【私たちのものづくり】前編:アイディアが生まれる、店長佐藤の家を訪ねました
編集スタッフ 松浦
北欧、暮らしの道具店のオリジナルブランドとして誕生した「KURASHI&Trips PUBLISHING」も、この夏で3年目を迎えます。
2014年3月にオリジナルジャムの製造から始まった私たちのブランドは、雑貨や服、リトルプレス、そして短編ドラマと、時間とともにさまざまなカタチへと変化していきました。
でもそこに一貫してあるのは、「日常(KURASHI)のなかに、ひとさじの非日常(Trips)を」という想い。これだけは、ブランドをはじめたときからずっと変わることのないものです。
ただ、なぜここまで「非日常」にこだわるのか? なぜ雑貨、なぜ服、なぜドラマだったのか。
もしかしたら、きちんと説明できていなかったかもしれません。だから、改めてお話しさせてください。私たちのものづくりのこと。そして、なぜカタチを変えて作り続けるのか。
この特集では、全2話でKURASHI&Trips PUBLISHINGについてご紹介していきます。
前編では、「北欧、暮らしの道具店」をオープンした当時からオリジナルブランドの展開を構想していたという店長佐藤に、「なぜオリジナルブランドをつくるのか」について、あらためて話を聞きました。
アイディアが生まれる場所、店長佐藤の家を訪ねました
今回、話を聞くため足を運んだのは、店長佐藤の自宅。オリジナル商品のアイディアのいくつかは、ここでの暮らしから誕生しました。
店長佐藤:
「引っ越して半年が経ち、またグリーンが増えました。スタッフがうちに来るたびに森みたいって言われてます(笑)これ以上増やさないぞって思っても、やっぱり増えていく……
昔から、ソファに座ってグリーンを眺める時間が好きなんです。なんだかほっと落ち着く瞬間。私の大事な『非日常』のひとつです」
佐藤の口からさっそく出てきた「非日常(Trips)」という言葉。オリジナルブランドを作るうえで、最も大切にした要素のひとつだと言います。
きっかけは、私たちの暮らしのモヤモヤ
店長佐藤:
「これはオリジナル商品に限らず言えることですが、どの商品も、私たち自身が『ひとりの生活者』として暮らすうえで感じたモヤモヤがきっかけで生まれています。
こんな道具があったら家事がもっと楽しくなるのに…… これがあれば家が居心地よくなりそう……。これまでも、生活者としての動機を何よりも大切にしてきました。そんなふうにして『私たち』みたいな『誰か』に届けばいいなといつも思っています」
「例えば、今年の3月に発売した『母子手帳ケース』。母子手帳や小児科の診察券、おくすり手帳などを手にするときって、母親としても不安や焦りといったネガティブな感情を伴うシーンが多いものだと思うんです。
だからそんな思いを少しでも和らげてくれる、自分らしい色柄のものや、気分のいい手触りのものがあったら、それだけで救いになるなと思っていました。もちろん、そこに母子手帳ケースに最低限欲しい機能性を追加して、持っているだけでほっとする、『お守り』のようなものを作りたかった」
▲店長佐藤の愛用がきっかけで生まれた、オリジナルのマグツリー(写真左)
「あと、我が家で愛用していたものをきっかけに商品ができることもあります。去年の秋に発売した『マグツリー』もそのひとつ。
お気に入りのマグカップを、使っていない時でも可愛く飾りたいというのがはじまりでした。
食器棚にはまだ手が届かない子供が、自分でカップを準備して、片付けをするきっかけにもなっています。小さな一歩ですが、自分で何かできるようになるって嬉しいですからね」
「装う」ことに生まれた、迷いと好奇心
ジャムからはじまり、オリジナルの雑貨、そしてはじめて「服」にチャレンジしたのが2015年6月。アンキャシェットとのコラボワンピースでした。
店長佐藤とバイヤー加藤が中心となり、試作を繰り返したワンピース作りから3年が経ち、アパレル分野はKURASHI&Trips PUBLISHINGの半数を占めるまでになりました。
店長佐藤:
「今、私たちがオリジナルブランドからアパレルを続けてご紹介している背景にも、やはり『ひとりの生活者』としての切実さがあります。
年を重ねていくうちに、暮らしの悩みも変わるもの。お店はもうすぐ11歳、私は42歳になりました。お店を始めた当初はあまり考えなかった、『装う』ことに対する迷いや、それと同時に好奇心も湧き上がってきたんですね。
自分に似合うお洒落がしたいけど、平日の朝に、あれやこれやと着こなしに時間を使う余裕がない。お気に入りの服を買っても、すぐ子供に汚されちゃう。そう思って、無理がなく楽な服を選んでいましたが、そんな自分に満足はしてなくて。
装うこと自体を、もっと非日常のように楽しみたいと切に願うようになりました」
「香菜子さんとコラボレーションしたトップスは、そんな経験から生まれたものでした。大切にしたのは『日常着を、ちょっとよく』というコンセプト。
身にまとうことで、いつもよりなんだか軽やかな気持ちになったり、自信がでたり……この1着さえあれば大丈夫!そんな気持ちで鏡の前に立つ自分を想像しながら作っています」
今年のチャレンジは、ドラマ作り
▲撮影は店長佐藤宅で行われました
さらに、2018年4月にはオリジナル短編ドラマ『青葉家のテーブル』を公開。一見、突拍子もないように見えるこの取り組みも、雑貨やアパレルをはじめたときと同じ考えが貫かれていました。
店長佐藤:
「お客さまからもきっと、なぜクラシコムが?と思われたかもしれません。でもこれも雑貨や服を作るときと同じこと。
なんとなく今日は疲れた、自分が何をしたいのか分からない…… たまに訪れるそんな落ち込み期に、まるで処方薬のように観ている大好きな作品がいくつかあることを思い出しました。
何度観ても沁み入る台詞や音楽。うっとり見惚れてしまう可愛い小物や、スタイリング。何度も同じシーンを巻き戻して観てしまうような、そんな大好きな世界に浸るたび、自分の『好き』の軸を取り戻す感覚がありました」
「なんというか、また『日常』に戻っていくための、勇気をもらっていた気がします。それがまさに『非日常』。
もし私たちがそんな非日常を感じさせてくれる映像作品を作れたら、同じ好きを共有するお客さまにもそんな体験を届けられるのではと思いました」
毎日の暮らしはいいことばかりじゃないから
店長佐藤:
「溜め息をついてしまうこと、悩まなくてもいいと分かっていながら悩んでしまうこと、自分が望まなくても、それぞれの立場でたんたんと果たさなければならないこと。
毎日の暮らしはいいことばかりじゃない。だから『非日常』はなくてはならないものです。
人によっては、『非日常』というと、一時的な “逃避” をイメージするかもしれません。でも、私は、小さな非日常は、大きな変化をもたらすための大切な一歩になると信じています」
店長佐藤:
「たとえば私にとっての非日常は、休日の朝、じっくり時間をかけながらコーヒーを淹れること。会社からの帰り道、一杯だけワインを飲みに寄り道すること。季節の花をお気に入りの花瓶に生けること。土曜日の夜遅くに一人でスーパーに行くこと……。
どこか旅に出るとか大きなことではなくて、どれも小さなことだけど、だからこそ忙しない毎日に少しずつ散りばめられる非日常です」
「これがあったら、ちょっとだけ幸せ。これを使ってる時は、なんだか気持ちが軽やか。この服を着て出かければ、いつもよりちょっとだけ自分らしく過ごせそう。これを観るといつもの自分のリズムに戻れる気がする。
非日常の中で得た『気づき』が、『もっと自分らしく暮らしたい』と思う私たちを後押ししてくれる。
だから、非日常は逃避じゃない。どちらかといえば向き合ってるんだと思います」
変わらないために、これからも変わっていく
店長佐藤:
「結局わたし、ずっと同じことを言ってる人なんです(笑)『北欧、暮らしの道具店』を始めた頃からずっと、想いは変わっていないし、これからもそれは変わらない。
でも、自分たちの暮らしが全てのきっかけであるからこそ、暮らしが変わればお届けするカタチは変わっていきます。
服をつくろう、ドラマをつくろう。そう思った時と同じように、これからまた年を重ねて、新たなモヤモヤや好奇心が生まれるはず。もしかしたら、今の私たちは想像もしなかったカタチでお届けしているかもしれませんね」
「日常(KURASHI)のなかに、ひとさじの非日常(Trips)を」
これから先もこの想いは変わらないからこそ、私たちにとって、お客さまにとって、本当に欲しいと思えるカタチにしてお届けしたい。
2話目では、KURASHI&Trips PUBLISHINGがつくられる現場からお届け。実際に、オリジナル商品開発を担当する、バイヤーとデザイナーに話を聞きます。
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
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