【小さな家のインテリア術】第1話:ワンルーム36平米。好きな家具に囲まれた幸福な部屋

ライター 長谷川未緒

自分好みのインテリアで整えた居心地の良い部屋で暮らしたいけれど、何をどうしたらいいのかわからずにいます。

インテリア雑誌を眺めても、狭いからとか賃貸だからとか、いろいろ言い訳をしてそのままに……。このままではずっと同じモヤモヤを抱え続けることになりそうです。

そこで、特集【小さな家のインテリア術】では、狭くても賃貸でも、心地よく暮らす人がどういうことを考え、何を基準にものを選び、インテリアを整えているのか探りました。

お話をうかがったのは、都内で36平米のワンルームに暮らす草木さちさんです。インスタグラムや雑誌で拝見するお部屋は、きちんと手をかけていることがわかる素敵なインテリア。

第1話では、狭い部屋でも広々と見せる工夫や、家具の買い物で失敗しないヒントを伺います。

 

一目ぼれで入居を決めた、36平米のコの字型のワンルーム

草木さんが暮らすのは、コの字型のワンルームです。玄関を入ってすぐにワーキングスペースがあり、続いてキッチンとリビング、奥が寝室になっています。

草木さん:
「この家で暮らして6年めになります。大手不動産のサイトで見て内見し、すぐに決めました。

気に入ったところはいろいろあるのですが、一番はフローリングがヘリンボーンだったこと。

壁も漆喰で、お風呂場やトイレの扉もアンティーク風のデザイン。賃貸だと変えられない床や壁、扉が素敵だったことで、すごく気に入りました」

草木さん:
「オーナーさんが建物全体の調和を大切にされている方なので、たとえば外から見えるカーテンは変えないでほしいといったリクエストもありますけれど、こちらこそおしゃれなカーテンをつけてくれてありがとうございます、という感じです」

コロナ禍から始まったリモートワークも、好きな家に長くいられるようになって、うれしいのだとか。

草木さん:
「メリハリがつかないかなと心配していたのですが、意外とすんなり移行できました。

ルーティンというほどのことでもないのですが、ミントの香りがすっきりして好きなので、仕事の前にアロマキャンドルを焚いて切り替えています」

 

狭い部屋では、大きな家具の色選びと抜け感を大切に

草木さん宅のインテリアのシンボル的存在は、〈リーン・ロゼ〉のソファです。

草木さん:
「3年ほど前に購入しました。人間工学に基づいているらしく、とにかく座り心地がいいんです。軽いのでひとりで動かしやすいのも気に入りました。

カバーが100種類以上ある中から選べるんですよ。ソファはワンルームだと特に存在感が大きいアイテムなので、主張しすぎない薄い色を選択しました。

このカバーは撥水性もありますし汚れに強くて、ワインをこぼしてもすぐに水で濡らした布でトントントンと拭けば、大丈夫なんです。

白系は飽きないし、ほかの家具やインテリア小物とも合わせやすいので、よかったと思っています」

ワンルームながら、リビングと寝室をつなぐ廊下のような役割を果たしているスペースにあるのは、柱の厚みとぴったりの〈IKEA〉の本棚です。これも白を選びました。

草木さん:
「このスペースを有効活用したいと思って、ぴったりサイズを探しました。

この本棚は下側が空いているので、圧迫感がなくていいんですよね。狭い部屋なので、抜け感があるものを選び空間を広く見せるようにしています」

 

家具を買う時は、ちょっと大変でも、段ボールで同じサイズを作ってみる

家具は見た目や機能もさることながら、用途に合ったサイズも大事。

実物を見ないで購入するネットショッピングもそうですが、家具店に足を運んだとしても、広々した中で見たらちょうどよかったのに、家に届いたら大きかった、なんていう失敗も。

草木さん:
「私もサイズをメジャーで測って買ったはずなのに、思っていたより小さいとか大きいという失敗を過去にしているんですよ。

なので最近は、段ボールで実寸大を作っています。この高さならちょうどいいとか、この幅ならここを通れるとか」

草木さん:
「このローテーブルを買ったときも、段ボールを組み立てて、これくらいなら大丈夫というのを確かめました。

作り始めるときはちょっと面倒なんですけれど、できあがるとこんな感じなんだ、とワクワク。ダンボール作戦、おすすめです」

 

妥協せずお気に入りを見つけることが、幸福につながる

この家で暮らし始める際、前の家から使っているのはベッドくらいで、あとは徐々に買い足していったそう。

草木さん:
「ヴィンテージやアンティークが好きで、ネットショップをよく利用しています。

最近届いたのは、先ほどお話しした段ボールでサイズを試したローテーブル。おそらく1960年代のフランスのヴィンテージで、ダイニングテーブル代わりに、ここで食事もしています。

リモコンなどこまごましたものを入れられる引き出し付きをずっと探していたんです。福岡の〈eel〉というお店で見つけました。天板は無塗装ですが、汚しても味わいになるのもヴィンテージのいいところです」

草木さん:
「ほかにも〈selency〉や〈etsy〉など、国内外問わずよく見ていますよ。蚤の市を見て回るのが好きで、同じような感覚です。

好みのものを見つけたら、そのお店の商品は全部チェックし、素敵な商品はスクリーンショットを撮ってインテリアの参考にすることも。

ヴィンテージは1点ものですし、良いものは入荷するとすぐ売り切れてしまいます。ローテーブルを探していたときは、1年間くらい毎朝お気に入りのショップの新着商品を巡回していました」

1年も探し続けるなんて、どこかで妥協してしまおうと思ったことはなかったのでしょうか。

草木さん:
「そういう時間がすごく楽しいですし、この部屋に住んでからインテリアのお気に入りも増えて、本当に良いと思ったものを買い揃えたくなりました。

妥協してしまうと、見るたびにちょっとがっかりするけれど、気に入ったものならば、見るたびに好きだなと思える。

そういう積み重ねが、幸福感につながる気がしています」

 

とはいえ、「思っていたのと違う!」という経験もあったけど……

家具のみならず、インテリア小物もけっこうネットで購入しているという草木さん。海外サイトだと、届かないとか写真と違うとか、失敗することはありませんか。

草木さん:
「波模様のローテーブルはインドのショップから買ったのですが、写真で見たときはもっと繊細な柄だったんです。ぜんぜん違うので一応聞いてみたら、ベテランの職人さんがいなくなっちゃって、新人ががんばって作りました、って(笑)。

まぁ、これはこれで味があっていいかなと」

私だったら、違うということにがっかりして、素朴な魅力に気づけないかもしれませんが、草木さんは、一見失敗に思えるようなことも、そのまま楽しんでいる様子。

草木さん:
「返品するのも面倒ですし、ありのまま愛することにしました(笑)」

好きなものには妥協しないけれど、少しくらい違っていても寛容に受け入れるおおらかさは、部屋の居心地の良さにも相通じるものがあると感じました。

次回、模様替えの楽しみ方など、すぐ真似できるインテリア術を教えていただきます。

(つづく)

 

【写真】メグミ


もくじ

 

草木 さち

IT系の会社に勤務する会社員。趣味でポスターを作るなど、デザイン活動も行う。パラレルキャリアとしてインテリアやデザインに関わる仕事を検討中。
Instagram: @sachi_living_

 


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