【お坊さんのお悩み相談室】第15回:「嫌われたくない」という思いが強く、八方美人に振る舞ってしまいます
編集スタッフ 松浦
家事や子育て、日々の仕事。私たちのくらしには、小さなことから大きなことまで「悩み」がつきものです。
「お坊さんに聞く、くらしの悩み相談室」は、仕事や子育てなど、日々のモヤモヤを、お坊さんに答えていただく連載。 クラシコムのオフィスに「くらしのお悩み箱」なるものを設置し、スタッフのくらしの悩みを集めました。
お答えいただくのは、著書『お寺ごはん』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)なども人気の、浅草・湯島山緑泉寺 僧侶の青江覚峰さん。青江さん自身も、3児の父として、子育てにも奮闘中ということもあり、お坊さん目線、そしてひとりの親目線でお話ししていただきます。
「嫌われてもいい」という言葉をここ数年でよく聞くようになりました。ただ私は、正直なところ、嫌われたくありません。でもそんな思いから、八方美人に振る舞ってしまいます。「嫌われたくない」という考えは未熟なんでしょうか?(スタッフS)
以前、この連載でこんなことを書かせていただきました。
親子といえども別の人間なのだ、導きこそすれ、進む方向を強制することはできない、といった内容の記事です。
質問者さんのお悩みと子育ての問題に、一見共通点はないように思われるかもしれません。しかし、根っこには同じものがあるとわたしには感じられます。
つまり、前提として「嫌われることも必要」という風潮が強くなっている今日、質問者さんもその世論に影響を受けてるかもしれない。しかし、その外部からの新しい概念に振り回される必要はない、ということです。
例えば『嫌われる勇気』(ダイヤモンド社)という本の中に、こんなイギリスの言葉の引用があります。
「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を呑ませることはできない」
そこに記されている考え方はあなたという馬を水辺に連れて行ってくれているかもしれません。しかし、水を飲みたいかどうかはあなた自身の思いであり、水を飲むかどうかはあなた自身が決めることなのです。今はのどが渇いていないかもしれない。何か飲みたいけれど、それは水ではなくジュースやお酒だったりするかもしれない。
そもそも、誰に連れてこられなくとも、もともとそこで水を飲む予定だったかもしれない。もちろん、連れてこられたことをきっかけに、自身の渇きに気づいて水を飲み、導いてくれた相手に感謝することもあるでしょう。
世の中で言われていること。みんなが「いいね!」と言っていること。
あらゆる情報がものすごい速さでもたらされ多様な価値観を見聞きできる環境にいる私たち現代人は、そういったある種の流行りのようなものに自然と乗ってしまいがちです。
流行りに乗れない自分は愚かなのではないか、無知で、成熟しきれていないのではないかと心配になってしまうわけです。でも、そんな必要は全くありません。人間の悩み、苦しみというのは、時代とともに多様化しているように見えて、実はそれほど複雑なものではありません。
ただ、漠然とした古い言い回しよりも、現代に適した言葉のほうがわかりやすい、腑に落ちやすいということもよくあることです。そしてそれが、より多くの人の求めるところにピッタリすりあったときにムーブメントとなります。でも、みんながみんな、そのムーブメントに乗らなくたっていいのです。その流行りを知らない人もいれば、共感できない人もいる。それが自然なことです。
ですから、「嫌われることも必要」といった風潮にも、必要以上に振り回されることはありません。
自分にとって助けになるもの、支えになるものであれば取り入れる。余分であると感じたらきっぱりと線を引く。そのような取捨選択の自由、行動の自由は質問者さんご自身に委ねられているのです。
青江覚峰
僧侶 青江覚峰
浄土真宗東本願寺派 湯島山緑泉寺住職。米国カリフォルニア州立大学にてMBA取得。料理僧として料理、食育に取り組む。「暗闇ごはん」代表。超宗派の僧侶によるウェブサイト「彼岸寺」創設メンバー
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