【自由な家づくり】第3話:雑貨の力を信じてる。DIYもインテリアも「やってみる」の気持ちで

編集スタッフ 野村

未完成の一軒家に住みながら、DIYをして進める家づくり。

そんな挑戦をしている、インテリアショップ「オルネ ド フォイユ」オーナーの谷あきらさんの家を訪ねています。

第1話では谷さんのこれまでの歩みついて、第2話では家づくりでの苦労とこだわった箇所についてご紹介しました。

第3話では、これからの暮らしで考えていることや、インテリアを楽しむ秘訣についてもお話を伺います。

第1話から読む

 

DIYに向き合い続けられるのはどうしてですか?

▲大きく窓がとられ気持ちいい自然光が差し込む1階のスタジオ。今は主にこのスタジオのDIYを進めているそう

住みながらDIYする家づくりはとにかく大変。そう話す谷さんですが、その手を止めずに2年間じっくりと家づくりに向き合い続けています。

そのモチベーションはどんなところから湧いてくるのでしょうか?

谷さん:
「僕はもともとめんどくさがり屋なところがあって、お尻を叩かれないとなかなか動き出せない性格なんです。

妻とパリで一緒に暮らしていた時、DIYや家具のレイアウトの変更など、積極的に色々試していたのは彼女の方でした。

僕は、今のままでいいよ、なんて言っていたけれど、仕事から帰ってきた後も妻はどんなレイアウトがいいかあれこれ検討してみる、という感じでとにかく手や体を動かしていて」

谷さん:
「彼女のそんな姿を見て、インテリアを自分好みに変えていくのって夢中になれる楽しさがあるなと気づきました。

そうやって今までカチカチだった頭がだんだんと柔らかくなったから、DIYにも向き合い続けられるようになったのかもしれないです」

谷さん:
「実は玄関も最近までベニヤ板が剥き出しの状態でした。他の場所の作業を優先していたらつい後回しになってしまって。

今回取材があったおかげで、それまでには間に合わさなければ、と自分のお尻を叩いて、ようやく完成させることができました。

ちなみにタイルは全て妻が貼っています。几帳面な作業が苦手な僕は言われた通りにタイルを切って用意しただけです……(笑)」

 

「一生の住まい」とは考えていなくて

谷さん:
「柔軟になったといえば、実はこの家を『一生の住まい』という風にはあまり考えていないんです。

思い入れはもちろんありますし、今もこだわって作っている途中です。でも年を取ると、きっと家の前の坂や階段を登るのはしんどくなるし、今後子どもが独立して夫婦2人で過ごすようになれば、もっと小さな家でもいいかもしれない。

だからその時は、この家を貸し出すか売るという選択肢もあるかもなと思っています。本当にそうするかは、その時になって考えてみないと分からないですけどね。

家を建てる時から、あらゆることを完璧に決め切らずに、住みながらどうするかを決めていったり、変えていったりするやり方が、僕たちにとっては合っていたんだと思います。

仕事や暮らしの変化にあわせて、住む家や場所も変えていける選択肢があると思うと、家づくりにも身構えすぎずに、少しだけ気持ちも楽になるような気がするんです」

こだわって作っているお家だからこそ、あっさり手放してもいいと思っているという谷さんの一言は意外でした。

「家づくり」は一生に一度のこと。住む場所も家の形もその一回で決まってしまうから失敗ができない、とどこか不自由なイメージがありました。

でも家づくりに軽やかな姿勢で接している谷さんの姿を見て、住みながらこれからのことを決めていくこともできるという、もっと自由なイメージを持ってもいいのかな、と少し希望をもらえた気がしました。

 

やってみないと分からない、の気持ちで

家のDIYやこれからの住まい方についても、執着しすぎずどこか肩の力を抜いた軽やかな選択をしてきた谷さん。

私の場合は、DIYのことでも失敗を考えるとその手をつい止めてしまいそうだなと思うのですが、そうした不安はどんな風に乗り越えているのでしょうか?

谷さん:
「僕の場合は、どんなこともやってみなきゃ分からないよね、という気持ちでいることですかね。

家の内装や家具をDIYするにしても、ひとつ作ってみた後じゃないと、次へのアクションって分からないと思うんです。

壁を塗っている時も、最初はイマイチだったなと思いながら作業をしていても、塗り終わりには、案外良いじゃんと思えることも多くて。

それに、いきなり家全体を改装するような大きいことじゃなくて、ちょっと壁に飾れそうな雑貨を飾る、みたいな小さなことから試してみる。そこから次は雑貨をもっとたくさん飾りたいから棚を作ってみる、となれたら十分だと思います」

谷さん:
「家のことも自分のお店のことも、住む前やお店を始める前に考えていたことって、たいてい違った方向に行くことが多くて。

特にこの家はそうですね。当初はフランスでも鎌倉でもDIYはたくさん経験を積んでいたから、新居のDIYもそれなりにこなしながら、週末は悠々自適に自分の時間を楽しむぞ〜というつもりでした。

でも実際は、暮らしながら作っていくのは思った以上に決めることもやるべきこともたくさんで苦労も多かった……(笑)

そんな大変さが分かることも含めて勉強ですね。何もしないと分からないままだから、不安が大きくなるというか。

始めてしまえば分かることが増えて、もしかしたら上手くいかなった時の対処法も見つかるかもしれません。そう考えているから手を止めずに動いていけたのかなぁと思います」

 

雑貨の力を信じているんです

谷さん:
「もし今のインテリアがイマイチだなと思っていたとしても、植物を増やしてみるとか、お気に入りの家具や雑貨を置いてみる、といったことだけで雰囲気や見え方はガラリと変えられます。

アイデアや工夫次第で、どんなインテリアも後からどんどん自分好みの空間に仕立てられる雑貨や家具が持つ力って本当にすごく大きい。

家を未完成なまま引き渡してもらって、自分たちの手できっと良くできるんじゃないかと思えたのも、僕自身がインテリアのお店をやっているのも、そんな家具や雑貨がもつ魅力を信じているからなのかもしれないですね」

かわいいなと思った花瓶を手に取ってみて、棚のこの場所かな、あの場所かなと試行錯誤しながら飾ってみる。それだけでその一角はもう理想のインテリアに一歩近づいているなと感じることもあります。

谷さんが家づくりやDIYへ取り組んでいる気持ちは、そんな思いと近いのかもしれないなと思いました。

実際にあれこれ飾ってみないと分からないから、手を動かしてみる。家づくりも、そんな雑貨を愛でている自分の気持ちの延長線上で楽しむことができる自由さがあるものかもしれないなと、少し足取りが軽くなった取材の帰り道でした。

(おわり)

【写真】吉田周平

 


もくじ

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谷あきら

東京・不動前のインテリア雑貨店「オルネ ド フォイユ」のオーナー。1994年に渡仏、14年間パリで暮らす。フランスで家具の買い付けとネットショップでの販売を経て2004年に東京に店舗をオープン。フレンチスタイルをはじめ、各国のインテリア雑貨や日用品を紹介している。


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