【あのひとの子育て】warmerwarmer〈後編〉つい口にしてしまう「急いで」を、いったん飲み込んでみたら。
ライター 片田理恵
写真 神ノ川智早
夫婦として、仕事のパートナーとして、3歳の息子の父と母として、ともに歩む。warmerwarmer(ウォーマーウォーマー)の高橋一也さんとてるみさんに、おふたりの子育てについてお話しを伺っています。
お父さんのあふれる「行動力」とお母さんが好きな「手作り」は、家族の日々をどんなふうに彩っているのでしょうか。
一番よく行く公園は家から車で30分!?
毎日幼稚園への送迎を担当する父・一也さん。「思い立ったらすぐ実行!」というフットワークの軽さを生かして仕事でも全国を飛び回っているそうですが、その精神はもちろん子育てにおいても変わりません。
一也さん:
「息子と一番よく行くのは羽田空港のそばにある公園。家から車で30分くらいですね。すこし遠いですが、朝の方が息子とゆっくり遊べるので、登園前に行くこともあります。気に入っている理由ですか? 飛行機の離着陸が何度も間近で見られる、すぐ横に海があって船が走ってる、砂浜もある、そばを車が通らない。 オススメですよ!」
そしてもうひとつ、と教えてくれたのは「遊具がない」ことだと言います。遊具があると子どもが遊ぶのを眺めている時間が長くなってしまうように感じる。親子で会話を楽しみながら遊びを見つける時間が何より楽しい、と。
一也さん:
「飛行機がいくつ飛んでいるとか、あっちから船が来たとか、ずっとしゃべってますね。他愛ないことなんですけど、今どんなものを見て感じているかを一緒に味わうことが一番いい遊び方かなと思ってます」
おやつは「食べる」も「作る」も楽しむ
高橋家ではおやつの時間も遊びのひとつ。「これしか作れないんです」と笑うてるみさんが、クッキー作りのセットを出してみせてくれました。乗り物、動物、ハートなどさまざまな形の抜き型に、小麦粉、なたね油、メープルシロップ。いつもオーブン横に常備して、思い立ったらすぐ作れるようにしているそうです。
てるみさん:
「息子が生まれたばかりの頃、抽選に当たって、なかしましほさんの料理教室に行ったんです。その時に教えてもらったクッキーのレシピをずっと作り続けています。シンプルでおいしくて、家族みんな大好きな味。丸型クッキーに顔をつけるのが満月に見えるみたいで『お月さまクッキー』と呼んでます」
慣れた手つきで一生懸命生地をこねる吟侍くんはほっぺたがぷうっと丸く膨らんで、なんともかわいらしい様子でした。
てるみさん:
「集中すると『ほっぺをプー』は物心ついた頃からずっと、なんですよ(笑)」
子ども用のツイードのロングコートが欲しい!のに…
淡いグリーンにきれいなオレンジの裏地がついたツイード素材のコート。丈はちょっぴり長めで膝くらいまであります。オトナでもそのまま着たくなるような素敵なデザインですが、吟侍くんのもの。これもてるみさんのお手製と聞いて驚きました。
てるみさん:
「洋裁は以前から趣味なんです。シーズンごとに息子の洋服を4〜5枚、エプロンやバッグなんかの小物も作りますね。このコートはツイード素材でロング丈のものが欲しくて探したんです。でも子ども用ってなかなか売っていなくて。だから自分で作って、昨年のクリスマスプレゼントにしました」
前後編を通じて写真のなかで着用しているエプロンと紺のパンツもこの春に作ったもの。吟侍くんが「一番心がときめく大好きな食べ物」というイチゴがポケットにあしらわれています。
てるみさん:
「ここにポケットをつけるんだけど、この布とこの布だったらどっちがいい?とか、そういうふうに息子にも意見を聞きながら作ります。まだ一緒に作業をするのは無理だけど、自分の希望が反映されて出来上がっていくのはうれしいかなと思って」
幼稚園でもらった“紙もの”はスクラップブックへ
こんなアイデアも教えていただきました。こちらは吟ちゃん専用のスクラップブック。保育園、幼稚園でもらった“紙もの”や写真、メモ、描いてきた絵などはここにまとめて貼付けて保管しています。
「せっかく子どもが作ってきたものだけど、どうやってとっておこう?」という悩みは多くのお父さんお母さんが経験したことがあるはず。こんなに素敵に解消できるなんて、ぜひ真似したいですよね。
てるみさん:
「記念だし、かわいいし、捨てたくないなぁと思って始めたんです。そのままだと場所をとるけど、こうやってなんでも貼っちゃえば1冊にまとまって後から見てもかわいい。立体のものはつぶして平らにして貼ります。時系列ごとに、などの決まりは全然作らずに手当り次第にやるのも長続きするコツです」
「吟ちゃんは愉快だ」と教える
ご近所や家族ぐるみの友達との行き来が多いという高橋家。なんと、夕食は家族だけで食べる日のほうが少ないほどだとか(!)。そのせいもあってか、吟ちゃんは初対面の取材スタッフにも物怖じせず、いつも通りのマイペース。ニコニコとご機嫌で遊んでいます。
てるみさん:
「みんなに笑ってほしい、おもしろがらせたいという気持ちがあるみたい。ひょうきんなんですね。いろんな人と一緒にいるのが“普通”の感覚だから初めて会ったお友達ともすぐ仲良くなるし、『これはダメ』がないんです。その感覚をずっと持っていてほしいから、私たち親が気をつけているのはなんでも楽しそうにやるということ。お皿を洗うのも、笑顔で楽しそうにやってれば自分もやりたいって思うじゃないですか」
写真は外から帰って手洗いうがいをするふたり。いつも「吟ちゃんは愉快だ」と教えてます、というてるみさんまでこの楽しそうな表情!
急がなくていい、ゆっくりでいい
3人が並んで歩く後ろ姿を見ながら印象的だったことがあります。それは一也さんとてるみさんが一度も「急いで」と言わないこと。段差があってうまく三輪車が進まない時も、ふたりは自分でなんとかしようとする吟ちゃんをゆっくり見守ってすぐに手助けはしません。
てるみさん:
「ゆっくり大きくなればいいと思っています。勉強もゆっくり、チョコレートもゆっくり。自然に学びたいと思う時期はきっと来るし、野菜や肉や魚、いろんなものを食べられるようになってからお菓子を楽しむのでいいんじゃないかなって」
早朝から活動するのも、身の回りのあれこれを手作りするのも、家族の「ゆっくり」を大切にするため。それはとっても大切で、とびきり難しくて、でも子育てをするすべてのお父さんとお母さんにとって必要な思いなのではないかと思いました。
warmerwarmerという名前は「人の温もりを伝えたい」「人の心を温めたい」という気持ちから生まれたもの。一也さんとてるみさんにとって、それは仕事だけでなく子育てにも通じる根源的な願いなのかもしれません。
おふたりの子育て、いかがでしたか? 自分らしさや好きがたっぷりと詰まった日々の営みは、見ているこちらまで幸せな気持ちにしてくれる愛おしさにあふれていました。つい口にしてしまう「急いで」をいったん飲み込んで、我が子の歩みをゆっくり待ってみる。まずは今日1日、そんなふうに過ごすのもきっと素敵ですよ。
(wamerwamer編 おわり)
warmerwarmer
高橋一也・てるみ夫妻を中心として活動。日本全国の有機農業生産者らと連携しながら、固定種・在来種野菜の普及事業、有機農産物のプロモーションのプロデュース、有機JAS認定検査員など、オーガニック市場を構築するために邁進中。http://warmerwarmer.net
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things」「ナチュママ」「リンネル」「はるまち」「DOTPLACE」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。
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