【35歳の仕事論】第2話:マネージャーが本当にすべきことってなんだろう?(ソニックガーデン 倉貫義人さん)
ライター 小野民
年齢も、仕事のあり方も「中堅」に差し掛かったスタッフ津田(編集チームマネージャー)が、人生の先輩に会いに行くシリーズ「35歳の仕事論」をお届けしています。
今回の対談相手は『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』の著者である倉貫義人(くらぬき よしひと)さん。第1話では、倉貫さんが「見直す・やめる・なくす」を軸に据えた経緯や、成熟したチームをつくるために考えるべきことをうかがいました。
第2話では、自主性が育まれた組織やコミュニティにおいて大切なことを、ドラッカーの本を入り口に考えていきます。
「みんな同じ」じゃなくても、「共通のゴール」に向かっていける
編集スタッフ 津田:
「倉貫さんが著書でもよく触れていらっしゃる、経営学者ドラッカーの本、実は前職でマネージャーになった8年くらい前に購入していたんです。当時はあまり頭に入ってこなかったんですが、今回読み返したら共感する部分がたくさんありました。
すごく印象的なのが、マネージャーの仕事のひとつに “意思決定” があり、意思決定を正しくするためには、意見の対立を促すことが必要だというところです。意思決定のプロセスについて、こういう風に書いているんですね……。
『意見の対立を促すことによって、不完全だったり、まちがったりしている意見にだまされることを防げる。(略)ある案だけが正しく、その他の案はすべてまちがっていると考えてもならない。(略)何か自分と違う現実を見、自分と違う問題に関心を持っているからに違いないと考えなくてはならない※』。
めっちゃいいこと言っていませんか!」
※引用元:ピーター・F・ドラッカー 著、上田惇生 翻訳、ダイヤモンド社『マネジメント【エッセンシャル版】- 基本と原則』2001年
倉貫さん:
「この状態は、本当の自主性ですよね。
さまざまな役割をしているメンバーがいて、チームとして同じ成果を目指せているからこそ、対立する意見も大事になる。
自主性を大事にすると効率がよくないのでは?という津田さんの悩みがありましたが(第1話)、『自主性』 を 『なんでも自分たちで考えればいい』 と履き違えてはいけない。みんなが同じ視座で意見を言い合っている状態が、本来あるべき自主性、自立性だと思います。
マネジメントのことを、僕はサッカーによく例えるんです。サッカーにはディフェンダーとかキーパーとかのポジションがあるけれど、相手のゴールにボールを運ぶのが『成果』になるはずで、ディフェンダーがシュートを打っちゃいけないわけではないし、フォワードの人も全体のことを分かっていないと議論はできない。
目指すべき成果が共通しているっていうことが大事だと思います」
正解はない。だから先陣切ってトライアル&エラーを。
編集スタッフ 津田:
「とすると、ですね。チームミーティングって一度にみんなに言うことだから、周知はしやすいんですけど、『何を目指すべきか』について、メンバーごとに理解のばらつきがでやすいなとも感じていて」
倉貫さん:
「マネジメントで陥りやすい罠に『みんな』って言葉があるんです。『みんなで考えましょう』とか『みんな一緒に』とか言うのは、美しい言葉ではあるけど『みんな』って言った瞬間に、一人ひとりの顔が消えちゃう。だけど、相手にする人間は、一人ひとり全然違う。マネジメントは、大量生産でない仕事の代表例ですから」
編集スタッフ 津田:
「すごくグサグサ刺さります。『みんな一緒』って、つい言っちゃってるなぁ……」
倉貫さん:
「マネージャーっていう立場になると、『自分とみんな』って見えがちです。でも、できることはそれぞれ違うからこそ、その人が自分で考えられる領域を、その人ごとに増やしていくことが大事です。
相手に合わせて仕事を振っていくことで、いい仕事をやってもらうことにつながります」
倉貫さん:
「ただ、そういうチームの状態を作っていくための手法は、その時々で変わると思っていて。
これもサッカーと同じ。どんな試合でも同じ手法で戦うのではなく、メンバーの状況とか、ここは引き分けにしておこうとか、目的に応じて戦略は変えるべきもの。
一概に何かが絶対いいとかではなくて、何がいいか分からないけど、『マネージ=いい感じにする』のがマネージャーの仕事。だとすると、一番難しいのは、成果が上がる法則を、考えたり決めたりすること。
だから常から考える。そして決める。疑問や問いを投げかける。それがマネジメントの一番の肝になるんだと思います。
もうひとつの大事な仕事が、『変化を持ち込むこと』。考えて決めたことを実践していく部分です。うまくいっているのにかき回して怒られないのは、そういう立場の人の特権でしょう(笑)」
マネジメントって仕事だけのことではない。
編集スタッフ 津田:
「私は、まさに『マネージャー』という役職にいますが、倉貫さんのお話をうかがっていて思うのは、マネージャーとしての仕事のあり方や心構えって、もっと広義に考えられるのかな、と」
倉貫さん:
「マネジメントって仕事だけのことでもないですものね。チームのことだけでもない。
マネジメントするのが会社だったら経営者だし、プロジェクトだったらプロジェクトマネージャー、個人だったらタスクマネジメント……と、対象はいろいろあれども、その対象に対して、いい状態にしていくこと、やるべきことを全部やることがマネジメントになると思います。
家庭を持っているだけで、家庭を作るというマネジメントをしているはずだし、人生においてマネジメントは必要なスキルだから、ぜひ義務教育に入れてほしいくらいです」
***
「管理」ではない、広い意味での「マネジメント」の仕事の中身を探り、あらためて自身の仕事の奥深さをかみしめた津田。第3話では、セルフマネジメントについて深掘りし、倉貫さんの35歳の頃の失敗談から、45歳になってたどりついたマネジメントの現在地についてもうかがいます。
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
倉貫義人
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長。1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープン ソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを創業。著書に『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』(技術評論社)、新著は『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)。
ライター 小野民
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫4匹と山梨県在住。
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