【月と太陽がくれたカレンダー】最終回:今日という季節に名前があること
旧暦って、どうしていまも使われているのでしょう。
身のまわりにある新暦のカレンダーで、月日も曜日もわかるのに。
きっとそこには、日々を過ごし、自分の人生を健やかに歩んでいくうえで、昔から大切にされてきた意味があるのだと思います。
今日は◯月△日
というとき、◯や△に入ってくるのが単なる数字だけでは少し味気ないものです。
実際、わたしたちは毎日の暮らしのなかで、おいしい、やわらかい、まぶしい、心地いい⋯⋯といった表情豊かな感覚とともに生きています。そのような豊かな感覚が、生活にうるおいやよろこびをもたらしてくれるのではないでしょうか。
そうだとしたら、味気ない数字だけでなく、月日を表わす言葉にも豊かな表情があるほうが、暮らしにうるおいやよろこびが満ちてくるのではないでしょうか。
もちろん数字にも大切な役割があります。たとえば9月7日といえば、いつのことかがはっきりわかります。新暦はやっぱり便利ですし、そのうえで旧暦のよさを再認識できたら、と。
旧暦を生活にちょっぴり取り入れてみるとどうなるのでしょう?
いま例にあげた9月7日を見てみますと、今年のこの日はちょうど二十四節気で、
白露
という季節がめぐってきます。
「白露」がはじまる9月7日から約5日間ほど、七十二候では、
草露白し
という季節になります。
(年によって、二十四節気や七十二候の日にちは多少前後します)
この「白」というのは、秋を表わす色とされます。また、草の上に浮かんだ露が光っている様子を「白」と言い表わす、感覚的な表現でもあります。
まだ残暑が尾を引きながらも、朝晩に涼しさが舞い込んで、そっと葉っぱに露を残していってくれる頃。
そんな情景が「白露」や「草露白し」という季節の名前になっています。
当たり前のことにも思われるかもしれませんが、秋や冬、春や夏という季節の名前も数字ではありません。四季を、季節を、わたしたちは名前で呼び慣れています。
ごくしぜんに春、夏、秋、冬と名前で呼ぶように、旧暦というのは、いまがどんな季節かを心に感じたくなったとき、二十四節気や七十二候というこまやかな季節の名前で呼んでみて、あらためて季節感を捉え直すことのできるこよみとも言えそうです。
9月7日が「白露」でもあり、「草露白し」でもあるというように。
ひょっとしたら旧暦は、今日という季節に出会い直せる暦なのかもしれません。
今日が今日であるというのは、やはりかけがえのないことではないでしょうか。
わたしが、いまここにあるということ。
あなたが、今日を暮らしていること。そしていま生きていること。
いのちとは時間と結びついているものだからこそ、今日という時間に、今日という季節に、名前があることがとても大切な意味を持つように思われます。
自分自身の内なるいのちの、かけがえない一日一日を過ごしていくための、ひとつの 徴 として。
ことに七十二候の季節の名前には、風や雨、虹や雪、鳥や草花など、さまざまな自然の情景から生まれたものが多々あります。
わたしたちのいのちが自然に包まれ、育まれていることを、七十二候のこよみを目にするたびに思い起こすこともできそうな気がします。
今日という季節のかけがえなさや、自然とともに生きる人間のいのちの大切さとともにあるこよみに、どうぞ気持ちが向いたとき、お手をのばしてみてください。
文/白井明大
詩人。1970年東京生まれ。2008年より、二十四節気七十二候に沿って季節の移ろいを感じる「歌こころカレンダー」を毎年制作。2012年、『日本の七十二候を楽しむ ─旧暦のある暮らし─』が静かな旧暦ブームを呼んで30万部超のベストセラーに。2016年、『生きようと生きるほうへ』で第25回丸山豊記念現代詩賞を受賞。『いまきみがきみであることを』『日本の憲法 最初の話』など、自然や生命や心の自由に関わる著書多数。
イラスト/shunshun
素描家。1978年高知生まれ、東京育ち。広島在住。心に響いた光景を、ブルーブラックのペン一本から生まれる線により、一つひとつ精魂を込めて描く。毎年自主制作している『二十四節気暦』カレンダーのファンは多い。著書に『椿ノ恋文画集』『一條線一片海』など。
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