【はたらきかたシリーズ】第1話:仕事も北欧流?イケア・ジャパンの人に会ってきた
編集スタッフ 長谷川
写真 鈴木静華
働くことは、人生で大きな時間を占めるだけでなく、暮らしのかたちを決めるもの。
自分が望むあり方を見つめるために、特集シリーズ『その「働きかた」が知りたい』では、さまざまな方の仕事や働き方をお聞きし、ヒントを受けとってきました。
イケアではたらくって、どんな感じだろう?
IKEA船橋(現在のIKEATokyo-Bay)は、今年でオープン10周年。
イケアのアイテムに暮らしの端々でお世話になっているクラシコムスタッフも多くいます。僕も洗い物のスポンジやキッチンクロス、トイレブラシ、お風呂のイス、テーブル、それから食器……と、気づいたら結構ありました。
イケアを訪れると、店舗ではスタッフさんがきびきびと働き、「感じが良いなぁ」と思うことがあります。ただ、おそろいの制服で働くスタッフさんは馴染みがあっても、イケアを運営する人たちのことは、そういえば知らずにいました。
そんな気持ちでホームページの採用情報を見てみると、こんなふうに書かれています。
「イケアで働くということは、あなたがあなたのままで働くということです。」
「イケアでは職場が自分たちの生活の一部であることをみんなが知っています。」
私たちクラシコムが考えている「暮らしも仕事、仕事も暮らし」とも近い気持ちなんだなぁと知り、どこかうれしくなりました。
そこで、実際に働いている方に詳しくお話を聞いてみようと、イケア・ジャパンのオフィスにおじゃますることになったのです。
今回ご登場いただくのは、イケア・ジャパン株式会社で広報部長として働く岩﨑有里子さん。
現在34歳で、ふたりの子どもを育てるお母さんでもあります。大学を卒業後、新入社員としてイケア・ジャパンで働きはじめ、二度の産休と復職をご経験なさっています。
第1話では、オフィスの様子や、岩﨑さんが働きはじめるまでのきっかけについて伺います。
10カ国以上の人々が集う「サービスオフィス」
オフィスでは静かな環境でパソコンに向かう社員さんの姿が。時折、デスクのそばで談笑したり、キッチンでコーヒーを楽しんだりする方もいらっしゃいました。
ここは店舗をサポートするという意味を込めて「サービスオフィス」と呼ばれ、ファイナンス、マーケティング、物流、広報、セールス、人事、カスタマーサポートなどの職に就く人が集っています。店舗も含めると、イケア・ジャパンには3000人近くの従業員がいるそう。
岩﨑有里子さん:
「スウェーデン、オランダ、イギリスなど、日本人以外のスタッフも多いです。ここだけでも10カ国ほどの人々がいるでしょうか。さまざまな国に展開していますから、母国で入社して転勤で日本へ来たり、こちらで結婚をしてそのまま働き続けたりする人もいますね」
社内保育所が、イケアで働くパパ・ママを助けている。
岩﨑さんは2013年に第一子を、2015年には第二子をご出産され、産休を経て、2016年3月に復職します。
ご主人やご両親のサポートにも支えられながら、岩﨑さんは上海やスウェーデンといった海外出張もこなすパワフルな一面も。よくある一日のスケジュールを聞いてみました。
岩﨑有里子さん:
「イケア・ジャパンはフレックスタイム制で、10時から16時がコアタイムになっています。
私はだいたい9時に出社していますね。7時45分くらいには保育園へ子どもを送り、8時過ぎには車でオフィスに着いて、9時から業務スタート。
お迎えがある時には16時45分頃には退社するのですが、週2回は主人にお迎えをお願いしているので、その時はちょっと長めに19時くらいまでは仕事をしています」
岩﨑さんがお住まいの地区は、保育園の入園希望者が多く、預け先がなかなか見つからないことも多いそう。岩﨑さんの復帰を助けてくれたのは、オフィスすぐそばに設けられた「Dagis(ダーギス)」と呼ぶ保育所だったといいます。
岩﨑有里子さん:
「オフィスのすぐ隣なので、具合が悪くなった時にサッと見に行けるのと、ミルクに切り替えていない時期の授乳は助かりました。Dagisを利用しながら保育園を探せたので、ここがなければ復職はもっと遅くなっていたはずです。
子どもにDagisでの話を聞くと、外で遊び、自然とたわむれる時間が多いようです。雨でもレインウェアを着て、外へ出かけるみたいです。
初代の園長がスウェーデン人だったこともあって、そのあたりはスウェーデン流といったところでしょうか。インターナショナルな従業員が多いので、子どもたちもさまざま。その触れ合いも嬉しいポイントかもしれません。
Dagisのときは、それこそ毎日でしたけれど、子どもを連れて出社することもあります。今では青と黄色のものを見ると『ママのかいしゃ』っていうんです(笑)」
イケアで働こう!そのきっかけは、1年間のスウェーデン留学。
▲オフィスにはキッチンスペースも。食事をとったりコーヒーを淹れたりと、スタッフの憩いの場。
そもそも、岩﨑さんがイケアを知り、働き始めたのは、スウェーデンへの留学が大きなきっかけとなっているそうです。
岩﨑有里子さん:
「私は新卒採用1期生でイケア・ジャパンに入社しました。まだ店舗もなかった頃ですが、私には馴染みのある会社でした。
幼い頃に習っていた英会話の先生がスウェーデン人だったんです。クリスマスやハロウィンといった文化に触れる機会もあって、もともと親しみがありました。
それから、高校2年生の時に1年間スウェーデンへ留学しました。せっかくの海外なので英語圏以外がいいなと考えた時に、両親も『安全な北欧なら……』とOKを出してくれたのは感謝しています。
留学してみると、イケアをよくオススメされたんですね。どの家庭に行ってもカタログがあり、ホストファミリーにも店舗へ連れて行ってもらい、私もすっかりイケアとスウェーデンが大好きになってから帰国しました(笑)。
大学では国際関係を専攻していたのですが、イケアが開発途上国のサポートをする活動を知りました。企業活動を通して社会貢献できる会社もあるんだなって漠然と思っていたところに、大好きなイケアが社員を募集していたので真っ先に申し込みました」
高校を卒業したら海外放浪?「あくせくしない」考え方。
岩﨑さんはスウェーデンでの留学体験から、その暮らしぶりにも共感したといいます。
岩﨑有里子さん:
「留学先はLidköping(リドショーピング)という、ベーネル湖の南のほとりにある、水がきれいな街でした。ムーミンがいそうな雰囲気ですね(笑)。
スウェーデン人は日本人に似ているといわれます。最初はシャイなのですが、一度仲良くなったらどこまでも仲がいいみたいなところもあって。まずは何より人がマッチしたのですが、暮らし方も豊かに感じました。
留学当時は高校生で、日本であれば受験勉強に励む人も多いのですが、スウェーデンでは大学へ進学するにも数年間の余裕を持つ人もいます。
たとえば、数年は海外を放浪して、何を勉強したいかを決めるのも珍しくありませんでした。だから、あくせくしていなくて。そんな考え方が新鮮で波長が合いました。
お世話になったホストファミリーはサマーハウスを持っていて、平日は街で、夏休みや週末は別荘で自然と戯れてすごす、という暮らしにも魅せられましたね」
会話の端々に「イケア愛」を感じる岩﨑さんのお話は、まだまだ続きます。
イケアは現在、世界28カ国で328店舗を運営しています。国際色が豊かな環境でありながら、そこで働く人々はある共通の「考え方」をとても大切にしているそう。
明日公開の第2話では、イケアが大切にする「仕事」への取り組み方を伺います。
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