そうですね、実はすこし図太くなってきた自覚があって。なにごとも自分軸をもっと大事にしたい、本当にやりたくないことはやらなくていいかなと。ここ数年で、そんな気持ちが強くなってきたことが、装いなどにも影響しているかもしれません。
わたし、自分に対して、ずっと自信がなくて生きてきたんです。子どもの頃から、自分のやりたいという気持ちよりも、大人やまわりの人が喜んでくれることがすべての基準でした。
幼少期から絵を描くことが得意でしたが、それだって “遠近法を使ったらみんなが好きな絵になりそう” と思って描いて、それで金賞をもらって」
香菜子さん:
「その価値基準は、大人になってからもずっと変わりませんでした。
モデルとしてコーディネートを紹介するようになってからは、たとえば私服を一着買うにも、自分は地味な色に本当は惹かれているけれど、差し色のほうが写真に映えそうとか、周りにいいねって思ってもらえるとか、そういう視点により重きを置いていたなあって。
そのときはもちろん、楽しくやってはいたんですけれどね」
「カッコつけてる」自分に気づいて
— 香菜子さんにそんな一面があったなんて。自分軸を大切にしたいと思いはじめたのは、何かきっかけがあったのですか?
香菜子さん:
「40代後半に差し掛かった頃、何が本当に欲しい服なのかがわからなくなっている自分がいたんです。それで、あっ、このままじゃいけないと気づいて。
どうしてこんなに自分が好きなものがわからないんだろうと振り返って考えたら、これまで自分軸の価値基準で生きてこなかったからなんだと思いました。
子供のころは、大人のため。大人になってからも、子供のため、夫のため、誰か他の人のため……」
香菜子さん:
「そして、“かっこつけ” の自分がいたんだなとも気づきました。失敗したくないという気持ちが強くて、間違えちゃいけない、まわりの期待に応えたいって。
でも、そろそろ人生が折り返しに入って。だったら、自分が喜ぶか、自分軸で生きていかないともったいない、じゃあそうしよう。これから先の自分が生きやすくなるために。
と気づいたけれど、いまも全部がうまくできているわけではないんですよ。たとえば、無意識に子どもにかけた言葉も、自分軸の言葉ではなくて、世の中の価値観から出てきたものだなと感じたり。コーヒーカップも、好きだからではなくて、ただ安いから買っちゃったなと気づいたり。
それでも、まずは気づくことが大事だと思って、身の回りの小さなことから、たとえば装いに関しても、洋服やコスメなどのオシャレも自分軸で選ぶ練習をしているところです」
この色が欲しいんです!と飛び込んだ、ワインレッドの口紅
— 本当に私はそれに惹かれている?と、ひとつひとつ今も問い続けているんですね。それを聞くと、なんだかすごく勇気が出ます。ちなみに、ここ最近のお買い物で、これは本当に自分が好きなんだと強く惹かれて買ったものはありますか?
香菜子さん:
「最近だと、今お気に入りのワインレッドの口紅です。
出張先へ向かう新幹線で急に、強い色がほしい!となって。東京へ戻ってから買うのでは気持ちが収まらないから、目的地の金沢駅を降りてすぐの駅ビルで買ったんです。“この色がほしいんですが、ありますか” ってお店へ勢いよく飛び込んで。
そのときは、自分でもびっくりするくらいの行動力がありました」
▲香菜子さんの定番のメイク道具たち。その中に、思い入れのあるワインレッドの口紅も
香菜子さん:
「これがいいと感じたことって、意外とすぐ忘れてしまう。だから、そのときの気持ちを冷めないまま、すぐに行動にうつすようにしていて。この口紅も、もし買うまで時間を置いてしまったら、“だれかに変な色って思われるかも……” と余計な考えが出てきて、買えなかったかもしれない。
いますぐ欲しいの!という気持ちは大事にしていたいかな」
流されても、失敗しても、人生は続くから
オシャレも自分軸で、と香菜子さん。そんなオシャレの考え方について、心の支えにしているものはありますか?と聞いたところ、いくつかの本をみせてくれました。
▲(写真左から時計回りに)『Papa told me』榛野なな恵 集英社…「小学生の頃からのバイブル。主人公の知世ちゃんの“わたしはね、わたしのために、かわいいの”というセリフが特に印象的」/『思考の整理学』筑摩書房 外山滋比古…「これでいいんだ!と発想転換のヒントを与えてくれる本です」/『女の人差し指』向田邦子 文藝春秋…「高校生で初めて読んでから、20代、30代、40代と読み直すたびに新鮮な発見があります」
— オシャレの考え方、ときいてこの3冊が出てきたことが意外で、すごく面白いです! 香菜子さんにとっては、オシャレもすべて哲学からはじまるのですね。
香菜子さん:
「常識に囚われて流されないために、こういう本を何度も読み返しているのかもしれません。
こういう考えを、自分の身近なことに取り入れると、たとえば娘が好きなアパレルブランドやプチプラのコスメも若い人のものと決めつけずに、可愛いなと思ったら、素直に自分の一部に取り入れてみたり。
でも一方で、流される時期もあっていい、とも思います。流されてみてはじめて、なんだか違和感があるぞと気づくこともありますよね。まずは一通りやってみて、失敗してなんぼ。そのあとどうするかなんだって思えるようになってきたところです」
▲お気に入りのプチプラコスメの一部
かっこいいおばあちゃんになりたい
— この先、こんな風になりたいというイメージってありますか?
香菜子さん:
「真っ赤な口紅だけをさして、白髪をキュッとまとめて、それだけでサマになる、かっこいいおばあちゃんになりたいなぁと。
それは、土台ができていないといけなくて。土台というのは、考え方の柱をしっかり持っているとか、スキンケアをちゃんとしていて綺麗とか、身体に必要なものをきちんと食べて体が健康だということ。そういう土台がないと、メイクだけして装ってもきっとバレちゃう。
そこにいきつくための、いまはいろんなレッスンを受けている段階だと思っています」
— レッスン中っていい言葉! ポジティブな響きも含まれていて好きです。
香菜子さん:
「そうそう、レッスン中。そしてせっかくなら、楽しいレッスンがいい。
この歳になったら、いい学校へいきなさい、みたいなことはもう誰にも言われなくなりますよね。だから、自分の好きなレッスンを受けたらいいと思います。
ちなみにわたしは今までやってきたデザインやグラフィックの分野と全く別のジャンルのことを知りたくて、量子力学の本を読んでいます。とっても面白いんですよ」
感じたことを書き留めるのも、ひとつのレッスン
香菜子さん:
「自分が本当に好きなものを見つけていくための、すぐできるレッスンのひとつとして、感じたことを言語化するというのもすごく良いです。
私は出かけた先のカフェなどで、家でも仕事でもない場所で、思い浮かんだことをそのまま書くようにしています。できれば電子じゃなくて、紙に書く。出てきた言葉は、自分だけのオリジナルだから、できるだけ逃さないようにって。
これが好きとか、これは好きじゃないとか、そんな簡単な言葉でもいい。たとえばこのカラーリップバームも、実際に自分が使ってみて、どんな風に気分が上がるのか、それを感じて、メモに書き留めてみてもらえたら、何か新しい発見があるかもしれないですよね」
— このカラーリップバームも、どの色、どのトーンにするか、一緒にたくさん話し合って決めましたよね。その過程で感じたことを、香菜子さんが言葉に残してくれていて。そのときのノートが、すごく印象的でした。もしよかったらお客様にも、感じたことを言葉にすること、ぜひやってみていただけたら嬉しいですね。
香菜子さん:
「このリップバームが誰かのレッスンのきっかけになったら嬉しいなぁ。そうやって自分を知っていくって、楽しいですよ」
▲カラーリップバーム開発ミーティングでの香菜子さんのノート。「ぽわんと美しくなる感じ」「やさしい中に少しキリッとした印象、うるさすぎない」「やさしい強さ、塗った時の印象が変わる」など実際につけてみて感じたことがメモされていました
誰かのお守りになりますように
— 今回できあがったカラーリップバームを改めて眺めてみて、なんだか「お守り」という感覚に近いアイテムになったなと感じます。気合を入れてつけるというより、いつも相棒みたいに持ち歩きたくなる存在というか。
香菜子さん:
「わたし、よく出かけるときにお気に入りのリップを忘れてしまうんですけど、ちゃんと鞄の中にある日は『あぁよかった、あったあった、今日忘れずに持ってきたんだー』と、ほっとするんです。このリップバームが、そんな存在になったら嬉しいですね。
あと、いわゆる口紅とは違うから、唇の乾燥をなおすついでに、道端でもパッと塗れるこの気軽さも好きです。血色をよく見せてくれるくらいに色もつくけれど、鏡を見なくても大丈夫、このバランスがすごくいいなぁと」
— 香菜子さんがイラストをのせてくれた、このメッセージが伝わったら嬉しいですね。
I am always glowing、私はいつも輝いている。
香菜子さん:
「そう、私もみんなも、自分のままでいいんだーって思えたら。私なんかって思わずに、まだまだ、これからもっと自分がなりたいものに進んでいく。そのきっかけやお守りになったらいいなと願っています」
photo:上原朋也(16枚目以外)
香菜子(かなこ)
1975年、栃木県足利市生まれ。女子美術大学工芸家陶芸専攻卒業。在学中にモデルを始め、現在2児の母。母の立場から「こんなものがほしい」をかたちにした雑貨ブランド“LOTA PRODUCT(ロタ プロダクト)”を設立する。2008年よりイラストレーターとしての活動もスタート。著書に『毎日、無理なく、機嫌よく』(すばる舎)など。
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