【35歳の仕事論】第1話:見直す・やめる・なくす。「引き算」がチームの成果に(ソニックガーデン 倉貫義人さん)
ライター 小野民
マネージャーの仕事とは?の自問自答の先に
当店のスタッフ津田が、35歳という節目を前に、年齢と経験を積み重ねながら「よりよい仕事」をしていくために、さまざまな方にインタビューするシリーズです。
今、津田にとっての関心事は、自らの職種である「マネージャー」という仕事について。一般的に「管理職」といわれる立場に近いところにいる気もしますが、そもそも管理って?、マネージャーの真の目的は?と頭を巡らすと、正解はなんだか靄のなかのよう。
マネージャーについての思考は、まだまだめぐらせる余地があると感じているなかで出合ったのが、株式会社ソニックガーデンの創業者で代表取締役社長、クラシコムの社外取締役でもある倉貫義人(くらぬき よしひと)さんの著作『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』でした。
「やったほうがいいこと」は、「やらなくてもいいこと」
同じ会社のメンバーとして交流し、意見交換もしたことがある2人。スタッフ津田は、自分の手の内を知っている人である倉貫さんとの対話を前に、ちょっと緊張の面持ち。
そんな津田の緊張をよそに、ひょうひょうとにこやかに倉貫さんは現れました。
編集スタッフ 津田:
「今日はよろしくお願いします。
倉貫さんの本には、成果を出す組織になるために『見直す・なくす・やめる』が必要だと書かれていました。
パフォーマンスを無理して上げるのではなく、コストを下げて生産性を高めて、チームの成果を生むという考えですよね。仕事の引き算というか。クラシコムの仕事の仕方にも近くて共感したんです」
倉貫さん:
「もともと、僕はコストパフォーマンスが好きなんです。10歳からプログラムを書いて、ずっとプログラマーの仕事をしているから、その影響もあると思います。
いいプログラマーは、短いプログラムでたくさんのことをできるようにするんです。プログラムのいい書き方に倣っているので、なるべく効率よく省力して成果が出た方がいいと考えるんです」
編集スタッフ 津田:
「仕事って、たくさんやればいいわけじゃない。同じ成果を楽に出せたほうが、生産性は高い。本に書かれていた『やったほうがいいことはたくさんある。でも、安易にやったほうがいいことに手つけない』という考え方にも、すごく共感しました。
でもチーム全体でそれを徹底するのは、実は難しくって。たびたび壁にぶつかっています。
倉貫さんの会社ではどうやってきたのか、お話を伺えたらと思って、今回インタビューをお願いしました」
「振り返り」で腑に落ちるから、自分ごとになる。
倉貫さん:
「僕らの会社には “上司” がいません。だから基本的にはそれぞれが『やり過ぎていないか考えましょう』ってことにしています。
自分で考えられるようになるために、新しく入った人や若い人とは特に『振り返り』が大事。1対1で話を聞いていくと、やりすぎも見えてきて、本人がハッと気づくことが多いんです」
編集スタッフ 津田:
「そうか。親がいくら『こうしたら?』って言っても、やっぱり子どもが自分で経験するしかない、みたいなことと似てますね。
となると、細かく指示を出すのではなく、大局的に導くっていうニュアンスに近い。倉貫さんはどんなふうに、振り返りでスタッフの経験と言語化を引き出しているんですか?」
倉貫さん:
「最近は『YWT』をやるんですね。やったこと・わかったこと・次にやること、の頭文字。まさかの日本語です(笑)。
本人からなるべく言葉が出るように、ヒントはあげるんだけど、やっぱり自分で気付かないと腑に落ちないんです。教訓にするには、経験と言語化が必要だと考えています。
『他の仕事で応用するには?』とか『他の人でもできるようにするためには?』という聞き方をします。そうすると抽象化しなくてはいけないから、言語化しやすくなるんです」
見守るべき? 管理するべき? 自主性と効率のあいだで
編集スタッフ津田:
「参考になります! でも疑問もあって……。
経験と言語化によって、スタッフ自身が自分でできることが増えていきますよね。そうすると、それぞれが自主的にやれることが増えますが、スタッフの自主性を重んじることと効率よく成果を出すことって、私の中ではまだまだトレードオフだと感じてしまう場面もあって。
最終的には自主性を大事にしたほうが、成果が大きくなると信じたい気持ちはあるのに、です。
言語化ということであれば、待つ時間も必要になります。自主的にやってもらうというのは、コミュニケーションのコストもかかるし、失敗するリスクももしかしたら高まるかもしれないし。
自主性を尊重したい気持ちと、成果を上げるために管理をしたり指導をするべきかで悩みます」
倉貫さん:
「ああ、その問題! 分かります。でも、明らかに答えが分かっていたら、言ってもいいんじゃないかな。自主性を発揮するのはもっと先な気がします。
みんなが自主性を発揮しなくちゃいけない仕事って、たぶんマネージャー自身も考えなくちゃいけない仕事。自分だけが考えるチームにすると、チームの最高速度イコール自分の能力になっちゃう。
でも、スタッフが自主的に考えられるようになって、考える頭が増えたら、マネージャーがたとえば『キャッチコピーどうしようかな』って悩む仕事に、集合知で挑めます。
決まっていること、僕らの仕事でいえばプログラムのいい書き方などは、圧倒的にすでに知見や正解があるから、指導してもいいと思っています」
***
倉貫さんが「見直す・やめる・なくす」を軸に据えた経緯をたどり、チームの一人ひとりが「自分ごと」としてプロジェクトや仕事に向き合うための手段について、考えるヒントを得た第1話。第2話では、マネージャーの仕事の本質について。自主性が育まれた組織やコミュニティにおいて大切なことを、経営学者ドラッカーの本を入り口に考えていきます。
(つづく)
【写真】鍵岡龍門
もくじ
倉貫義人
株式会社ソニックガーデン 代表取締役社長。1974年京都生まれ。1999年立命館大学大学院を卒業し、TIS(旧 東洋情報システム)に入社。2003年に同社の基盤技術センターの立ち上げに参画。2005年に社内SNS「SKIP」の開発と社内展開、その後オープン ソース化を行う。2009年にSKIP事業を専門で行う社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年にTIS株式会社からのMBOを行い、株式会社ソニックガーデンを創業。著書に『管理ゼロで成果はあがる ~「見直す・なくす・やめる」で組織を変えよう』(技術評論社)、新著は『ザッソウ 結果を出すチームの習慣』(日本能率協会マネジメントセンター)。
ライター 小野民
編集者、ライター。大学卒業後、出版社にて農山村を行脚する営業ののち、編集業務に携わる。2012年よりフリーランスになり、主に地方・農業・食などの分野で、雑誌や書籍の編集・執筆を行う。現在、夫、子、猫4匹と山梨県在住。
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