【チャーミングに生きる】西田尚美さん〈後編〉迷ったら、とりあえず。疲れても、とりあえず。
ライター 長谷川賢人
女優として活躍し、クラシコムが製作したオリジナル短編ドラマ『青葉家のテーブル』 でも主演を務めた西田尚美さんへのインタビュー。テーマは「彼女がチャーミングな理由」です。
前編では「自分のタイプに気づくこと」などのヒントをいただきました。続く後編では、結婚生活やお子さんとの日々から得たことなど、プライベートな一面も伺っていきます。
イライラは「菩薩のような心」で、飲み込んでみる
2005年に結婚した西田さんですが、「最初は喧嘩も多かったんですよ」と意外な一言。ひとり暮らしでは感じることのない、共にする相手を考えながら生活することへの不慣れから、ぶつかってしまったり、居心地の悪さを感じたりすることも少なくなかったそう。
そんな日々を変えたのは、相談した友達から受けたアドバイスでした。
西田尚美さん:
「イラッとすることがあっても、とりあえずは一回、胸のなかで丸めて、ぐっと飲み込むんです。それが過ぎるとうまくいく。友達からは『菩薩の心で思うんだよ』と言われました。菩薩にまでなれているかはわからないけど(笑)、イライラもそれで少なくなりましたね。
たとえば、洗い物ひとつとっても、何も言わないでおいても『やってくれた』ときのことのありがたさに目を向ける。相手に『いつもやってくれない!』と言うばかりが正しさではないのかも。
自分が歳を重ねてきたのもあるかもしれませんが、そんなふうに相手に譲ったり、ときには譲られたりする関係が良いですね。もしかしたら、わたしの両親もこんなふうに譲り合っていたのかなと、結婚して初めて思えるようになりました。他人と一緒に暮らすって、きっとそういうことなんだろうなぁ、と」
5時45分から始まる、お母さんとしての一日
第一子となる娘さんを2008年に出産した西田さんは、お母さんとしての一面も持っています。女優業と並行して進める「お母さん業」のことを聞くと、子育てをするクラシコムスタッフからもよく聞くような、忙しい一日の姿が目に見えるようでした。
西田尚美さん:
「起きるのは5時45分。子どもの支度を手伝ってから朝食をつくって、6時半には送り出します。その日に仕事がなければ、2時間くらい二度寝します。寝られるときに寝ておきたいですから。
目覚めたら洗濯をして、軽めに朝食をとり、シンクに置いた食器を洗います。それからは台本を覚えたり、録りためたテレビ番組を見たり、映画館へ行ったり……子供が学校から帰ってくるまでの時間を、いかに使いたいことのために使えるか、ですよね。
夕食の買い物を済ませたら、娘の習い事の送迎をして……話すほどに、ぜんぜん、普通にひとりのお母さんですね(笑)。だから、台本を読んでいる暇なんてないんです。みんなが寝静まってから覚えています」
西田さんも、ひとりのお母さん。つい、イライラしてお子さんに八つ当たりをしてしまうときもあるといいます。その都度、ハッとしながらも、10歳になる娘さんは「大丈夫、イラついてたんでしょ」と声をかけてくれることも。「娘はわたしのあしらい方をすっかりわかってきてるみたい」と西田さん。
今では母娘で旅行することもあり、「ふたりでお酒を飲む日が楽しみ」と明るい表情を見せてくれました。
ひとりの時間は、イヤホンと、車のキーで
イヤホンは、忙しい西田さんの毎日を助けてくれるアイテム。仕事の移動中や撮影現場の待ち時間、はたまたお子さんの宿題をそばで見ているときにも。最近はAmazonプライム・ビデオで『ゲーム・オブ・スローンズ』を観るのがお気に入りだそう。
そして、セリフを覚えるといった女優業を円滑にするためだけでなく、自分のために「ひとりの時間」を設けるとき、西田さんは車のキーを手にします。
西田尚美さん:
「ひとりの時間がほしいときは、とりあえず車でどこかへ出ちゃいます。車が好きなのもあるけれど、立ち寄った喫茶店でぼーっとしながら本を読んだり、ひとりランチをしたり。車内でセリフを読んで覚えることもあります。
家族の中では、夫や娘がふだんのペースをつくって、私はついていくタイプ。ふだんはそれでもいいのですが、ひとりになったときは『わたしのちょうどいい時間軸』に戻して過ごせるんですよね」
生き様や人生がにじみ出る人ほど、チャーミング
「女優」といえば、どこかヒミツに満ちていて、遠い存在のように思えます。でも、西田さんからは、こちらの問いかけにも飾ることなく、自分の人生や経験から得たものを素直に打ち返してくれる印象を抱きました。私たちが西田さんのことを「チャーミング」だと思う気持ちの裏には、この飾らなさや近寄りやすさがあるようです。
では、西田さんの目から見て「チャーミングな人」は、どんなふうに映っているのでしょう。どんなときに、チャーミングな良さを感じるのかを聞いてみました。
西田尚美さん:
「チャーミングだなって思うのは、生き様や人生がにじみ出ている人。塩梅が難しいけれど、にじみ出るくらいがよくて、暑苦しくアピールしてくるのはちょっと違う……。不器用なくらい一生懸命だけど、それでも素敵に思える人がチャーミングに見えます。だから、わたしがそれを感じるのは、見た目よりも内面なんでしょうね。
やっぱり娘の必死な様子だったり、自分のために励んでいる姿って可愛いんです。お母さんたちはぜったい同じような気持ちだろうなぁ、と思います。それは他人が見てもひっかからないかもしれない。でも、私にはすごくチャーミングに見える。子供を産むまで自分に母性を感じたことはなかったくらいだけれど、子どもはいろんなことを教えてくれますね。
私が『青葉家のテーブル』で演じた青葉春子もチャーミングでした。働きながら子育てをして、でも余裕を持って人と接せられる。自分の時間もとりつつ、お弁当や暮らしのことにこだわりもある。あんなふうにできたら……理想かな(笑)」
チャーミングの源は、見た目の可愛らしさではなく、内面からにじみ出るもの。私たちは西田さんの演技や言葉からそれを受け取り、西田さんはお子さんから感じとるものがあったようです。
余談ではありますが、西田さんはインタビュー中に、しばしば「とりあえず」という言葉を使っています。そこに「後回し」というニュアンスを感じるかもしれませんが、「過去でも未来でもなく現在だけを見る」という意味合いも含む言葉です。
その「とりあえず」が、わたしを動かし、一歩ずつ前へ進めてきた。西田さんの転機や日々は、そんなさっぱりとした思い切りに支えられているようにも思えます。
迷ったら、とりあえず。疲れてきたら、とりあえず。あたかも「とりあえず力」と呼びたいものも、西田さんをチャーミングに見せる理由のひとつ、なのでしょうか。
(おわり)
【写真】鍵岡龍門
【ヘアメイク】茅野裕巳<Cirque>
【スタイリスト】岡本純子
【衣装協力】
・ワンピース、タンクトップ:共にTOUJOURS
・パンツ:ikkuna/suzuki takayuki
・その他:スタイリスト私物
▼ドラマ本編 (17分)はこちらから!
もくじ
西田尚美
女優。広島県出身。文化服装学院を卒業。
ライター 長谷川賢人
1986年生まれの編集者、ライター、スピーカー。
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