【掃除機がない暮らし】第2話:無理がなくて、やる価値があると思えることを、できる範囲で。
編集スタッフ 寿山
“掃除機を使わない暮らし” の快適さについて、東京・谷中にある「暮らしの道具 松野屋」の店主、松野きぬ子さんにインタビューしています。
前編では、掃除機を使わないそうじの身軽さや、どんな負担から解放されたかなど、詳しく伺いました。
つづく2話では、なぜ掃除機を使わない暮らしが無理なく続いているのか、その理由を紐ときます。
子育てしているときは、平日に掃除機をかける暇なんてなかった?
忙しいと、そうじを後回しにしてしまうことだってあるもの。でも、忙しいときほど部屋が汚れていると気持ちは沈みます。
気がついたときにサッとそうじすると話す松野さん。どうやってその習慣を身につけたのでしょう?
松野さん:
「もちろん、そうじを後回しにしたことは何度もあります。とくに子育てしていたときなんかは、子どもにご飯を食べさせてお風呂に入れて、寝かせるのに精一杯で。平日に掃除機をかける暇なんてありませんでした。
もう埃では死なないと割り切って(笑)。週末にまとめてやることが多かったです。でも、後回しにすればする程 “さあやるぞ! ” と意気込みも必要で、腰は重くなるばかり。
その点、なんの意気込みも必要ないのがホウキのいいところ。嫌々というより、むしろ目に付いたゴミをサッと一瞬できれいにできる爽快感がある。面倒じゃないから、汚れをためずにいられるし、平日もやろうという気になるんだと思います」
「忙しいときは、適当でいいのよ」という言葉に救われた
仕事に子育てに忙しくしているとき、隣に住む姑から「そうじはね、暇な人がやればいいの。忙しいときは大変だから、適当でいいのよ」と、言われたことがあるそう。そう言ってもらえて、随分と救われたといいます。
松野さん:
「姑はとてもキレイ好きな人です。朝起きたら、まずそうじから家事を始めるのが習慣で。それなのに、自分は専業主婦だからやってるだけで、あなたは仕事もしていて忙しいんだから、そんなにきちっとやらなくてもいいのよって言ってくれて。
すごくありがたかったです」
自分も家族も不快に感じないくらいに。大切なのは無理なく続けられること
もともとそこまで潔癖でもないという松野さん。部屋のもの全てが整頓されていて、チリひとつない状態でないと、落ち着かない性分ではないそう。
松野さん:
「日々のそうじは、自分や家族が不快に感じない程度にキレイにできればいいと思っています。なおかつ無理なく続けられることも大切で。
掃除機で完璧に埃を吸い取るというより、限られた時間で気になるところをササっとキレイにできるホウキは、そんな私にちょうどいいんです」
掃除機がわりに使うなら、フローリングには棕櫚、畳にはホウキ草のものを
掃除機のかわりにホウキで家中をそうじしている松野家では、2種類のホウキを使い分けています。それぞれの使い心地や適正についても伺ってみました。
松野さん:
「フローリングには、埃をまとめながら絡めとる棕櫚のホウキがおすすめです。使いはじめのうちは、茶色い粉が出ることもありますが、それは棕櫚の繊維を包む皮が細かく砕けたもの。使ううちに、気にならなくなります。
畳ならホウキ草で作った座敷箒がいいと思います。畳の目に入り込んだ細かい埃まで掻き出します。
どちらも床に直置きすると毛先に変な癖がつくので、吊るして保管すれば長持ちします」
さらに、はじめてホウキを使う人には、ミニ箒もおすすめなのだとか。
▲コーヒーミルで豆を挽いたあとは、周りに散った粉をミニ箒でさっとかき集める
松野さん:
「私は台所まわりは、このミニ箒でそうじすることが多いです。野菜くずや小麦粉などが床にこぼれたら、さっと集められるから便利で。糸くずとか髪の毛も同じようにこれでサッと集めています。
時間がないときも、部分的に気になるところをパッときれいに出来るから、気分よく過ごせるんです」
気張らず、いまの状況に合わせて。できる範囲のことを
そうじも仕事も子育ても、気張らず、やる価値があると思えることを、できる範囲でやってきたと話してくれた松野さん。
何事もそのときの状況に合わせて、肩肘はらずに、自分らしく向き合っている姿が印象的でした。
わたしは掃除機がない暮らしを想像したとき、ホウキと雑巾で家中をピカピカにするストイックなイメージを勝手に抱いていました。だから自分にはハードルが高いものだと決めつけていた気もします。
松野さんの暮らしは、そんな私の想像に反して、とても自由なスタイル。
無理なく続けることができて、自分もやっていけそうなことを、できる範囲でやればいい。そう、終始やさしく教わった気がします。
いまの自分にフィットするそうじ道具やスタイルって、どんなものだろう? 等身大の答えを見つけるヒントをいただきました。
(おわり)
【写真】村山玄子
もくじ
松野きぬ子
1956年、京都生まれ。「暮らしの道具 松野屋」店主。雑貨の卸と販売を手がけつつ、 “手のぬくもりを伝えたい” をコンセプトに、「羊雲」の名前で糸紡ぎや編み物の制作活動をしている。
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