【ケの日のこと】動物好きの娘とともに、羊に会いに行ってきました。

「家族と一年誌『家族』」編集長 中村暁野


第41話:羊さん、ありがとう


 

8歳の娘は動物が大好きです。

去年の誕生日に我が家にやってきたうさぎのバターのお世話を日々行いつつ、もっと生き物と暮らしたいという情熱が常にたぎっています。将来の夢は「保護犬保護猫の飼い主を探すためのカフェをしたい」とのこと。さらに、「カフェは鹿児島でやりたい。庭に牛を放牧で飼う。自由に動けて草をいっぱい食べられる広い庭で牛を飼って、牛の乳を手でしぼって、カフェで使う」と、なぜか一度も行ったことのない鹿児島で酪農まで行うというとても具体的かつ壮大なプランを日々練っています。

▲娘の壮大な夢のプランが描かれています。

先日、そんな娘が大喜びしそうな、ある機会がありました。それは羊の毛を刈るというもの。うちから車で10分の場所に羊を飼っているおうちがあり、夏に向けてモワモワの羊毛をカットするので手伝わないかと誘ってもらったのです。まさか羊の毛刈りをそんな身近(?)にできるとは……と里山暮らしの醍醐味を感じつつ、子どもたちを連れて行かせてもらいました。

家の裏庭の一角に竹やぶを切り開き作られた広いスペースがあり、手作りの柵の中に5匹の羊が飼われています。草をあげるともっともっとと寄ってきて、おまけにちょうど3日前に生まれたという子羊も2匹。もう悶絶のかわいさです。娘も抱っこさせてもらって、それはそれは嬉しそうでした。

しかし、ミッションである羊毛カットはなかなかの重労働。大きな羊を大人2人で抱きかかえ、その周りで数人がかりで毛を切っていく。毛は分厚くて重くて、簡単にチョキチョキというわけにはいきません。一匹カットするだけでも1時間近くかかり、そして刈った毛をぬるま湯で何度も洗い、干して、葉っぱや泥といったゴミを手で取って……。そんな作業の一部を手伝わせてもらっていると、こんな時間を経て羊毛って出来て、その羊毛を紡いだらウールの毛糸になるんだなあ……と改めて感じたのでした。

冬に履いているあったか靴下やカーディガン、マフラー。身近なものたちはどこかの羊さんのいつかの冬毛で、誰かがこんな大変な手間暇をかけて作っているのか、と。当たり前のことなんだけど、なんてありがたいものを身につけているんだろう、と実感したのです。目の前にあるものが、どうやって作られているか、何から作られているか、考えたり感じたりする機会がなかなかない中で、わたしにとってもなんだか特別な「ケの日」の1日となったのでした。

はてさてそんなことを感じつつも、生後3日の子羊の里親募集中と聞いた娘は前のめり。しかし、よしじゃあ羊を飼おう!と言える度量はまだまだないわたしです。

 

【写真】中村暁野

中村暁野(なかむら あきの)

家族と一年誌『家族』編集長。Popoyansのnon名義で音楽活動も行う。8歳の長女、2歳の長男を育てる二児の母。2017年3月に一家で神奈川県と山梨県の山間の町へ移住した。『家族』2号が1/14に刊行。現在販売中。http://kazoku-magazine.com

 


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