【インテリア特集】第2話:北欧の色づかいを取り入れて、居心地ばつぐんのリビングルーム
ライター 嶌陽子
「削ぎ落とした」白い空間だから、カラフルな雑貨が映える
インテリア連載vol.11は、インテリアデザイナーの小林恭(たかし)さん・マナさん夫妻のご自宅です。
昨年秋に、広大な公園に面した土地に事務所兼自宅を新築しました。
『マリメッコ』の店舗設計など、北欧ブランドとの仕事を通じ、北欧のライフスタイルにも影響を受けてきたという2人。
自然とゆるやかに繋がった住まいには、「与えられた環境・条件を最大限に生かして、快適に暮らす」という知恵が詰まっていました。
第2回は、「素敵すぎる!」と思わず感嘆の声が出たリビングルームをお届けします。
(※登場するアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです)
第2話
リビングルーム
とことん「見せる」にこだわった、壁一面のガラス棚
2階のドアを開けると、目に飛び込んできたのがカラフルなリビングルーム。
南側は隣の家に面しているので、思い切ってほとんどを壁にし、採光のために高い位置に窓をつけました。
おかげで、明るい部屋から、北側の公園の借景を楽しめます。
そして、何と言っても目を奪われたのは、壁一面のガラス棚!
マナさん:
「2人で少しずつ集めてきたアート作品があったのですが、ずっと猫を飼っていたので、オープン棚には飾れませんでした。
新しい家を建てる時、このガラス棚はぜひ作ろうと思ったんです。
これなら、扉を閉めておけば、猫が壊してしまう心配もないので、こころおきなく好きなものを飾れます」
壁一面が、まるでギャラリーのような雰囲気。ガラスを通すことで、飾ってある作品の存在感も、さらに強まります。
数あるアートピースの中から、一部のお気に入りを紹介してもらいました。
フィンランド在住のデザイナー・陶芸家、石本藤雄さんの作品。
イタリアの陶芸家、グイド・デ・ザンの作品。
スウェーデン在住、90歳の現役女性陶芸家、シグネ・ペーション・メリン作。
アルゼンチンのファッションブランド「Tramando」のオブジェ。
今、飾ってあるものは夫妻のコレクションのほんの一部。
季節ごとにディスプレイを変えていくつもりだそうです。
恭さん:
「陶器やオブジェだけでなく、テキスタイルを飾ってもいいかな、と思っています」
生活感のあるものは、扉付き収納にしまいこむ
ガラス棚のある壁の反対側には、座り心地の良さそうな1人掛け用ソファが2脚。
その向こうには、クリーム色の扉付き収納がありました。これも、もちろん小林さん夫妻の設計です。
普段はぴたりと閉じられている扉。
戸棚の左にある水色のはしごは、ゲストルームとして使う予定の屋根裏部屋へと続く。
開けると、なんと水道付きのミニキッチンがありました!
ボトルやグラス、食器類がきれいに収納されています。
その下の、穴が空いている扉の中には、ゴミ箱が入っています。動線もきちんと考えられたつくりです。
本格的なキッチンは1階にあるため、ここは、夜に2人でお酒を楽しんだりするためのミニバーのような存在です。
恭さん・マナさん:
「ヨーロッパで、こういう収納式キッチンを見て、憧れていたんです。
それに、食器類などのごちゃごちゃしたものは、使わないときは見せずにしまって、すっきりさせたいですから」
ミニキッチン以外の部分は、まだ何も入れていない棚も。これから考えながら、主に生活感が出るものをしまい込む予定だそうです。
ガラス棚では大胆に「見せる」。扉付き棚にはすっきり「しまう」。
このメリハリが、美しい空間づくりの秘訣なのかもしれません。
白くてシンプルな空間だから、色が多くてもうるさくない
南側の採光窓には外側にブラインドをつけ、日差しが入りすぎて暑くなるのを防ぐ工夫も。
小林さん夫妻のリビングは、ビビッドな色のものであふれています。
それでも、決してごちゃごちゃとうるさく見えないのは、なぜなのでしょう?
恭さん:
「きっと、空間自体をものすごくシンプルにしたからだと思います。床もシンプルなヘリンボーンで、真っ白な壁の割合も多い。
そういった、空間とのバランスは大切にしました。
南側をほとんど壁にしたのは、隣の家と近かったこともあるけれど、白い壁を多く取りたかったことも大きな理由です。
後から絵を飾りたくなるかもしれない、という考えもあって。
もし、この部分に小さな窓をいくつか作るなどしていたら、バランスが崩れて、北側の公園の景色も今ほど映えないし、雑貨の色もうるさく感じられたかもしれないですね」
マナさん:
「マリメッコの店舗デザインなどをやらせてもらうようになってから、『削ぎ落とす』ということをよく考えるようになりました。
マリメッコのような大胆でカラフルな柄を、どうやって美しく見せるか。それには、空間をどんどんシンプルにしていく必要がある。
そういうことを、ものすごく勉強したんです。
あと、このガラス棚も、最初は『一部に扉付き収納をつけようか』という話もしていたんです。
でも、それだとやっぱり迫力が出ないから、思い切って全面ガラス棚にした。そういうメリハリも意識するようになりました」
小林さん夫妻が、これまでの仕事を通じて培ってきた考え方やノウハウが、この新しい住まいに集約されているようです。
リビングの入り口横にあるキャビネットも夫妻のデザイン。ここにもオブジェや器が並ぶ。
お互いの趣味のものは、「自分専用」の空間に
まさに夫婦が二人三脚で設計した、新しい事務所兼自宅。
マナさん:
「『この部分は元々どっちのアイデアだったか』っていうのは、よく覚えていなくて。
『最初に言い出したのは私だ』『いや、僕だ』とか、時々言い合いになったり(笑)」
マナさんがそう話すほど、2人の空間やデザイン、暮らしに対する考えは共通しているようです。
それでも、お互いに好きなものや、趣味はもちろん少しずつ違います。
そんな話から、リビングと同じ2階にある、恭さん専用の部屋も見せてもらいました。
壁一面の棚には、レコードがぎっしり!
音楽への造詣が深く、本業のかたわら、DJ活動もされている恭さん。
学生時代から集めているレコードの数は約8000枚。その他、ターンテーブルやCD、本など、恭さんの趣味が詰まった空間です。
マナさんの趣味のものが置かれている専用の部屋も別にあるそう。
ただ、残念ながら、そちらはまだ引っ越し後の片付けが完了していないとのことで、見せていただくのはまたの機会となりました。
マナさん:
「前に住んでいた家では、このレコードが全部、リビングの棚に並んでいたこともあったんです。
そうすると、たまに夫婦喧嘩をした時なんか、リビングにいるだけで夫の趣味のものが目に入るので、カーッとなっちゃう(笑)。
だから、お互いの趣味のものは、それぞれの専用部屋に置いて、リビングには、夫婦ともにOKを出したものしか置かないというルールを作りました」
確かに、パートナーと暮らしている場合、リビングという共有スペースに、どちらか一方の趣味ばかりが反映されていると、2人が同等につくろげないかもしれません。
お互いの専用部屋を持てない場合でも、それぞれの趣味のものは、どちらかに偏りすぎないように収納を工夫する。
そうやってバランスのよい雰囲気を作ることが、居心地のよいリビングにつながるのかも、とお話を聞きながら感じました。
日の光が差し込む南側に、愛猫マロンのくつろぎスペースをきちんと確保。
ギャラリーのような整然とした美しさと、ゆったりくつろげる雰囲気を兼ね備えたリビングルームをお届けしました。
次回は、気になる小林さん夫妻の布使いについて、詳しく見ていきます。
どうぞお楽しみに!
【写真】木村文平
もくじ
小林恭・マナ
設計事務所イマを主宰。恭さん、マナさんともに前職を1997年に退社後、建築、デザイン、アートの勉強のため半年間のヨーロッパ旅行へ。1998年に帰国後、現在の事務所を設立。物販&飲食店のデザイン、プロダクトデザイン、個人住宅など、幅広く空間デザインを手がけるほか、鹿児島睦さんなど展覧会の空間デザインや、インスタレーションの分野でも活躍。http://www.ima-ima.com/
ライター 嶌陽子(しま ようこ)
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『クロワッサン』(マガジンハウス)、『天然生活』(地球丸)など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
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