【ドジの哲学】どうして同じハプニングばかりが何度も…
文筆家 大平一枝
ドジのレポート その13
履き間違い、掛け間違い体験
二年前、宝塚歌劇を見る機会があった。初めて行く東京宝塚劇場は赤絨毯が敷かれ、シャンデリアや階段のデザインもゴージャスで胸がときめいた。
おりしも千秋楽。そんな特別な日の素敵な観劇に、何を着ていけばいいやら弱りはてた。ドレスなど持っていないので、ブラウスとパンツにした。冬のとても寒い日だった。
パンツの下にレギンスを履いた。
いざ出かけてみると、どうもレギンスが緩い。洗って伸びてしまったのだろうかと思いながら劇場に到着。席に座ると、パンツの裾からレギンスが見える。こんなに長かっただろうかとますます不安になり、化粧室でよくよく確かめたら、息子のヒートテックのタイツだった。
関西人の夫は
「いくらなんでも、息子のパッチを間違えて履くおかんはおらんやろ」と爆笑。
パッチとは、関西弁でももひきのことだ。
こういうことはたびたびで、この間も、かけていた眼鏡がぼやけるので、ひと晩でずいぶん視力が下がったなあと思ったら、息子の眼鏡だった。フレームが黒で似ているのと、洗面所の私の定位置にあったので疑いもせず持って行ってしまったのだ。
すぐ気づきそうなものだが、「私が間違っているはずがない」と思い込んでいるのでたちが悪い。
息子だけではない。ずいぶん前に、茶道の稽古の体験に行き、「足袋だけお持ちください」と言われ、持っていったら、娘の七五三で使った足袋だった。履き慣れていないのでしばらく気づかず、教室の外でうんうん言いながら、小さな足袋に足を突っ込もうとしばらく格闘してからようやく気づいた。
間違いも怖いが、間違っているはずがないという思い込みはもっと怖い。さらに、他人を巻き込んでないだけマシという自省のなさもよくない。息子はあのタイツを今も履いているのだろうか──。
文筆家 大平一枝
長野県生まれ。編集プロダクションを経て、1995年ライターとして独立。大量生産・大量消費の社会からこぼれ落ちるもの・こと・価値観をテーマに、女性誌、書籍を中心に各紙に執筆。『天然生活』『暮しの手帖別冊 暮らしのヒント集』等。近著に『東京の台所』(平凡社)、『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)『信州おばあちゃんのおいしいお茶うけ』(誠文堂新光社)などがある。
プライベートでは長男(21歳)と長女(17歳)の、ふたりの子を持つ母。
▼大平さんの週末エッセイvol.1
「新米母は各駅停車で、だんだん本物の母になっていく。」
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