【魚を丸ごと買ってみる】後編:初めてでも、失敗しても、おいしい! 今夜は、あじのたたきにしよう
ライター 片田理恵
丸ごとの魚を買うのはハードルが高いと思い込んでいませんか? でももしも、それが難しくなく、値段も手頃で、しかも美味しいとしたら……。
本特集は、小さい頃から魚が大好きという “魚食い” の「みんげい おくむら」店主・奥村忍さんに、丸ごと一匹の魚を買って調理する方法と楽しみ方を伺っています。
「身とあらに分けて二度楽しめる」のが、丸ごと買いの醍醐味
前編で紹介した「いわしの塩焼き」に続き、今日はこれまた私たちの食卓におなじみの魚・あじに挑戦。「味がいいからあじという名がついた」との説があるくらい、おいしく手に入りやすい鮮魚です。
作るのはあじのたたきとあら汁の二品。この味が自分で作れるなんて……感激です。作らない・食べないなんてもったいないかも!?
奥村さん:
「一匹で二度おいしい。それが丸ごと買いのいいところです。あじなら身は刺身やたたきにしてもいいし、カラッと揚げたフライも絶品。あらは汁物にして、白いごはんと一緒に食べるのが一番ですね。
自分でさばくのに抵抗があったり、時間がない場合は、スーパーの鮮魚売場で『3枚おろしにしてください』と頼めばいいんです。『あらもください』っていえばちゃんとつけてくれますよ」
初めてなら「あじ」がおすすめ!
超基本の3枚おろし
まずは奥村さんが実践する、あじの下処理方法を見せてもらいました。「あじは骨格がわかりやすいので、練習に最適!」とのこと。これで手順を覚えれば、ほかの大きな魚も扱いやすいといいます。
※奥村さんは左利きなので、包丁も左利き用を使用しています。魚をおろす場合は出刃包丁がおすすめですが、普通の三徳包丁で問題ないそうです。
◆基本の3枚おろしの方法
(1) 包丁の刃先で全体を洗ったら、尻尾の上の固い部分「ぜいご」をとる
(2) 胸びれの後ろから包丁を入れる。両面から切り込みを入れて頭を落とす
(3) 腹に切れ目を入れて内臓をかき出す
(4) 流水できれいに洗う。魚の骨抜きの婉曲した背の部分を使ってこすると血合いがキレイにとれる
(5) 尻尾のほうから、骨に添わせるように切れ目を入れて身を切り分ける。頭と3枚におろした真ん中の骨部分が「あら」、前後2枚が「身」になる
熱々をすするのがたまりません
うまみ凝縮!あじのあら汁
奥村さん:
「丸ごと買うからこそ味わえるおいしさが『あら』ですね。魚は骨のまわりの肉が一番うまいとはよく言われる話ですが、本当にいい出汁が出てうまい。
食べ方はやっぱりあら汁がおすすめです。塩で味付ける潮汁でも、味噌をといて味噌汁でも、どっちも捨てがたい。新鮮なら問題ないですが、もし生臭さが気になる時はネギの青いところを一緒に入れるといいですよ」
◆材料(2人分)
あじのあら…1尾分
長ネギ(青いところを含む)…適量
味噌…適量
◆下準備
・えらに切り込みを入れて頭から外す
・頭は縦半分に割り、中骨は3等分してだしがらの大きさをある程度揃える
・臭みをとるため、バットなどに広げたあらに熱湯をかけては捨てる、を3回繰り返す
作り方
(1) 熱湯をかけたあらと水を鍋に入れ、火にかける
(2) アクをとる
(3) 長ネギを加えて一煮立ちさせ、味噌を溶いて出来上がり
ごはんが進む!お酒が進む!!
プリプリの身がはじける、あじのたたき
奥村さん:
「3枚におろすとき、血合いを切り取るとき、もちろん最初からうまくはできません。ぐちゃぐちゃになっちゃった……と落ち込んだ経験は、僕にも何度もあります。でもそれでもOKなのが、このたたきという食べ方のいいところ。身を小さく切るので、おろすのがうまいかどうかは、見た目ではまったくわからないんです(笑)」
◆材料(2人分)
あじの身(3枚におろしたもの)…1尾分
生姜…適量
青じそ…適量
◆下準備
・生姜と青じそをみじん切りにする
・切りやすくするため、あじの身は直前まで冷蔵庫で冷やしておく
作り方
(1) 表面にある腹骨を、そぐようにして取る
(2) 腹から尻尾にむけて、手で皮をはぐ
(3) 中心にある血合いと小骨をうすく切り取る
(4) 身を1センチ四方程度に切る
(5) 生姜・青じそと和えれば出来上がり
慣れればここまでで30分! 丸ごとあじを味わう定食、完成
あら汁とたたきができる頃、ちょうどごはんもふっくらと炊きあがりました。
今日の副菜は春らしさを感じるうどのきんぴら。絶妙な甘辛具合がほかのどの味付けとも違い、思わず「そうそう、この味が欲しかったの」と嬉しくなります。
こんなごはんが家で食べられるなんて。しかもそれを私が作ったなんて!と、お腹も心も大満足すること間違いなしの定食。ちょっと試してみたくなるでしょう?
あじのたたきは醤油をかけて食べるのが一般的ですが、今回はもうひとつ、塩もみバージョンも教えていただきました。
薬味にもひとひねり、青じそのかわりに使ったのはなんとパクチー。これがまた……なんともいえずおいしいんです。「白ワインにも合いますよ」の言葉にも深く納得。人を招いて食事をするとき、こんな一品が出せたらきっと、最高に素敵ですよね。
魚っておいしい。前後編を通じて、改めてそう感じた取材となりました。
おいしいの力は偉大です。おいしいねと笑いあえる喜びは最強です。栄養価を考え、家族の好き嫌いに配慮し、前の日とは違う献立を変え、買い物に行って、ごはんを作る。
そんな毎日に疲弊してしまうときもあるけれど、そんな私を元気にしてくれるのは、やっぱり大切な人と一緒に食べるごはんだったりして。
丸ごと魚を買うという挑戦が、初めて鮮魚売場の人に話しかける勇気が、不慣れな包丁さばきに四苦八苦する時間が、あなたのごはんを楽しく豊かにしてくれますように。
(おわり)
【写真】馬場わかな
もくじ
奥村忍
日本や世界各地から集めた手しごとを中心とした生活雑貨を商う「みんげい おくむら」店主。今の時代、今の生活に合った「みんげい」を探し、日々提案している。千葉県生まれ、千葉県在住。http://www.mingei-okumura.com
ライター 片田理恵
編集者、ライター。大学卒業後、出版社勤務と出産と移住を経てフリー。執筆媒体は「nice things」「ナチュママ」「リンネル」「はるまち」「DOTPLACE」「あてら」など。クラシコムではリトルプレス「オトナのおしゃべりノオト」も担当。
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