【私らしい部屋づくり】第3話:夫婦の趣味を共存させるため。個性たっぷりのグリーンを、インテリアのアクセントに

ライター 藤沢あかり

雑誌で見た素敵なオブジェを気に入って買ってはみたものの、どうにもうまく飾れない。自分のインテリアはこれで合ってる?と自信が持てない。インテリアが好きだからこそ、誰もが経験する思いではないでしょうか。

雑誌やSNSで目にする素敵なお宅に住む人たちは、「誰の真似でもない自分らしさ」にあふれているように感じます。

でも「自分らしい」ってなんだろう? 好きなものに囲まれる部屋って、どんなふうに生まれるの? そんな疑問を胸に、好きなものを詰め込んだ空間で、インテリアを自由に、おおらかに楽しんでいる米澤さんのお宅を訪問しています。

3話目の今回は、米澤家を訪れた誰もが見入ってしまう、個性たっぷりのグリーンの楽しみ方をご紹介します。

 

どんどん増える夫の趣味を、インテリアに溶け込ませるには?

米澤さん:
「この鉢植えは、すべて夫の趣味なんです。
私もグリーンは好きですが、さすがに最初は異常なスピードでどんどん増えていくからびっくりして!(笑)置き場所も限られているので、いかにインテリアに溶け込ませていくかは、いつも課題です」

ショップさながらに、ショーケースやテレビボード上にずらりと並ぶ量の鉢植え。その正体は、「塊根植物」です。

多肉植物の仲間で、幹や根っこ部分がぷっくり膨らみ、同じものはふたつとないユニークな形が持ち味。その姿はまるで、生きている「オブジェ」そのものです。

その数はかなりのものですが、違和感なく部屋に溶け込んで、むしろインテリアの立役者となっていました。

米澤さん:
「クラフト感のある鉢を選んでいるのも理由かもしれません。

夫も私も植物に加えて、手仕事の品にひかれるところは共通しています。彼は塊根植物、私は原種の蘭を育てているので、ちょっと方向性は違っても、民芸品や作家ものの鉢を選んでいるから、少しはなじんでくれているのかな。

といってもこの量ですから……インテリアと違和感なくなじんでいるように見えるのなら、ちょっと安心しました

冬時期を室内で過ごす植物のために、温室がわりに取り入れたのは、このショーケース。植物たちを引き立てながら、きちんと温室の役割も果たせるものを古道具店で見つけました。

▲中には育成ライトを取りつけました。ゆくゆくは、棚板をガラス板に変更予定なんだそう。

米澤さん:
「もともとショーケースとして使われていたものだし、古道具によくある和風の塗装を落として、無垢の木肌に仕上げ直してあったところも決め手でした。これならうちのインテリアにも合わせられると思ったんです」

たくさんの鉢の新しい居場所。家具と植物、どちらも夫婦で楽しめるインテリアの見せ場となりました。

 

「出番待ち」の鉢を、インテリアの主役に

夫婦で選ぶのが好きだという鉢は、植物用として売られているものだけでなく、作家ものや民芸品の器からも自由に選ぶそう。これもまた、一期一会の出会いを大切に、何を植えるかを決めずとも、気に入ったものがあれば持ち帰るようにしています。

さらには生花も欠かさないという米澤さん、花器も花や季節に合わせて組み合わせを楽しんでいます。まだ空っぽの鉢や花器、しっくりとくる組み合わせを待つ間はこんなふうに並べていました。

趣のある佇まいで、そのもの自体に魅力がある鉢や花器は、置いておくだけでオブジェとなります。

さりげなく、フレームや民芸人形、クラフト感のあるラグやガラス素材など、多様なものを組み合わせることで、「出番待ち」から一転「インテリアの主役」に。

好きなものはいつも「目に触れる場所に」という米澤さんらしい生かし方です。

▲一番気に入っている花器は、右端にある試験管を連ねた形状のもの。「ツェツェ・アソシエイツの『四月の花器』です。やはり定番というだけあって、どんな植物も素敵にまとめてくれます」

 

トライ&エラーを繰り返して、自分らしいテイストを探してみる

塊根植物以外にも、観葉植物や米澤さんが特に好きだという原種の蘭、切り花やドライフラワーなど、家中にはさまざまな植物があふれています。

なかでも、一番手軽にチェンジしやすいのが生花です。玄関の土間スペースには、いつも大振りの枝物や花を生けるスペースを設けています。

米澤さん:
「花は、インテリアアイテムよりも気軽に季節を取り入れられるから、できるだけ欠かさないようにしています。

花を生けるついでに、それに合わせてまわりの小物をちょっとチェンジしたり、そこまでできなくても、花材や花器が変わるだけで、簡単に雰囲気が変わるのを楽しめるんです。

お気に入りの店に自分で買いに行くのも大好きですが、定期的に花屋の友人に見立ててもらうことも」

▲玄関の土間に活けた大振りな白樺の枝物は、友人に見立ててもらったもの。期待していなかったのに少しずつ芽吹いてきたそうで、そんな小さな変化を見つけることも毎日の楽しみ。

▲年末に運良く手に入ったという、たっぷりのヤドリギと合わせて、自宅に冬景色を楽しんでいました。

「インテリアアイテムと同じように、花も、店頭でいいなと思って選んだのに、持ち帰ったらうちには全然似合わなかった!ということもたくさんあります。バラもそうだったんですよね。大好きなのに、ちょっと残念」と、米澤さん。

花もインテリア同様、トライ&エラーを楽しみながら、自分たちらしいテイストやさじ加減を見つけているようです。

 

夫婦それぞれが好きなものを、共存させるコツ

ともすれば、米澤家の植物事情はちょっぴりマニアックかもしれません。

でも、とにかく「楽しい!」「好き!」という気持ちが満ち満ちているからこそ、見ていてこちらも楽しい気持ちになります。

夫の趣味と、妻の趣味。二人ともグリーンが大好きですが、その共通項をさらに上手につないでいるのは、器や民芸、古道具を取り入れた「飾り方のコツ」でした。

住まいは家族みんなのスペース。互いの趣味を引き立て合いながら、同じ空間にこんなかたちで「好き」を共有・共存できたらすてきです。植物に限らず、その形は、きっとどの家庭でも見つけられる気がしてきました。

そんなことを思っていたら、「でも、実はこれだけじゃないんですよ」と、米澤さんが、そっとベランダのカーテンを開けてくれました。

なんとベランダにも、自作の棚に並ぶ無数の鉢が!

「夏と冬、それぞれ好きな季節が品種によってあるみたいで。ベランダもこんなふうなんです(笑)。台風が来る!っていうときなんて、全部室内に避難させるから大変で」。そう笑う米澤さんの表情は、とてもイキイキと楽しそう。

夫婦の趣味や好みがクロスする住まいって、こんなにも楽しいものなんだ、と改めて感じた瞬間でした。

最終話となる第4話では、大工職人の夫にオーダーしたという家具や、住まいを自分たちらしく整えてきた、その楽しみ方をお届けします。

(つづく)

【写真】鍵岡龍門


もくじ

米澤麻美

神奈川県在住の主婦。大工として働く夫と2人で、リノベーションしたマンションに暮らす。グリーンやアート、手仕事、コーヒーなど夫婦共通の趣味も多く、休日にはお気に入りのショップを巡るのが好き。森下典子著『日々是好日』(新潮文庫)に心を打たれ、最近はお茶の世界も気になり始めているとか。insragram:@aanimarro

 

ライター 藤沢あかり

編集者、ライター。大学卒業後、文房具や雑貨の商品企画を経て、雑貨・インテリア誌の編集者に。出産を機にフリーとなり、現在はインテリアや雑貨、子育てや食など暮らしまわりの記事やインタビューを中心に編集・執筆を手がける。

 

 

 


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