【店長コラム】ご質問にこたえます。「文章を書くときに気をつけていることを教えてください」

店長 佐藤

(先月開催した10周年記念の交流イベント。トークセッションでのひとコマです)

イベントで網羅しきれなかったご質問に答えてみたいと思います。

先月開催した開店10周年記念交流イベントでは、トークセッションを、事前にお客さまからお寄せいただいたご質問に答えるかたちで進めさせてもらいました。

たくさんのご質問をいただいていたのですが、時間の関係もあって、すべてにお答えすることができず……。

モデレーターをつとめたスタッフ筒井も、わたしも、少しばかり心残りがありました。

そんなタイミングでスタッフが「店長コラムで時折答えていったらどうですか?」と提案してくれたんですね。

「それ、いいかも!」となり、早速こうして書いてみています。

 


「文章を書くときに気をつけていることを教えてください」


日頃、こうした読みものだけでなく商品ページの制作やSNSでの発信などもしている私たちは、全体の仕事量のなかで「文章を書く」作業がかなりの割合を占めています。

とは言え、もともと文章を書く仕事に専門的に携わっていたスタッフはごくごく僅か。クラシコムに入社してから、ひとつひとつ学んでいくケースが殆どです。

そんな背景もあって、時おり失敗もあり読者の方からご指摘いただくこともあったりします。(皆で真摯に受け止め、反省することも多々です)

 

願わくば、誰かの心を動かす「おもしろい」ものを書きたい!

わたしも、スタッフひとりひとりも、気持ちとしてはいつもこう願っています。

でも「おもしろい」文章を書こう、「おもしろい」記事をつくろうと思いすぎることには、一方でリスクもあると感じることがあります。

おもしろいものを書こうとするあまり、自分たちのエゴに走ってしまったり、本質的な部分を見失って本筋からズレたところにやたらとこだわり始めてしまったり……。

それに「最高におもしろい」ものを書くというのは、当たり前ですが最高にハードルが高いです。

それを日々日々・何年も続けていくこと、サスティナブルであることに難が生じる可能性もあります。

そこで、まずは私たち自身が「もう書きたくない」と自分で自分の首を締めずに済み、ある一定のクオリティを保って書き続けられるように、クラシコムでは「おもしろい」とは?をこんなふうに定義しています。

 

「おもしろい」とは「わかる」こと。

クラシコムでは「おもしろさのために、もっとエッジを立てろ!」みたいなディレクションは行われていないほうだと思います。

それは私たちが共通して大事にしている定義が「おもしろい」とは「わかる」というものだから。

誤解を恐れずに言えば「わかればよし」ということになります。

さらにその「わかる」を3つのレイヤーに分解して考えています。

この3つの「わかる」をわたしも含めそれぞれのスタッフが意識して「文章を書く」仕事にも向き合っているので、以下に紹介してみますね。

 

1.  理解(意味がわかる。伝えたいことがわかる)

ひとつめは「理解」というレイヤーです。読んでいることの意味が「理解できる」という意味での「わかる」。

この「わかる」をクラシコムでは最低限のクオリティとして要求することが多いです。読み終わったあとで「なにが言いたかったんだか、さっぱりわからん」ということにならないように。

ここさえまずはクリアすれば70点!とし、皆まずは「言っていることの意味がわかる」文章を書くところから目指します。

そのためには、どんなに小さなコラムを書くときでもボリューム多めの特集を書くときでも、文章を書き始める前に必ずしなければいけないことがあります。

それが「伝えたいこと(主テーマ)」の設定になります。

A:この一本の読みものを通じて、書き手として一番読者に伝えたいメッセージはなんだろうか?

この設定にもっとも時間を使うようにしているかもしれません。

さらにはこの設定ができたら、書こうとしているエピソードを幾つかのブロックに分け、それぞれのブロックで取り上げようとしている話題が、すべてAの伝えたいメッセージを裏付ける、ないしは支えるものであるかを重点的にチェックします。

そしてまとまった文章の最後、結論(まとめ)まで来たときに、もう一度、Aの伝えたいメッセージに思考が返るかを最終チェックするという段取りです。

この一連のプロセスに沿って文章を書き上げることで、「理解できる」というレイヤーの「わかる」は自然とクリアできるような仕組みをつくっています。

よい文章を書くというより、「テーマの設定」と、それを支えるための「構成」で解決しているといってもいいかもしれないです。

 

2. 共感(「わかる〜」と共感できる)

ふたつめのレイヤーは「共感」という意味での「わかる」です。

読んで思わず「うわー、めっちゃ分かるわー」と共感してしまう文章ってありますよね!?

私たちも出来ることならば「共感」という「わかる」を埋め込みたいと願っているので、「わたし」を主語にして個人の悩みや体験などをあえて文章に含めることも多々あります。

「理解」できるの「わかる」の次に、「共感」できるの「わかる」も加味できたら。もう一歩濃い「おもしろい」に近づけるかもしれないと考えています。

 

3. 動機(読み終わった人に動機が生まれる)

3つめのレイヤーは「動機」です。

読み終わったあと、読者の方の中に、では自分はこうしてみよう、とかこうしたらいいのかもしれないという「動機」が生まれるという意味での「わかる」になります。

読んだことに基づいてどうしたらいいかが「わかる」と表現してもいいかもしれません。

このためには「読後感」の設定をすることを大切にしています。

読み終わった人に、どんな感情体験を味わってもらえたら書き手としてうれしいのか?

これをとことん考えます。

たとえば、梅酒づくりのためのレシピ記事をつくるとしても、読み終わったあと「今年こそ、梅酒つけてみよう!」というまっすぐな動機が生まれる人もいれば「わたしは梅酒つける余裕ないけれど、わたしはわたしでいいや!」と自身を肯定する人もいたらそれもまたもっと良いかもしれない。

同じひとつの記事を読んだとしても、大きくふた手にわかれる動機(読後感)が出来る限りどちらも前向きなものになることを目指して、ひとつひとつの文章を推敲していきます。

書いてあることの意味が理解できる。
共感できる。
前向きな動機が生まれる。

この3つのレイヤーを重ねられれば重ねられるほどに、クラシコムでは「わかる」がどんどん濃くなっていくから「おもしろさ」も濃くなっていくとスタッフに伝えるようにしています。

 

文章を「書き続ける」ために。

正直に言って、自分たちが書いているものは面白いんだろうか?と不安になることは、それはもうしょっちゅう!あります。

でも、「もっとよくしよう」という思いを抱えながら「書き続ける」。自分たちのやっていることに自分たちで飽きてしまわずに「書き続ける」。

これ自体にも大きなパワーが必要だと日々実感しています。

そんなわけで、「おもしろい」とは「わかる」こととシンプルに定義して、とにかくどこを見ていれば大丈夫なのか?不安になりそうになったらどこを見たらいいのか?を明確に共有することで、できるだけそれぞれが安心して書き続けられるようにと思っています。

私たちに限らず、もっと言えば仕事に限らず、文章を書くシーンて人生のなかに本当にたくさんあると思います。

文章を書くことに関わる近くや遠くの誰かにとって、今日ご紹介した内容が1ミリでも役に立つものとなればうれしいです。

 

 


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