【元気の秘訣は?】後編:専業主婦を20年つづけて。「しなくてはならないこと」を「楽しみ」に変えるチカラ

編集スタッフ 齋藤

いつも健やかで元気な人は、自分が元気で居続けるための暮らし方やツボを心得ている人なのかもしれません。

前編に引き続き「元気の秘訣」についてお話をうかがったのは、料理家の有元葉子(ありもと・ようこ)さん。

「決まりごとをあまりつくらず、好きだと信じられる方を選ぶ」というシンプルな考え方が、有元さんの元気につながっているようでした。

でも好きなことというけれど、仕事に家庭など、しなくてはならないことも多いもの。そうした日常のあれこれと、有元さんはどう向き合っているのでしょうか。

そんな質問をしてみたら、意外や意外、今では仕事にまでなっている料理こそが、元は「しなくてはならないものだった」といいます。

 

専業主婦の有元さんが、料理好きになれた理由

有元さん:
「仕事でも家庭でも、しなくてはならないことは山ほどあると思います。でも、だからってイヤイヤやってしまったら、せっかくの時間も労力ももったいないでしょう。

専業主婦になった私にとって『料理』はしなくてはならないものでした。それに私は『ご飯は楽しくおいしく食べたい』という気持ちが強かったんです。

だから毎日どうやったら楽しくできるか考えて、工夫していきました。それがだんだん面白くなって、仕事にまでなってしまったんです」

▲玉川堂のティーポットも、有元さんの「こんなの欲しい」という想いから生まれたもの

有元さん:
しなくてはならないことに直面したら、楽しめる方法を探してみるんです。そうするとしなくてはならないことが、したいことに変わる。どんどん楽しくなってくる。

例えば私の場合は、料理を作る過程を美しいと感じられたら、楽しむことができたんです。だからステンレスボウルのラバーゼなど、私なりに使いやすいと思う調理道具を考案しました。

調理中も整った状態にしていると、見ていて楽しくて。そして楽しく作れたものは、出来上がったときにおいしいと思うんです。

私はおいしくつくるためには、下ごしらえが大切だと考えています。だからつくる過程を楽しく感じられれば、結果おいしくできるんです」

 

望みは小さくていい。叶えることが、健やかさにつながる

例えば調理道具をお気に入りのものにすること、気になっていたシンクの汚れを拭きあげること、そしてチャレンジしてみたいレシピを作ってみること。

そうやって自分が「こうしたい」と思ったことを、毎日少しずつ叶えていく。それは一歩一歩は小さなものかもしれませんが、日々「自分の望みを叶えている」とも呼べるかもしれません。

そんな前向きなパワーもまた、有元さんの元気の秘訣のひとつだといいます。

有元さん:
「毎日の引っかかりを少しずつ解決したり、楽しむために工夫をしたり、それもまた私の健やかさにつながっていると思います。

引っかかったまま通りすぎていくことが、私にはできないんです。切れの悪い包丁を使うのと一緒で、研がないと、ずっとモヤモヤを抱えていなくてはならなくなる。

切り離されて考えられがちだけれど、心も体もイコールと言っていいくらい、つながっているものだと私は思っています。

なので、自分の気持ちを大切にすることが、体にも良いことだと思うんです」

 

それって必要?思い込みを捨てたら、本当はしなくてもいいかも

しなくてはならないことは、自分なりの楽しみを見出せるように工夫をしてみる。とはいえ、そればかりが正解だとも決めつけていないそうです。

有元さん:
「自分がしなくてはならないと思い込んでいるだけかもしれないし、世の中の習慣や多くの人がしているだけで、私には必要ないものかもしれない。

だからまずは本当にしなくてはならないのか、考えた方がいいかなと思っています。

そして考えた結果どうしてもしなくてはならないのであれば、そこから楽しめるように工夫してみるんです」

 

自分もまわりも大切にするために

有元さん:
「まわりの人の望みももちろん叶えてあげたいけれど、まず自分を大切にしないと、人を大切にできないと思うんです。

だから私の場合は、誰かに言われたからではなくて、本当は自分がどう感じているのか、自身に問いかけてみるようにしています。

無理はできるだけしない方がいいですから」

つい最近まで元気のためには、早寝早起き、あれを食べた方が良いなんていう、「決まりごと」のようなものが必要なのかもと思っていました。

けれどよくよく考えてみれば、早起きは単純に気持ちが良い。(もちろんずっと寝ていたい日もありますが)

頭で考えたことで自分をがんじがらめにするのではなく、ときには「健やかであろう」とする自分が本来持っているチカラを、手放しで信じてみてもいいのかもしれません。

日々が楽しければ、きっとそれが元気につながります。

時間に追われてしまうこともあるけれど、わたしもときには自分に問いかけたい。

何をしている時、自分は元気でいられるかなって。

(おわり)

【写真】木村文平


もくじ

有元葉子(ありもと・ようこ)

3人の娘を育てた専業主婦時代に、家族のために作る料理が評判になり料理家の道へ。素材を活かしたおいしい料理だけではなく、洗練された暮らし方や生き方が支持を集めている。https://www.arimotoyoko.com/


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