【スウェーデンに移住して】第2話:働きながら永住権を取得。現地でお気に入りの家具や雑貨を手に入れて。

ライター 長谷川未緒

自ら行動を起こして好きな国に移住した方にお話を伺う、特集「スウェーデンに移住して」を全3話でお届けしています。

今回は、Skantique(スカンティーク)の屋号でアンティークの品々を販売している松崎由貴子(まつざき ゆきこ)さんです。

第1話では、スウェーデンに移住するきっかけや、理想のアパートを見つけて暮らしが落ち着くまでを聞きました。

第2話では、現地でのお仕事や、好きなものに囲まれる住まいづくりのヒントなどを伺います。

 

外国で自営業ができたのは

▲買い付けたアイテムを分けて収納しているスウェーデンのかご「スポーンコリ」。

2012年の留学をきっかけに、生まれ育ったスウェーデンに移住した松崎さん。留学を決めたときに知り合いに報告したところ、北欧のヴィンテージやアンティーク雑貨の買い付けを頼まれたことがきっかけで、アンティーク販売の仕事をはじめました。

最初は手探りでしたが、いまでは、大家でよき相談相手でもあるマルガレータさんがもともとアンティークショップを経営していたこともあり、ノウハウを教えてもらいながらオークションなどに一緒に行くこともあるそう。

松崎さん:
「マルガレータには買い付けの情報収集の仕方から、買い付け先に着いたら1周目はさっと見て、いちばんほしいものから買うこと、2周目目は時間をかけて見ることといった、回り方のコツ、時間配分などを教えてもらいました。

オークションというものがあるのも、彼女に連れて行ってもらって、はじめて知りました。

彼女が地元で愛されていて、友人知人が多いからこそ、買い付けがスムーズにいくこともあります。未経験ではじめた仕事が軌道に乗ったのも彼女のおかげと、感謝してもしきれません」

 

スウェーデンで「永住権」を取得。家具にも目が向くように

ひとり暮らしをはじめたアパートは、家具や家電が備え付けだったこともあり、最初は家具を買おうという気持ちには、ならなかったといいます。

松崎さん:
「ずっとスウェーデンで暮らし続けたいと思っていましたが、いつまでいられるかわからないという不安もあり、家具などの大きなものを買ったり、ものを増やしたりすることには、罪悪感のようなものを覚えていました。

買い付けたものも、ほとんどを販売していました。大家さん一家には、『こんなにいいものをどうして手元に残しておかないの』と言われることも、度々ありました」

▲大家さんのおばあちゃんが編んだベッドカバーと、マルガレータさん作の刺繍画は、物置で見つけたそう。

在学中に半年かけて書類などを用意し、2年間の自営業ビザを取得した松崎さん。延長申請の審査に通れば永住権を取得できるのですが、スウェーデンでの業績の報告等、事務仕事は膨大でした。

自営業ビザも永住権取得も審査に半年ほどかかり、待っている時間は生きた心地がしないほど、苦しかったといいます。

松崎さん:
「永住権を得て移民局とのやりとりから解放されて、ようやく地に足のついた暮らしがはじまった気がしています。自分のものを持ってもいいと思えるようになり、お気に入りのものは手元に残したり、家具などにも目が向いたりするようになりました」

永住権を得て、最初に買ったのは写真に写っている緑色のベンチでした。

松崎さん:
「私は時を経て風合いが育っているもの、手触りがいいもの、朽ちた淡い色合いのものが好きで、1800年代初頭のこのベンチは、好みにぴったりでした。

運転免許証を持っていないので、ふだんは電車やバス、徒歩で買い付け先を巡っていますが、そのときは車に乗せてもらったこともあり、大きな家具の購入を決心できました」

 

蚤の市やオークションでお気に入りを見つける方法

▲バスルームに置かれた整理棚は1800年代のもの。かつてもお手洗いで使われていたそう。

仕事柄、ものとの出会いは多いものの、買うときは慎重だといいます。

松崎さん:
「蚤の市やオークションに行くと、さまざまな年代のいろいろなものがあり、どれも素敵に見えます。

どの時代のものにも魅力があるので、その中から好きなものを見つけるためには、穴が開くかと思うほどじっくり見て、手で触れてみます。

気に入ったら、家と自分の暮らしに相性が合いそうか、調和が取れそうか、たくさん想像を巡らします。色や形だけではなく、サイズも大切です」

 

買わない勇気も大切に、時間をかけて選べば一生ものに

松崎さん:
「ものを買うときには、100%好き、どうしても家に連れて帰りたい、と思う気持ちが決め手になります。一生大切にしたいほど好きと思わない限り、買わない勇気を持つことも大切ですよね。

いろいろな時代のものを見比べながら、ああでもない、こうでもない、と考えたり選んだりするプロセスも楽しいものです。

時間をかけてゆっくり選んだものや、あれは高かったけれどやっぱり素敵だったな、と思って何度もお店に見に行って諦めきれずに手に入れたもの。そういうものは、やっぱり一生ものになりやすいと思います」

 

好きな空間にするのは、終わりがない

▲ノルウェーの100年ほど前のお皿。そこにいるかのように思える絵柄が気に入っている。

暮らしはじめた当初から、申し分なく素晴らしいと思っていた家ですが、永住権を得て家具を買うようになってから、少し気持ちに変化が生まれてきたそうです。

松崎さん:
「最近、1800年代初頭の水色のダイニングテーブルを買いました。そうしたら、ほかの家具もトーンを揃えたくなってきたんです。備え付けの家具で満足していたのに、欲が出てきたんでしょうね。

いまは、買い替えたいものリストを作って、じっくり選んでいる最中です。特に照明を探したいなと思って勉強中です。どう明かりがつくか、どんなふうに明るくなるかなど、できるだけ多くのものを見比べるようにしています」

▲暮らしの中心になるダイニングテーブルは、買って大正解。

スウェーデンの人は家に対する愛情が深く、そこから学ぶことも多いのだとか。

松崎さん:
「大家さん一家はとりわけ家に情熱を注いでいて、毎年、どこかしらリノベーションしています。彼らを見ていても、家を自分がいちばん好きな空間にするのは、終わりがないんだなぁと感じています」

居心地のいい空間にするために、自分の好きに向き合いながら、終わりのないプロセスを楽しんでいる松崎さん。

続く第3話では、雑貨の飾り方の具体例をはじめ、好きなものだけに囲まれる空間づくりの秘訣を伺います。

 

【写真】松崎由貴子

 

もくじ

松崎由貴子

2012年よりスウェーデン在住。Skantique(スカンティーク)の屋号で、北欧のアンティークをイベント等で販売している。もの選びの確かさにファンが多い。http://www.skantique.net


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