【元気の秘訣は?】前編:あえて習慣はつくらない。有元葉子さんの健やかさの秘密
編集スタッフ 齋藤
わたしが一番元気!と思っていたけれど……
数年前の春、親戚一同と山菜採りにいきました。年上のみんなにひとり混じったものだから、山に入る前まではわたしが一番元気がありあまっているはず!と、自信をいだいていたのです。
でも、真っ先に腰をおろしたのが誰かといえば、わたしでした。
木陰で一休みしたわたしの視線の先には、ひょいひょい山の急な斜面を動きまわる、もうすぐ70歳になろうという叔母の背中が。
こんなはずではなかったのに……。理由を知りたくて、そういえばと記憶をたどってみたら、思い当たりました。
叔母は普段から元気ですが、山育ちゆえなのか山に入ると表情がきらきらと輝いて、さらにパワーアップするのです。水を得た魚、いやいや山を得た叔母は、もう誰にも止められない。
しかも「また!?」と思うほど、たびたび山に行く彼女。どうやら山に行くことで、元気をチャージしていたようです。
忙しくても、いつも健やか。料理家の有元葉子さんに会いに行きました。
いつも元気な人というのは、持って生まれたものだけではなく、自分が元気で居続けるための暮らし方やツボを心得ている人なのかもしれない。
このことをきっかけに、そう考えてみました。
「あなたの元気の秘訣はなんですか?」そんな疑問を胸に訪ねたのは、料理家の有元葉子(ありもと・ようこ)さん。
3人のお子さんを育てあげ、現在は料理教室やレシピ考案などの仕事をしつつ、月に一度旅行にも行っているそうです。
一見落ち着いていらっしゃるのに、なんてパワフルな女性!
「仕事もしていますが、よく遊ぶんですよ」と話す、有元さんの元気の秘訣にせまります。
自分が感じたことに素直に。有元さんの元気の秘訣
わたしはお話を聞く前まで、「有元さんならではの、元気のための習慣があるのでは?」と、思っていました。けれど全くの逆で、決まりを作らないようにしているそう。
有元さん:
「私は暮らしのなかで、特に習慣というものを持っていません。
これと決めた通りにするよりも、その日そのときで、自分がどう感じるのかを大切にできたらと思っているんです」
料理だって、レシピ通りでなくて良いと思う
有元さん:
「例えば料理でも、大さじ何杯で、中火で何分とか、決まりごとに頼りすぎてしまうと、そればかりを守ろうとしてしまいますよね。
そうすると、自分の中の『おいしい』とか『楽しい』という感覚がわかりづらくなってしまうと思うんです。
だから私の料理教室に来てくださった方にはレシピ通りに作るのではなく、『おいしそうに焼いてね』と言っています。
その人自身の『おいしい』という感覚こそが、なにより大切だと思っているんです」
「おいしい」と感じられたものが、必要なもの?
有元さん:
「この方法や食べものが体にとって良いかもと、つい考えてしまうこともあります。けれど例えば、動物は必要なものしか食べないと思うんです。
それと一緒で、自分の中から出てくる欲求とか本能を大切にすれば、何がいま必要なのか、自然と見えてくる気がします。
そしてその必要なものこそが、『おいしい』と感じたり『楽しい』と感じられるものだと、私は思うんです。
だから私の場合は、頭で考えてしまうよりも、自分が今どう感じているのかをよく自身に問いかけています」
有元さん:
「自分に必要なことをして、必要なものを食べる。それが健やかさにつながっているのかもしれませんね」
そういえば、運動をしたあとは汗を掻くから塩気が多いものを欲するし、ただの水でもいつもより何倍も「おいしい!」と感じる気がします。
自分が必要なものを自然と「おいしい」と感じる。だから「おいしい」と感じるものを食べていれば、必要なものをきちんと取り入れられていることになる。
もしかしたらそうなのかもと、わたしは深く納得してしまいました。
飽きずにつづけるには?運動もムリせず楽しむ
「元気」や「健康」といえば、習慣的にスポーツをしているなど、体を動かしているという話もよく耳にします。そこで運動についても聞いてみることに。
3〜4年前より、意識して体を動かすようになったという有元さん。「何をしているんですか?」と尋ねてみたところ、5種類もあがり、びっくりしてしまいました。
実はとんでもなくストイックな女性?と思いきや、全然そんなことはなく。その仕方も、有元さんならではのユニークなものでした。
有元さん:
「今やっているのは、ヨガ、ピラティス、筋トレ、ストレッチ、それにランニング。
月に何回や何時間なども決めずに、したくなった時に好きな運動をしています。この方が私には合っているんです。
そうしないと飽きて、やらなくなってしまうから」
運動は継続しないと意味がない!と、時にイヤイヤ筋トレをした経験があるわたしは、なんだか肩の力が抜けてしまいました。
でもよくよく考えてみれば、継続しないと意味がない!と言いつつ、結局ムリをして、その運動自体が自分には合わないのかもと、やめてしまった経験も。
別にマラソン選手を目指しているわけではなかったのに、どうしてそんなに力んでいたんでしょう。
「楽しい」と感じたり、「おいしい」と感じたものが、自分に必要なもの。だとしたら、運動ももっと気楽でいいのかもしれません。
でも、しなくてはならないことも多いもの。有元さんはどうしてる?
その日自分が感じたことを大切に、好きだと信じられるほうを選ぶ。それが有元さんの元気の秘訣のようです。
でも、やっぱり仕事も家庭も、日々は「しなくてはならないもの」の連続だったりしませんか?
好きだと思えることをしたいけれど、それも案外むずかしい。
そこで後編では、有元さんに日々のこととどう向き合っているのか、聞いてみました。
(つづく)
【写真】木村文平
もくじ
有元葉子(ありもと・ようこ)
3人の娘を育てた専業主婦時代に、家族のために作る料理が評判になり料理家の道へ。素材を活かしたおいしい料理だけではなく、洗練された暮らし方や生き方が支持を集めている。https://www.arimotoyoko.com/
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