【インテリア特集】第3話:布1枚でかんたん模様替え?テキスタイルの取り入れ方
ライター 嶌陽子
ただ壁にかけるだけでも、楽しめる布
インテリア連載vol.11は、インテリアデザイナー、小林恭(たかし)さん・マナさん夫妻のご自宅です。
昨年秋に、都内の広大な公園に面した土地に事務所兼自宅を新築しました。
『マリメッコ』の店舗設計など、北欧ブランドとの仕事を通じ、北欧のライフスタイルにも影響を受けてきたという2人。
自然とゆるやかに繋がった住まいには、「与えられた環境・条件を最大限に生かして、快適に暮らす」という知恵が詰まっていました。
第3回は、小林さん夫妻の布のコレクションをはじめ、気軽に楽しめる、暮らしへの取り入れ方を紹介します。
(※登場するアイテムは、全て私物です。過去に購入したものを紹介しているので、現在手に入らないものもございます。どうぞご理解、ご了承いただけると幸いです)
第3話
テキスタイルの活用術
布テープで留めるだけで、簡単タペストリーに
2階のリビングルームに入るドアの横に、デッドスペースをうまく活用した、布類の収納棚がありました。
引き出して開ける仕組みになっています。
ここには、小林さん夫妻が買い集めてきたマリメッコの布の他、ブランケットやベッドカバーなどを収納しています。
少しずつ集めてきた布。未使用のものも多い。
マナさん:
「もちろん、これで何かを作ってもいいけれど、ただ飾るだけでも楽しいですよね」
恭さん:
「マリメッコの布は、それ自体がアートのようなので、絵になるんですよ」
そう言いながら、2人で1枚の布を取り出し、協力して屋根裏の手すりにかけ始めました。
フィンランド在住のデザイナー・浦佐和子さんデザインによるマリメッコの布。
すると、その一角の雰囲気ががらりと変化!
あっという間に、まるで清流が流れているような、美しい風景が生まれました。
恭さんとマナさんも「わあ、きれいだね!」「ここにすごく合うんじゃない!?」と興奮気味。
マナさん:
「布によって空間の雰囲気が一変するというのは、これまで何度も実感してきたことです。」
布は上の手すり部分に、布テープで留めただけ。いつでも取り替えられる、気軽な模様替えのアイデアです!
もちろん、布はテーブルクロスとしても大活躍。
1階のウッドデッキに出したテーブルに布をかけてみる2人。
こちらは、石本藤雄さんデザインのマリメッコの布。タイトルは「前夜祭」。
春や初夏の食卓にぴったりです。
季節やシチュエーションによってテーブルクロスを変えるだけで、いつもの食卓も雰囲気が変わって、特別な気分になれそうですね。
マナさん:
「布を買う時は、具体的に『これに使おう』と思って買うわけではなく、柄や色に惹かれて、ということがほとんどです。
取っておけば、こんな風に手軽にインテリアの雰囲気を変えられるし、そのうち、ぴったりの用途が見つかるのも楽しいですよね」
柄ものも、大胆に組み合わせて
リビングには、マリメッコの布を使ったクッションカバーがずらり。
それぞれに個性的な柄ですが、白地だったり、似たような緑がちょっとずつ入っていたりと、ゆるやかな共通点があるので、バラバラな印象には見えません。
マナさんが膝にかけているのは、アンティークのマリメッコ生地で作られたパッチワークキルト。
ヘルシンキのアンティーク店「vanhaa ja kaunista」のオーナーによる手作り。
大胆な柄なのに、不思議とお互いになじむのが、マリメッコの布の魅力。
膝掛けにしてもよし、ソファや床に敷いてもよし。
こんなキルトが部屋に1枚あるだけで、ぱっと明るい雰囲気になりそうです。
ビビッドな色も、組み合わせて楽しむ
他にも、小林さん宅の布使いを見せてもらいました。
気になっていたのが、リビングで目を引いた、カラフルな色の正方形クッションの数々。
これは、2年前、『Casa Brutus』のムックの企画で生まれたものだそうです。
恭さん:
「『ミナ ペルホネン』のオリジナルファブリック<dop>を使い、自由に組み合わせて使える座布団のようなクッションを作りました」
素材はモールスキンで、柔らかな肌触りです。
残念ながら販売はされていません。
小林さん夫妻も、たくさん置いて、自由につないだり積み上げたりしながら、ソファ代わりに使っています。
恭さん:
「色の種類は多いんですが、基本的なトーンが共通しているので違和感がない。好きなように組み合わせられます」
実はこの布地、表地と裏地が異なる色。使ううちに、表の生地がすり減ると、裏地の色が表れて、また違った表情になるのだそう。
中に硬めのウレタンが入っていて、座り心地もいい。
長く使うのが楽しみなファブリックです。
さらに、部屋の隅にも気になるものを発見。
鮮やかな色と丸い形が目を引くのは、オーディオスピーカー。
デンマークのオーディオ製品メーカー「バング&オルフセン」とテキスタイルデザイナーの鈴木マサルさんがコラボレーションしたもの。
このスピーカーカバーは数種類あって、着せ替えができるのだそう! ニット素材でできているせいか、温かみも感じられます。
鮮やかな色合いの布を多用している小林さんのインテリア。
でも、上質で心地よい素材を選んでいること、トーンをゆるやかに揃えていることなどにより、楽しくも落ち着きのある雰囲気が作られていました。
猪熊弦一郎デザインの布。「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」で購入。
小林恭さん・マナさん夫妻の、さまざまな布使いをお届けしました。
次回は、いよいよ最終回。
どんな細部にも妥協しない、2人のデザインへのポリシーが貫かれた、バスルームやランドリールームなどの水回りをお届けします。
お楽しみに!
【写真】木村文平
もくじ
小林恭・マナ
設計事務所イマを主宰。恭さん、マナさんともに前職を1997年に退社後、建築、デザイン、アートの勉強のため半年間のヨーロッパ旅行へ。1998年に帰国後、現在の事務所を設立。物販&飲食店のデザイン、プロダクトデザイン、個人住宅など、幅広く空間デザインを手がけるほか、鹿児島睦さんなど展覧会の空間デザインや、インスタレーションの分野でも活躍。http://www.ima-ima.com/
ライター 嶌陽子(しま ようこ)
編集者、ライター。大学卒業後、フリーランスでの映像翻訳や国際NGO職員を経た後、2007年から出版社での編集業務に携わる。2013年からフリーランスで活動を始め、現在は暮らしまわりの記事や人物インタビューなどを手がける。執筆媒体は『クロワッサン』(マガジンハウス)、『天然生活』(地球丸)など。プライベートでは1児の母として奮闘中。
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