【ドジの哲学】どうして同じハプニングばかりが何度も…

文筆家 大平一枝

170217_掛け間違い


ドジのレポート その13
履き間違い、掛け間違い体験


 
 二年前、宝塚歌劇を見る機会があった。初めて行く東京宝塚劇場は赤絨毯が敷かれ、シャンデリアや階段のデザインもゴージャスで胸がときめいた。
 おりしも千秋楽。そんな特別な日の素敵な観劇に、何を着ていけばいいやら弱りはてた。ドレスなど持っていないので、ブラウスとパンツにした。冬のとても寒い日だった。
 パンツの下にレギンスを履いた。

 いざ出かけてみると、どうもレギンスが緩い。洗って伸びてしまったのだろうかと思いながら劇場に到着。席に座ると、パンツの裾からレギンスが見える。こんなに長かっただろうかとますます不安になり、化粧室でよくよく確かめたら、息子のヒートテックのタイツだった。
 関西人の夫は
「いくらなんでも、息子のパッチを間違えて履くおかんはおらんやろ」と爆笑。
 パッチとは、関西弁でももひきのことだ。
 
 こういうことはたびたびで、この間も、かけていた眼鏡がぼやけるので、ひと晩でずいぶん視力が下がったなあと思ったら、息子の眼鏡だった。フレームが黒で似ているのと、洗面所の私の定位置にあったので疑いもせず持って行ってしまったのだ。
 すぐ気づきそうなものだが、「私が間違っているはずがない」と思い込んでいるのでたちが悪い。

 息子だけではない。ずいぶん前に、茶道の稽古の体験に行き、「足袋だけお持ちください」と言われ、持っていったら、娘の七五三で使った足袋だった。履き慣れていないのでしばらく気づかず、教室の外でうんうん言いながら、小さな足袋に足を突っ込もうとしばらく格闘してからようやく気づいた。

 間違いも怖いが、間違っているはずがないという思い込みはもっと怖い。さらに、他人を巻き込んでないだけマシという自省のなさもよくない。息子はあのタイツを今も履いているのだろうか──。

 
profile_futura_lineblack
odaira_profile_160616

文筆家 大平一枝

長野県生まれ。編集プロダクションを経て、1995年ライターとして独立。大量生産・大量消費の社会からこぼれ落ちるもの・こと・価値観をテーマに、女性誌、書籍を中心に各紙に執筆。『天然生活』『暮しの手帖別冊 暮らしのヒント集』等。近著に『東京の台所』(平凡社)、『日々の散歩で見つかる山もりのしあわせ』(交通新聞社)『信州おばあちゃんのおいしいお茶うけ』(誠文堂新光社)などがある。
プライベートでは長男(21歳)と長女(17歳)の、ふたりの子を持つ母。

▼大平さんの週末エッセイvol.1
「新米母は各駅停車で、だんだん本物の母になっていく。」

 


感想を送る

本日の編集部recommends!

春夏のファッションアイテム一覧はこちら!
今から初夏に向けて楽しめる新作アイテムが入荷中です♩

今から頼れるUV対策アイテム
人気のリネンハットや、肌にやさしいUVミルクなどが入荷中!連休のお出かけにもおすすめですよ。

【数量限定】hopeと名付けた真っ白なブラウス
ERIKO YAMAGUCHIと当店がコラボしたブラウス。ご好評につき、Mサイズのみとなりました。

【動画】わたしの朝習慣
台所仕事が目覚まし代わりに。朝のうちに、1日分の食事の下ごしらえを済ませておくこと

COLUMNカテゴリの最新一覧

公式SNS
  • 読みものの画像
  • 最新記事の画像
  • 特集一覧の画像
  • コラム一覧の画像
  • お買いものの画像
  • 新入荷・再入荷の画像
  • ギフトの画像
  • 在庫限りの画像
  • 送料無料の画像
  • 横ラインの画像
  • ファッションの画像
  • ファッション小物の画像
  • インテリアの画像
  • 食器・カトラリーの画像
  • キッチンの画像
  • 生活日用品の画像
  • かご・収納の画像
  • コスメの画像
  • ステーショナリーの画像
  • キッズの画像
  • その他の画像
  • お問合せの画像
  • 配送料金の画像