【チープ・シックのある暮らし】前編:自分らしい暮らしを楽しむ「合理的な」モノ選び(編集者・加藤郷子さん)
編集スタッフ 小林
値段やブランドにこだわらず、自分の「好き」を大切にモノ選びをする「チープ・シック」という考え方。
誰の目線も気にせずに、自分の気持ちに正直な「チープ・シック」のある暮らしに憧れはあれど、一体どうすればいいんだろう?
そんな問いに対するヒントが欲しくて、“自分らしい暮らし” を心から楽しんでいる方にお話を伺いに行きました。
訪ねたのは編集者・ライターの加藤郷子(かとうきょうこ)さん。
加藤さんは当店のリトルプレスや本をはじめ、多くの家庭の暮らしを見つめながら、住まいや食にまつわる雑誌、書籍の企画と編集、ライティングをされています。
お仕事柄、たくさんの人の暮らしや、それにまつわるモノに出会う機会の多い加藤さん。数々のモノの中から「自分のために」選びとってきたモノの背景には、きっと加藤さんならではの理由があるはず。
そう感じた私・小林が訪れた加藤さんのご自宅は、日がさんさんと降り注ぐ大きな窓と、部屋中に加藤さんの「好き」がぎゅっと詰まった、なんとも居心地のいい空間でした。
安くても浮かれない。「合理的な」モノ選び
「わたし、どうやら合理的に考えてモノを選ぶのが好きなんです」そう話す加藤さん。
加藤さん:
「面倒くさがりだから、欲しいところに欲しいものがあるといいなとか、あっちこっち行かなくて済むようにとか、そういうことばかり考えています。
自分の家を心地よくするための、暮らしの中の小さな工夫に喜びを感じるタイプなんですね。
だからモノを買うときは、安くても浮かれず、しっかり吟味します。ここに使いたい!とか、これは使いまわせそう、とか。
それがあることで自分が心地よくなるかどうか、暮らしがラクになるのか、とことん考えるんです」
では一体どんなモノを愛用しているのか、気になるところ。実際に見せていただきました。
100円のマグネットで
暮らしを改善するひと工夫
▲余っていたボタンの裏に自分でマグネットをつけた自作のものがちらほら。デスク前の壁にホワイトボードを設置し、行きたい展示のパンフレットなどを忘れないようにマグネットで貼り付けている。
加藤さん:
「マグネットやフックはよく買う、大好きなもののひとつ。
100円均一で買ったマグネットが意外にとても強力だったりして、それをマスキングテープで花バサミにつけてみたり、コートについてきた予備ボタンの裏につけてみたりと、いろいろカスタマイズしています。
フックもホームセンターなどで可愛いものを見つけたら買っておいて、『ここにあったら便利かなぁ』と思うところに積極的につけていますね」
加藤さん:
「モノを取りにあちこち動き回るのが嫌いな私には、必要な場所に、簡単に収納が増やせるこれらのアイテムが欠かせません。
最近一番お気に入りなのがこれ。使いかけの鰹節のパックなどを止めるクリップです。クリップ自体はコーヒーを買うとついてくるモノなんですが、これに自分でマグネットをつけてみました。
使いかけの袋を引き出しにいれると、すぐ迷子になりやすいのに悩んでいて。こうすれば冷蔵庫の横につけられるので、使うのを忘れなくなって便利です」
加藤さん:
「仕事で最もよく使うペン型の消しゴムや修正テープなどにもマグネットをつけて、いつでもすぐ手に取れるようにデスクライトにぴたっとくっつける方法にしました。
必要なものがいつも定位置にあるおかげで、作業に集中でき、気に入っています」
加藤さん:
「玄関にはフックやマグネットを使って、掃除に使う箒や、荷ほどき用のハサミ・カッター、宅配用の印鑑など、まとめて置いておきたいものをセッティングしています」
加藤さん:
「テレビ裏にはすぐに埃をはらえるように、最近フックを設置しました。
洗面所にも、気づいたらすぐ掃除できるように、ブラシをかけるフックがついています。
掃除したいところに、サッと手が届くようにするだけで、掃除へのモチベーションが全然違います」
加藤さん:
「マグネットもフックも小さなことだけど、『こんなこと思いついちゃった!』って言いながら、暮らしを改善できるのがすごく好きで。
くだらな〜い、と思いながらも案外喜んでいる自分がいるんです。
些細なことだけれど、こういうのって私らしい買い物のひとつだなぁと思います」
慌ただしい朝も無駄がない
動線をスムーズにするIKEAのワゴン
加藤さんのご自宅に伺ったとき、同じIKEAのワゴンが3台あるのに驚きました。どうして3台もあるのでしょう?
加藤さん:
「このワゴンは動かせるという使い回しやすさがいいな、と思っていて。
どれも『ここに収納があったらいいのに』と感じる場所に置いて、動線をスムーズにするために使っています。
靴箱の中で使っていたり、クローゼットで使ったりと、置く場所を変えながら、そのときに必要な形で使いこなせるので3台あっても多すぎません。
ひとつはカバン置きとして、今は使っています。一番上にハンカチを入れたBOXを置いて、横にマグネットフックをつけてカバンを掛けられるように。
この使い方をしている理由は、慌ただしい朝の時間で『あれはどこ?』なんて、あっちこっち行かなくても済むようにまとめておきたかったから。無駄なく動けることが嬉しいんです」
加藤さん:
「ふたつめはベッドサイドに設置。脱いだ寝間着や洋服を一時的に置いておく場所になっています。
置く場所が決まっているので、散らかることもありません」
加藤さん:
「最後はクローゼットの中に。一番上段には出がけにすぐ手に取りたいマフラーなどを、真ん中の段はあえてカゴ部分を取り外して大きなバスケットを設置しました。
バスケットは資源ゴミをいれて置く場所として活用しています」
何を入れても様になる
自由な用途で使えるカゴたち
▲上段左から時計回りに、根菜入れ、おやつ入れ、パン入れとして活用
加藤さんのご自宅はどこを切り取っても、小さなものから大きなものまで、あらゆるカゴが目に入ります。
加藤さん:
「カゴは昔から好きで、集めています。その時々でテイストの好みが変わるので、いろいろな種類のカゴがあるんです。
だから何かをしまいたいときには新しく収納ボックスなどはあまり買わず、家にあるカゴを使います。何を入れても様になるし、出しっぱなしでも可愛い。
暮らしに合わせてどんどん使い方を変えられる汎用性の高さも、つい選んでしまう理由のひとつかもしれません」
加藤さん:
「手持ちのカゴの使い道を考えるときは、置く場所もセットで考えています。
例えばお水を飲む場所のすぐ近くの棚上には、常備薬を入れた小ぶりなカゴを。取り出しやすく、しまいやすい収納になってくれました。
キッチンシンク脇には、たくさんあるまな板や調理器具を立てるためのカゴを置いて。持ち手があるので収納には不向きかなと思ったんですが、置いてみると思いがけず安定感もあり便利だったので、しばらくはこの使い方になりそうです」
加藤さん:
「これは家にあったカゴを自分で紐をつけて吊り下げて、鉢入れにしたんです。
部屋の中に鉢を上からぶら下げたかったけど、それのためだけに新しく何かを買おうとは思わなくて、『ちょうどいい大きさのカゴがあるからこれにしよう!』と。
植物をよく枯らしちゃうんですけど、今はこの大根の葉っぱを愛情込めて育てています(笑)」
暮らしを見渡したとき、「こうであったらいいな」「こんな風に使ったら楽になるな」といった、自分の気持ちに忠実にモノ選びをする加藤さん。
「どれも全部、面倒くさがりだから必要なんです」と言いながらも、その姿は日々をいかに楽しむか、自分らしく生きるか、ということに真剣に向き合っているように感じられました。
後編ではそんな加藤さんが、どうやって合理的なモノ選びに辿り着いたのか、お話を伺っていきます。
(つづく)
【写真】原野純一
もくじ
編集者・ライター 加藤郷子
「食」や「住」に関するテーマで、雑誌や書籍の企画と編集、ライティングを行う。著書に『あえて選んだせまい家』(ワニブックス)、編書に『収納&片付けrules』(朝日新聞出版)のシリーズなど。当店のリトルプレスの編集にも携わっている。
▽加藤郷子さんが編集した書籍は、こちらからご覧いただけます。
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